ナチュラ2000: 一触即発の海での海鳥の安全な場所

ニシツニメドリ
写真提供: (c) Billtacular, Flickr

気候変動は今日海鳥が直面している最大の脅威の一つであるという証拠が増加しています。私たちが経験してきた海の温暖化と酸性化は最小のプランクトンから海鳥や他の捕食動物の主食である獲物の小魚の群に至る海洋の食物網を解体しつつあります。益々普通になっている異常気象現象が海洋を荒れた状態に変えており、海鳥、特にウミスズメ類のような深く潜る鳥が魚を見つけて捕えるのを難しくしています。欧州の海鳥は困難な状態にありますが、ナチュラ2000は彼らが今すぐには収まるとは考えられないこのような出来事の襲来に対処するのを助けるために必要な安息所を提供するでしょう。

ナチュラ2000はヨーロッパ最大の保護区のネットワークで、生物多様性を保全し、最も貴重な種と生息地の存続を確保するためのものです。ナチュラ2000は生息地指令に基づいて作られたSAC(特別自然保護地域: Special Areas of Conservation)と野鳥指令により指定されたSPA(特別保護区: Special Protection Areas)により構成されています。もし海鳥の主要な繁殖地と採食エリアが明らかになり、指定され効果的に管理されれば、これらは海鳥の個体群の保護に役立つでしょう。回復力のある保護区のネットワークの構築は海鳥が気候変動に上手く適応することを可能にするでしょう。けれども、殆どのEU加盟国がSPAを指定、特に海洋での指定があまりにも遅く、そのために象徴的でカラフルなニシツノメドリなど多くの海鳥が苦しんでいます。

ニシツノメドリはすぐに識別出来、最も愛される海鳥の一種として傑出しています。私たちは見逃しがちですが、ニシツノメドリは最新の欧州版レッド・リストで絶滅危惧ⅠB類になったのです。この大変化の中心となっているのが欧州の個体数の80%を占めるアイスランドとノルウェーでの減少です。もう一つのニシツノメドリの重要な生息地の英国でも減少しているようです。IUCN(国際自然保護連合)はもし直ちに行動を起こさなければ全体の個体数は2065年までに50-79%も減るだろうと予想しています。気候変動がこの恐るべき減少率の原因です。フェロー諸島とアイスランドの一部でツノメドリの主食のイカナゴ資源の枯渇により10年連続で繁殖に失敗しているのです。フェロー諸島とアイスランドのウエストマン諸等の地元コミュニティはこのことに懸念して数世紀に亘り続いていたツノメドリ狩りの習慣を諦めたほどです。

ツノメドリや他の多くの海鳥は長命で、30年以上生きるため、数年程度の繁殖失敗にも耐えることが出来ます。しかし長年続く繁殖の失敗は海鳥の個体数減少を余儀なくします。乏しい食物を何とか捕らなければならないストレスも成鳥が死ぬリスクを高め、個体数減少の傾向を速めます。それはツノメドリだけに限りません。スコットランドではこの25年間に繁殖する海鳥のおよそ半数を失いました。そこにはクロトウゾクカモメの80%、キョクアジサシの72%、ミツユビカモメとアカアシミツユビカモメの68%が含まれ、総数で数百万羽になります。

これら全ての種の生存と繁殖の成功は小型で栄養価の高い、特にイカナゴの供給量の豊富さに依存しています。しかし海水の温暖化がヨーロッパの海域、特に北洋での食物網に広範囲な変化を及ぼしており、イカナゴなどの主要な餌の個体数を減少させています。私たちが直面しているこのような規模での変化は海洋生態系の大規模な‘レジームシフト(大変動)’を示すもので、北ヨーロッパの食物連鎖の頂点に位置する海鳥の現在の急減はそれほど驚くことではありません。

異常気象現象も大災害をもたらします。2014年の冬、ヨーロッパの大西洋岸を襲った嵐は記録上最大の海鳥の‘難破’の一つとなり、3万羽が(そのおよそ半数がツノメドリ)死体で海岸に打ち寄せられたり飢え死にしました。それに加えて、海洋は人間が排出する2酸化炭素のおよそ40%を吸収しますが、炭素排出の増加に伴い海がこれまでの地球の歴史にない速さで酸性化しているのです。科学者は沿岸性二枚貝や他の軟体動物の主要な生息地が失われ、個体群が冷たい水を求めて北へ移動することにより、潜水性海ガモとシギ・チドリ類への起こりうる問題を予測しています。

ニシツノメドリや他の海鳥が明らかに危機にあることから、これ以上遅れることなく管理の行き届いた総合的なナチュラ2000ネットワークを構築する必要性はかつてないほど高くなっています。しかし、海鳥のためのマリーン・ナチュラ2000サイトの皮肉にも遅い実現がEU自然指令の見直しというさらに大きな危機を伴っているのです。欧州が海鳥の個体群が将来に向けて気候変動と戦うことを助けるために必要な対策とは程遠い状態にあることにバードライフは懸念を新たにしています。

(報告者: Euan Dunn)

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