小さな鳥の重大なメッセージ

気候変動についてのメッセージを告げるミソサザイ
写真提供: Frank Vassen, flickr

最新の研究で普通種の鳥は気候変動の脅威を表す有力な指標であることが確認されています。欧州から米国に至るまで、この傾向は科学者の予想通りで、データは特に寒冷気候に適応した種に一貫した悪影響を与えていることを示しています。

その警戒音の早い囀りでお馴染でしょう。このような小さな鳥にしては驚くほどの大きな声です。太くて短い尾を上げ下げし、枝から枝へ飛び移る、多くの庭で見られるミソサザイはそのせわしない習性でもよく知られています。

今日‘サイエンス’誌に掲載された新しい研究によれば、この小さな鳥は非常に大きなメッセージを伝えているのです。そのせわしない行動にはもっともな意味があるようです。

RSPB(英国のバードライフ・パートナー)とバードライフの科学者を含む英国ダラム大学の国際研究チームは1980年~2010年の30年間で気候変動の影響に適応すると予測されている鳥の個体群は適応出来ないと予測された鳥の数を上回っていたことを明らかにしました。

この研究は、欧州と米国に生息する普通種の鳥の個体群は気温の変化に明白に応答していることから、気候変動のメッセンジャーと位置づけられることを示しました。ですから庭や林で見かけるミソサザイやコマツグミは生態系や地球の気候変動の貴重な指標なのです。

RSPBと米国地質調査所(USGS)による共同研究は‘サイエンス’誌に掲載されますが、これは気候が世界中に広く分布している多くの普通種の鳥が大きな大規模な影響を受けていることを示す初の証拠です。国や大陸に生息する普通種の鳥たちは気候変動について共通のメッセージを発しているようです。

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ここ数十年、英国内でも繁殖が見られるヨーロッパハチクイは気候変動の結果数が増えています。
写真提供: © Simon Kovacic

気候変動は異なる種に異なる影響を与えています: 例えば温暖な気候に適応する種は、寒冷気候の適応種よりも上手く順応しています。研究チームはヨーロッパ、アメリカの両大陸で、鳥の種別の平均個体数の傾向が気候変動により利益を受けているか不利益を受けているかによって明確に異なるということを発見しました。

欧州では、ミソサザイなどの種が冬の気象がより穏やかになりつつある北部地域では増加しているのに対して、夏がより熱く乾燥してきている南部の国々では減少しています。

かつてはドーセット州に生息が限られていた英国のオナガムシクイの個体数は1980年代初期に比べて8倍に増えているのに対して、スペインでは減少しています。これはこの鳥に合った気象をもたらす地域が変化したことによるものと考えられます。

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恐らく気候変動が原因で、ヨーロッパ北部に分布する種は減少している: 過去20年間で英国のコガラは80%減少した。

北アメリカ大陸の多くの地域で馴染みのあるコマシツグミはミシシッピやルイジアナなど幾つかの南部の州で減少しましたが、ダコタ州などの北部、中部の州では増加しています。

この研究の指導的立案者であるダラム大学のStephen Willis博士と Philip Stephens博士は今回の発見は二つの大陸で気候変動が鳥の個体群に一貫した悪影響を与えていることを示したものだと考えています。Willis博士によれば、この研究は、「どの地域で気候変動が個体群に影響を与えているかを理解し、また生息地の喪失や集約農業などの要因の影響も受けるであろう普通種の個体数変動の原因を知ることの手がかりにもなる」と述べています。

バードライフの科学部門長で論文の共著者のStuart Butchart博士は下記のようにコメントしています。

今回の研究は世界の鳥の多くは既に気候変動の影響を受けており、その大部分は負の影響だという証拠の一つです。気候変動を最小限に抑え、自然と人が環境に適応していくための活動が急務であるという警告です。」

バードライフと米国オーデュボン協会は2015年末にパリで行われた第21回国連気候変動枠組条約締約国会議で‘メッセンジャー’という題の報告書を発表しました。今日の‘サイエンス’ 誌の論文は‘メッセンジャー’のなかで扱われた取り組みを拡張するもので、ヨーロッパと北アメリカの両方で同様の影響が見られることを示しています。

今回の研究は毎年同じ方法を用いて同じ場所で鳥の調査を行った、数千人のボランティアにより可能になりました。気候変動の影響をより良く理解することが、個人がこれに立ち向かうための方法の一つなのです。

 

報告者: Shaun Hurrell

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