渡り鳥のために行っている7つのこと

渡りの旅はますます危険なものになっています。 写真提供: © Amy Johansson

今年、バードライフは初めての世界フライウェイ保護サミットを開催しました。渡りという奇跡を将来世代も楽しめるよう、私たちが下した最重要の決定事項をご紹介します。

 

鳥はその場にとどまり続けることはありません。ある鳥は国境を越え、またある鳥は海を渡り、さらに別の鳥は地球全体を渡ります。これはあなたが思い浮かべた種に限りません。ハヤブサ、コウノトリ、そしてペンギンでさえも旅をするのです。バードライフは1922年に設立されましたが、その主な理由の一つは国境を越えて鳥を守るために手を合わせることでした。それから96年を経た今、私たちは依然として保全に尽力していますが、設立者たちが思いもなかった新しい問題が起きています。これが今年4月に第1回の「世界フライウェイ・サミット」を開催した理由です。当日は科学者、企業、政府およびNGOなど70ヶ国から100の団体が集まりました。渡り鳥の飛行ルートにおける主な脅威を明確にし、私たちの取り組みを集約させるべき地域を特定しました。以下はそのような優先事項の幾つかの例です。

 

1.鳥に優しい農地の拡大

アフリカオオノガンの体重は何と19㎏にもなる。
写真提供: © David Berkowitz

渡り鳥は自然環境だけを利用しているわけではありません。特にノガン類はアフリカやユーラシアの農耕地全域で繁殖し、採餌します。これらの巨大な草原のスペシャリストとは、鳥類界の「空飛ぶ要塞」とも呼ばれる最重量級の渡り鳥です。アフリカオオノガン(準絶滅危惧種)はなんと体重が19㎏にもなります。けれどもノガン類は26種のうちほぼ3分の1が絶滅の危機にさらされており、最も危機的状況にある「科」の一つです。

どうすれば農地をノガン類に安全な場所に変えられるでしょうか?重要なステップの一つは、衝突を防ぐために送電線を地下に埋め、不必要なフェンスを取り壊すことです。また私たちは農家と共同でノガンに優しい農業を推進しています。例えばカンボジアでは、絶滅危惧IA類のベンガウショウノガンの繁殖に必要な時間と空間を確保するため、乾期の米の栽培方法を調整しています。農耕地での活動を補完するために、私たちは草原を復元して回廊を作り、鳥が出会い繁殖できるようにしています。

 

2.ハゲワシの保全

ケニアの緊急毒薬対応チームはミミヒダハゲワシの命綱です。
写真提供: © Andre Botha

去年、ハゲワシ保全に大きな進展がありました。アフリカ・ユーラシアのハゲワシ類を保護するための「複数種行動計画」がCMS(移動性野生動物種の保全に関する条約)に採択されたのです。この計画は既に上々の滑り出しを見せていますが、今後数年における重要なステップは、ある場所での成功例を大陸全体に適用することです。

その中でもシンボル的な取り組みとなっているのが、ケニアの「ハゲワシ緊急毒薬対応チーム」です。このチームは、毒が施された動物の死骸に極めて迅速に対応することで、かつては数百羽に上っていたハゲワシの犠牲を劇的に減らし、ゼロにすることもしばしばです。計画では、このスキームをアフリカ全土に広げる予定です。同様に、南アジアでは「ハゲワシ安全地帯」(ハゲワシに致死性のある獣医薬ジクロフェナクが使用されていない区域)の取り組みが大きな成果を挙げており、同様の手法がアフリカにも導入される予定です。

 

3.海岸の保全

黄海の干潟に依存するヘラシギ
写真提供: © Kajornyot Wildlife Photography

一見しただけでは海岸や干潟、入江は緑豊かな場所には見えません。しかし実は栄養価の高い無脊椎動物が多数生息している場所なのです。渡り性のシギ・チドリ類にとっては、次の中継地が数千キロも先ということも珍しくないような長い旅の途中にある重要な栄養補給のための中継地なのです。悲しいことに、かつては手付かずだったこれらの生息地は、干拓や公害、その他の人による攪乱により破壊されつつあります。

だからこそ、世界の渡りのフライウェイに沿った「湿地のチェーン」を守ることが重要なのです。今年のサミットでは「世界海岸フォーラム」が始動し、世界中の国々が交流し、協力して保全活動を実施する基盤となると期待されています。フォーラムでは渡り性シギ・チドリ類にとって最も重要なサイトを特定する作業を進める予定です。団結して取り組むことで、漁業や観光業などの沿岸域で事業を行うセクターとの協力関係が強化されると期待されます。

 

4.再生可能エネルギーを鳥に安全なものに

風力発電の風車はワシ・タカ類のような帆翔性の鳥には特に脅威となります。
写真提供: © PPictures

再生可能エネルギーは今後欠かせなくなるであろうクリーンで低炭素な電気を提供できる可能性が高いものです。技術の進歩に伴い再生可能エネルギー施設は建設費用が下がってきており、世界中に広まりつつあります。しかし、大きな問題があります。渡り鳥、特にワシ・タカ類のような帆翔性の鳥(移動のために上昇気流と風の流れを利用する種)が風車の羽根や送電線に衝突したり、電気設備に止まって感電してしまう事故が多発しているのです。

幸いなことに、渡りルートを避けて発電施設を建設すれば避けられる事故です。私たちは既に風力発電施設や送電線を設置するのに不適切な場所を示すセンシティビティ・マッピング・ツールを開発しました。これから重要なのは産業界、政府および金融部門との関係を強化し、生物多様性が計画段階で考慮されようにすることです。

 

5.意識を変え、密猟を止める

キプロスでは子供のためのバード・ガイドが鳥への意識を変えています。
写真提供: © BirdLife Cyprus

毎年、数百万羽の鳥が渡りの途中で違法に撃たれたり、罠にかかっています。その数は地中海地域だけで年に1,100~3,600万羽と推定されています。しかし、この問題は法律を強化するだけで止められるようなものではありません。一部の密猟には文化的なルーツがあるからです。法律を変えるだけでは不十分です。マインドを変えなければならないのです。

今回のサミットでは、こうした密猟を止めるためにこれまで行ってきた経験を共有しました。参加者の誰もが、渡り鳥と彼らの長い旅に対する敬意を高め、永続的な意識の変化を促す必要性を訴えました。啓発キャンペーンによって科学的な情報を伝えるだけでなく感情に訴えることも重要です。国レベルでは各国のバードライフ・パートナーがコミュニティ、学校、狩猟団体を含むあらゆる人々と密猟ゼロを推進します。重要なステップは、次の世代に焦点をあて、家族や若い世代が自然との関わりを感じて成長していくように仕向けることです。私たちは環境保全を学校のカリキュラムに取り入れてもらうことを推進しており、例えばキプロスでは子供のバード・ガイド・ブックを配り、次世代の保全活動家を増やす取り組みを進めています。

 

6.猛禽類の復活

猛禽保全の象徴的存在であるセーカーハヤブサ
写真提供: © Michal Ninger

強く、荘厳で技に長けた鳥。このような特徴を持つ猛禽類がこれだけ脆弱なのは不思議に思われます。けれども世界の猛禽類の半分が数を減らしているのです。猛禽保全のシンボルといえば、ヨーロッパ中央部やアジア全域で極めて人気が高く象徴的な鳥、セーカーハヤブサです。本種は送電線での感電死、生息地の破壊、持続可能でない狩猟によって急速に数を減らしました。現在絶滅危惧IB類に分類されています。

今年のサミットでは2014年に策定された「セーカーハヤブサ国際行動計画」の進捗や成果を評価しました。特に成功収めた取り組みの1つは、鳥に安全な電柱を数千本設置したことです。これにより他の多くの猛禽類も救われることでしょう。もう一つの成功例は、セーカーハヤブサ70羽にタグを付けたことです。これにより、同種が直面する脅威や生息条件に関する理解を深めることにつながるでしょう。

 

7.コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション

保全では、自分たちの活動をタンチョウのように大声でアピールする必要があります。
写真提供: © Josh Anon

サミットでは、数十の保護団体が経験と成功例を共有し、活動実施能力のギャップを明らかにするためのフォーラムに参加しました。人材や装備などよく挙げられるギャップに加え、繰り返し挙げられたのがコミュニケーションでした。活動は現場で行われますが、それを世界に伝える能力が不十分でした。

啓発活動は、人々の意識や行動を変え、さらに活動への参加を促す上で大きな役割を果たします。私たちのこれからの活動の目標の一つは、活動を地元コミュニティに伝えるだけでなく、民間セクターが私達の活動をよく理解し、重要な決定がなされる際に保全が考慮されるようなコミュニケーションを支援することです。

最後に、バードライフのCEOパトリシア・ズリータが、何をどのように進めているのか、なぜそれに価値のあるのかをご説明します。

「私たちにとって渡り鳥は文化的な目安です。渡り鳥は季節の変化やある時期の到来を告げてくれます。そのため私たちは彼らが戻って来るのを毎回楽しみにします。彼らは人々の結びつきを思い出させてくれるものでもあり、私たちにはこれらの素晴らしい鳥たちを気遣い、守る責任があるのです。現在、不幸なことに渡り鳥はかつてないほどの危機に直面しており、40%以上の種が数を減らしています。「渡り鳥の日」は、渡り鳥と私たちのつながりを祝い、同時に彼らとその驚異的な旅で通る地域を気遣う責任を改めて思い返す時なのです。」

フライウェイ・サミットの成果の詳細はこちら

www.birdlife.org/hub/summit-flyways

 

報告者: Jessica Law

原文はこちら

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