あまり知られていませんが、絶滅危惧ⅠA類にリストされているヒガシシナアジサシは、東アジアのみで見られる種です。
1861年にインドネシア東部で最初に発見されましたが、越冬地(インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ)からの確実な記録はほとんどありませんでした。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、ヒガシシナアジサシが中国の沿岸部で繁殖していることがわかりました。
しかし1937年に山東省で21羽が採集されて以後、確実な記録が得られなかったため、ヒガシシナアジサシは絶滅したものと考えられていました。
2000年に馬祖列島に新たに設立された海鳥の自然保護区で行われた調査により、ヒガシシナアジサシの小さな繁殖コロニーの存在が明らかになりました。
その後の中国の鳥類学者による集中的な調査により、2004年には浙江省象山県の韮山列島でも繁殖地が発見されました。ところが、韮山列島のコロニーは人による撹乱が原因で放棄され、浙江省の舟山群島に移ってしまいました。
2010年12月、インドネシア東部で1羽のヒガシシナアジサシが越冬しているのが観察されました。
本種が希少であることからCMS(移動性野生動物の種の保全に関する条約:通称‘ボン条約’)は、バードライフ・インターナショナルに対してその保護に関する国際的な行動計画の取りまとめを任命しました。行動計画は2010年2月に韓国インチョン(仁川)で開催された東アジア=オーストラリア・フライウェイ・パートナーシップ会議において開始されました。