スウェーデンでオグロシギが復活

オグロシギ 写真提供:© BirdLife Sweden

10年にわたる保護活動の後、スウェーデンで繁殖する鳥の中で最も希少な種の一つオグロシギが見事な回復をみせています。

 

1758年にスウェーデン人の動植物学者カール・リンネは自国の大型シギチドリ類の一種をScopopax limosaと名付けました。リンネは“分類学の父”として知られており、現生種に対して付されるラテン語の命名システム(学名)は彼の功績によるものです。この場合のlimosaは「泥」を意味するラテン語のlimusに由来します。顕著な長い脚と嘴を持ち、湿った草原を歩いて渡るのに生物学的に適した種に相応しい名前です。そして丁度リンネが命名してから260年後の今、オグロシギという名前で多くの人が知っているこのシギが数十年にわたる減少の後、目を見張るような回復を遂げています。

オグロシギはスウェーデンで繁殖する鳥のうち最も希少な種の一つで、世界的な準絶滅危惧種です。世界的には大きな個体群で欧州から中央アジア、ロシアにかけて広範囲に生息していますが、その個体数がこれらの地域の重要な場所でものすごい速さで減少しました。オグロシギの苦境は欧州の他の多くのシギ・チドリ類、特にダイシャクシギ、ミヤコドリ、タゲリなどと同じです。これらの種はかつて、欧州の農耕地でよく見られましたが、早い時期での刈り入れが繁殖シーズンに悪影響を与え、近代的な排水作業が彼らの環境を破壊しています。

オグロシギ 写真提供:© BirdLife Sweden

目標を絞った保護活動が危険な運命にある種の状況を逆転させるためには絶対に必要で、バードライフは協調の取れた「種の行動計画(SAP)」の強力な支持者です。SAPには、政府、研究者、NGO、主要な利益団体の広いパートナーシップでの緊密な協調が必要です。バードライフはEUが資金提供をするプロジェクトLIFE EuroSAPの協力パートナーで、これはオグロシギを含む象徴的な種のために大陸規模にSAPを実施することを目指す野心的なものです。スウェーデンでは、オグロシギを救うために国のSAPによりバードライフ・スウェーデンを含む地元行政当局、農家、ハンターとNGOが協働し、スウェーデン南部のバルチック海沿岸沖のÖland島の湿った草原の持続可能な管理をしています。ここで行われている活動は、LIFE EuroSAPの目標と国際的なシギ・チドリ類への活動提案に完璧に一致するものです。

島周辺の放牧地の湿地は復元され、ここで繁殖をするシギ・チドリ類に十分な水を提供します。繁殖しているシギ・チドリ類に対する深刻な脅威のもう一つは、キツネや他の捕食動物による卵や雛の捕食の増加で、これらの動物は食物資源が増えたことにより個体数が激増しました。地元のハンターは、およそ200㎢の主要な繁殖地で捕食動物全般の数を持続可能な範囲に管理する自主的なプロジェクトを始めました。

2007年にこのプロジェクトが始まって以来、捕食者制御に並行してオグロシギの繁殖成功度と個体数の傾向が観察されています。シギ・チドリ類の繁殖成功度は、捕食者管理が行われているエリアでは増加しています。ただし、これはキツネの数を減少させる原因となる病気の流行にもよります。オグロシギについては今年の調査がワクワクするニュースをもたらしました。数十年続いた減少が遂に逆転し、何とÖland島で90ペアがカウントされたのです。これは10年前と比べると少なくとも2倍です。この結果、かつては75ペアまで落ちたスウェーデンのオグロシギの総個体数を120ペアに押し上げました。Öland島での調和の取れた保護活動のおかげで、リンネの「泥」の鳥の将来は確実に軌道に乗ったと思われます。

 

報告者:Daniel Bengtsson

 

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