トルコ  ゲティス川の入り江-苦難の海に架かる橋

ゲティス川入り江は絶滅危惧Ⅱ類のアオガンの安息地です。 写真提供: © Goean / Shutterstock

提案されたイズミール湾に架かる巨大な橋は、稀少なアザラシやウミガメの避難場所でもある海鳥の重要な繁殖地を滅ぼす恐れがあります。これはこの特別な場所を脅かすだけではありません。この危機にある環境を守るために、これまで実施された活動についてお読みください。

 

相反するものが遭遇すると、魔法のようなことが起こります。大地と海が出会う所、淡水が海水に流れ込む所など、類まれな環境はすぐ近くにあります。草地帯や驚くべき塩霧のラグーンが点在するこの湿地は、多数の水鳥を支えています。ニシハイイロペリカン(準絶滅危惧種)にとってこの入り江は重要な繁殖地であるため、アオガン(絶滅危惧Ⅱ類)も同様に、ここに安息の地を見つけました。この恩恵を受けられるのは鳥だけではありません。チチュウカイモンクアザラシ(絶滅危惧ⅠB類)やアカウミガメ(絶滅危惧Ⅱ類)もこの場所の豊かな餌資源に依存しています。

毎年冬になるとこの入り江は、オオフラミンゴの到着でピンクに色が変わります。ここに宿るオオフラミンゴの数は例年世界の個体数の10分の1にもなります。この壮観な光景は、入り江のもう一つの常連客である観光客にとっての大きな呼び物です。また、実際にこの入り江は塩田や漁業と並んで地元の人々にとって貴重な収入源です。

 

ゲティス川入り江に生息するチチュウカイモンクアザラシ(絶滅危惧Ⅱ類)
写真提供: © Zaferkizilkaya / Shutterstock

自然保護界もゲティス川入り江の重要性を認識しています。この入り江はIBA(重要生息環境)KBA(生物多様性重要地域)だけでなく国際的に重要な湿地であるラムサール条約湿地にも登録されています。しかし一方で、危機的な状態にあります。ゲティス川は汚染が進んでおり、イズミール市は徐々に侵食しています。下水処理場、港の建設計画と7百万立方メートルの汚染された泥をIBAの境界内に捨てるという提案がありました。それに加えて去年最悪の脅威が発表されました。イズミール湾の南岸と北岸をつなぐ巨大な橋です。この橋が建設されれば入り江の北端に位置する重要な繁殖地と採餌エリアを破壊するでしょう。

幸いにも、入り江には被告人がいないわけではありません。Doğa Derneği (トルコのバードライフ・パートナー)は、橋の建設に対して法的訴訟を始めました。彼らはMAVA基金の支援を得て、劣化した土地の再活性化のために湿地再生プロジェクトも行っています。この戦略的な生息地を失うことは、多くの絶滅危惧種のバランスを崩す可能性があるのです。それは回復と絶滅の違いを意味します。

 

報告者:Jessica Law

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