森林伐採:止めるだけでなく反転させよう

© Ferry R Tan / Picfair

森林伐採を完全に止めることなどできるでしょうか?私たちが「1兆本の木」計画を進める理由をご紹介します。

コロンビアの熱帯雨林の片隅に1本の木が立っています。見るべきものはとくにありません。とても小さく、細い枝が太陽の光をとらえ、その先にある葉の先端は昆虫に食べられてカサカサになっています。けれどもこの木は今まで存在しなかったものの一つなのです。それはその見かけではなく、その周辺で起きていることを指します。

この木の数十年後の姿を想像してみましょう。2050年、この木には鳥が営巣し、食べられてしまった種もあることでしょう。しかし、全く違う世界に立っています。2018年のトレンドが続いた場合、その世界には現在より1兆本も多くの木があるのです。

今、この木を見たら、直感的に脆弱な存在と考えることでしょう。なぜなら現在の私達の社会がどんなものかを知っているからです。森林が伐採された後には持続可能でない農業が行われ、土壌劣化を招き、さらなる森林破壊を招くという悲惨な悪循環が多発しているのを見て来たからです。けれども2050年には、人々はこの木について異なった見方をすることでしょう。彼らは樹木伐採のない世界に住み、そこでは森林は縮小ではなく成長を続け、人々はこの木は安全だと予感するのです。現在ならおそらくこのような可能性は見向きもしないでしょう。しかし、私たちの社会でそれは本当に非現実的なビジョンでしょうか?それが現実になるかは、小さなギャップを埋めることができるかどうかにかかっているのです。

私たちは森林伐採の速度がどれほど速いか、そしてこの流れを逆転させることが地球の主な問題の解決策としてどれほど重要か認識しています。これはニュースでも何でもありません。森林伐採も森林再生も、「森林に関するニューヨーク宣言」や国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」、「ボン・チャレンジ」および「パリ合意」などのイニシアティブに明確に記された世界の政治アジェンダです。森林伐採を止めるための企業や政府のコミットメントが多数発表され、これまで以上に公的あるいは民間の資金提供があります。しかし、何かが機能していません。

コミットメントは果たされず、資金は森林に変わらないのです。企業や国はその約束の実行に苦闘しています。資金提供者は適切なプロジェクトを見つけることができず、最前線の保全プログラムは資金確保に苦労しています。「1兆本の木」計画ではこれを「実施ギャップ」と呼んでいます。

 

 

ハゲチメドリ © Michael Andersen

ハゲチメドリ © Michael Andersen

1兆本の木計画はこの実施ギャップを埋めるために策定されました。2016年11月にRestore Our Planetからの支援をもとにに始まったこの活動は、世界最大規模の自然保護団体であるWWF(世界自然保護基金)、バードライフおよびWCS(野生生物保全協会)の数十年にわたる経験に基づいた取り組みです。これら3団体の活動範囲は120ヶ国以上におよび、様々な地域で森林の保全と再生を主導してきました。しかし、「1兆本の木」の誓約のもと3団体が手を取り合って取り組むことで、別々に活動するよりもさらに説得力があり強力なものとなるのです。

1兆本の木計画は「社会のあらゆるセクターの協力により2050年までに世界中で1兆本の木が再生し、失われず、守られる世界」を実現しようというものです大きな目標ですが、達成できるはずです。鍵となるのは「社会のあらゆるセクターの協力」です。これは環境保全団体だけでは実現できません。私たちは様々な人と共同で活動し、良い取り組みを支援しなければなりません。共に、世界の変化を促さなければなりません。そのために、新たなプロジェクトを開始し、既存の活動を支援し、適材適所な資金配分を行うのです。

では何故1兆本なのでしょうか?

それは最先端の科学的知見から、地球を安定させるために必要な量を割り出したものなのです。地球にはかつて6兆本の木があり、現在3兆本が残されています(Crowther et al. 2015)。しかし、毎年100億本が失われている状況です。人の活動がこの減少をもたらした主な要因ですが、だからこそ今度は増加させる主な要因になることができるし、そうあらねばなりません。

「適材適所で木を植えることが重要です。」バードライフのCEOパトリシア・ズリータは言います。「責任ある土地利用によって、気候問題対策の約25%分の貢献になります。1兆本の木は21世紀における最大の社会問題の一つへの私たちの貢献なのです。」

企業と政策によってより良い農業が行われれば、広大な土地を森林として残したり、復元したりすることができます。管理の行き届いたプランテーションや林業地からは、持続可能な燃料や食物、繊維が得られます。私たちの計画は確かに非常に野心的ですが、それがさらに他の人や機関もより高い目標を持つことにつながることを期待しています。

森林が縮小ではなく成長する世界を実現するために、1兆本の木計画はより良い保全、自然の再成長、目標のある植林などを合わせ、景観規模で活動を行います。既にパイロット事業が始まっています。シエラレオネのゴラ熱帯雨林のココアは、真に森林伐採と無縁の農業で、農家は農産物を適正価格で販売し、生活水準を向上させています。カンボジアの保護地域周辺の米作農家は、野生生物に優しい基準を受け入れ、代わりに「トキ米」として収穫した米を特別価格で販売することができます。1兆本の木計画のもと、既に20を超える取り組みがが進められています。

ゴラ熱帯雨林ココアの出荷を前に © B Horvath

ゴラ熱帯雨林ココアの出荷を前に © B Horvath

1兆本の木計画の話から、冒頭で書いた熱帯雨林の片隅に育つ1本の木に視点を戻すと、何故この木が今までになかったものの1本だったのか、お分かりでしょう。その木はコロンビアのセラニア・デ・チリビケテ国立公園の縁に立っています。この公園は、エリアが430万ヘクタール拡張されたことで世界最大の熱帯雨林の国立公園になり、最新のユネスコの世界遺産サイトにもなった場所です。これはWWFおよび1兆本の木チームのサポートの賜物です。

私たちには、世界の森林のための別の未来を作り出すチャンスがあります。必要なのは物事を大きく考え、野望を広げ、共に活動することです。

1兆本の木ウェブサイト(英語)

報告者:Shaun Hurrell

原文はこちら

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