イタリアを通過する渡り鳥: 良いこと、悪いこと、そして忌まわしいこと

飛行する野生のガン
写真提供: R. Parmiggiani

イタリアの美しさと、それが宇宙から見ればすぐに分かると言うことが最近イタリア人宇宙飛行士により称賛されました。この宇宙飛行士の見方は偏っているかも知れませんが、イタリアの長く伸びた形と地中海の中央部に位置する場所はアフリカとユーラシアの間を渡る数百万羽の鳥にとって地理的に非常に重要であることには疑いがありません。

保護の観点からは、イタリア沿いのフライウェイの渡りの旅がどれ程危険なものであるかを問い直してみるには良い機会に思います。バードライフのイタリアのパートナーLIPUが設立されて以後の50年で状況は改善されたでしょうか?

このような疑問に答えるために、最近発行されたバードライフの‘地中海地域での鳥の密猟報告’から見てみましょう。同報告書にはイタリアが地中海北縁では飛びぬけてひどいことが明示されており、同国では毎年560万羽の鳥が殺されていると推定されています。この数字はイタリアでは鳥の密猟(特にスズメ目の鳥)が依然として広範囲に行われているという事実を反映しています。これはイタリアのほとんどの島嶼、広い範囲のアルプス山脈中央部、イタリア半島沿いの多くの地域に正に当てはまります。

けれども希望を持てる理由もあり、特に南サルディニア地方でLIPUが行ったケース・スタディにそれが窺えます。LIPUは密猟と戦う長い歴史を持ち、一見すると美しいけれども危険な常緑樹の森や灌木地に掛けられた数千もの罠を毎年除去して来ました。近年になってLIFEプロジェクト(注: EUの環境保全活動などに資金支援をするプロジェクト)‘野鳥にとっての安全な場所: 欧州の生物多様性のために北部地中海地域における密猟への態度を変えよう’により、学校での関心の向上、公衆への情報キャンペーンの開始および法執行当局との一層の強力などの総合的戦略の実施がようやく可能になりました。この戦略は効果が上がり始め、ここ数年同地域内で見つかる罠の数が減ったのです。

伝統的にイタリアではハンターが強力な圧力団体で、残念なことに彼らはその政治力をこのような密猟の継続の支援に用いて来ました。しかしハンター団体が高齢化し、若手を集めるのが困難になりました。イタリアでも鳥を殺すことは格好良いことではなくなり、考え方が変わりつつあるのです。LIPUは伝統は大切ですが、全ての伝統、特に違法なものは良い伝統ではないということを積極的に訴えています。

2015年7月にイタリア議会はカスミ網と生きた囮(おとり)を使って鳥を捕獲することを禁止する法律を承認しました。理論から実行に移すのには私たち全員の注意を必要としますが、これは極めて重要なステップです。

メッシーナ海峡での帆翔性猛禽類とコウノトリ類を撃つことへの反対キャンペーンもシシリー島とイタリア本土の両方で成功しています。けれどもイタリアの主要なボトルネック地域(注: 地形の関係で渡りのルートの幅が瓶の口のように狭い場所)での活動を減らすのは大きな誤りでしょう。これがLIPUや他の団体が渡りの時期の地域のパトロールを依然として支援している理由です。

水鳥についてはイタリアの大きな湿地のほとんどは法的に保護されておりナチュラ2000の指定地になっています。その結果狩猟による大きな影響はかなり減りましたが、密猟、公害、レベルの低い環境管理がまだ深刻な問題です。

全体としてまだ多くの傷口が残っていますが、主要な戦いは終わり、私たちはそれに勝利しています。鳥に対する致命的な伝統や違法行為を止めることが出来るというしっかりとした兆候があります。多くのイタリアの若者が鳥には渡りを行う権利があるということを理解しています。イタリアを通過して飛ぶ鳥の状況は改善しつつあることは間違いありません。けれども渡り鳥の多くの個体群は最近の数十年で大幅に減少し、気候変動が今後厳しい影響を及ぼすことが予想されます。ですから私たちは活動を強化し、渡り鳥の保全を速めなければなりません。

 

報告者: Claudio Celada

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