渡りのマラソン:7種の鳥の信じられないような旅

インドガン 写真提供: © Wang LiQiang / Shutterstock

世界の鳥のおよそ5種に1種は渡り鳥です。どの渡りの旅も壮大で、時には危険を伴う持久力の偉業ですが、特に頑張っている種を選んでご紹介します。

 

高すぎる山はないのか

種:インドガン

渡りの距離:3,0005,000

酸素が不足していませんか?問題ありません。この頑丈なガンは飛翔距離では最長ではないかも知れませんが、彼らの渡りほど一貫して高いところを飛ぶ鳥は他にいません。繁殖地のモンゴル、チベット平野、中国北部から越冬地のインドに向かう旅の途上で彼らは平地の10%しかない酸素を使って、追い風の助けもなしに標高7,000メートルに及ぶヒマラヤ山脈を越えるのです。研究者は彼らが山の地面に沿って夜間に飛ぶことで、エネルギーを節約していると結論を出していますが、彼らの並外れた耐久力の背後にある遺伝的特質についてはまだよく分かっていません。彼らの個体数は減少傾向にあることは事実ですが、その分布域は極めて広く、IUCNのレッドリストでは軽度懸念種に分類されています。

 

可能な限り早く飛べ

種:ヨーロッパジシギ

渡りの距離:6,800

ヨーロッパジシギ
写真提供: © Wildlife World / Shutterstock

短距離走ならば獲物を襲う時に時速390㎞に達するハヤブサの勝ちでしょうが、マラソンでは勝てません。長距離フライトの予想外の最速ランナーは、冬の渡りの前にどれほど栄養を蓄えてポッチャリしているかを考えると、驚くことにヨーロッパジシギでしょう。彼らは航空力学的に欠けているところをエネルギーで埋め合わせをしているのです。早く飛ぶことを助けると思われる追い風に頼ることなしに、このズングリした鳥は6,800㎞の距離を時速97㎞で飛んだ記録を達成しています。スカンジナビアからサハラ砂漠以南のアフリカの陸地の上空を飛ぶ時に、彼らは一切休憩をせずに飛び、その結果体重の半分を失います。残念ながら本種はロシアとウクライナでの集約農業と湿地干拓の増加による生息地の消失により準絶滅危惧種に分類されています。

 

疲れ果てている者にも休息はなし

種:オオソリハシシギ

渡りの距離:11,000

オオソリハシシギ
写真提供: © Dennis Jacobsen / Shutterstock

飲まず食わず、そして睡眠も取らずに9日間飛び続けることを想像してみてください。これがオオソリハシシギの渡りなのです。アラスカからニュージーランドまで休息なしで11,000㎞を飛んだノンストップ飛翔の最長記録保持者です。本種の分布域は広大ですが、一部の亜集団は苦しんでいます。東アジア・オーストラリア地域フライウェイを利用するオオソリハシシギは、黄海における厳しい生息地の消失により急激に数が減っており、その結果準絶滅危惧種に分類されています。幸いにもバードライフが各国政府と共同で中継地点の保全とこれ以上の生息地の劣化を防ぐために活動をしています。オオソリハシシギに耐久力の問題はなさそうですが、中継地点における燃料補給の機会は与えるべきでしょう。

 

長距離飛行

種:コオバシギ

渡りの距離:15,000

米国デラウェア湾でカブトガニの卵を食べる亜種ルファコオバシギ
写真提供: © Gregory Breese / USFWS

コオバシギの翼開長は50㎝ほどしかありませんが、彼らの一部は毎年チリやアルゼンチンの南部沿岸からカナダの北極諸島までの約15,000㎞を旅します。悲しいことに、人間の干渉がこの旅を一層困難なものにしています。沿岸域の開発と、卵が重要な食料源であるカブトガニの乱獲により、本種の大西洋の亜種ルファコオバシギは、2014年の米国絶滅危惧種法で絶滅危惧種に指定されました。

 

ペンギンの行進

種:アデリーペンギン

移動距離の最長記録:17,600

アデリーペンギン
写真提供: © vladsilver / Shutterstock

渡りの旅は、飛翔だけとは限りません。ペンギンのような飛ばない鳥も渡りをするのです。アデリーペンギンは、毎年太陽を追って繁殖コロニーから南極大陸のロス海の越冬地まで平均13,000㎞を歩き、戻ってくるのです。冬の間南極圏南部では、太陽は上らず、オキアミを食べるために海へいく必要があるペンギンにとっては問題です。彼らの解決策は、氷結の起きる季節に拡大し続ける氷の縁を歩き続けるのです。春になると彼らは後退する氷の縁に留まります。将来の減少が気候変動に基づく予測で示唆されているにも関わらず、彼らの多くが繁殖する南極大陸東部において本種の個体数は増加しています。

 

ぐるぐる回る

種:ハシボソミズナギドリ

渡りの距離:30,000

ハシボソミズナギドリ
写真提供: © Chris Watson / Shutterstock

「タスマニア・マトンバード」とも呼ばれるこの世界を旅する渡り鳥は、毎年繁殖地のタスマニアやオーストラリア南部から、極東ロシアのカムチャッカ、続いてアラスカのアリューシャン列島、さらに太平洋を周回し、北米西海岸に沿って戻って来ます。彼らの体は水の上を滑空するのに完全に適応しており、エネルギーを節約しつつ長時間飛行することができます。驚くことに、このように壮大な旅の後でも彼らは毎年、同じ巣穴に戻って来るのです。地域によっては個体数減少が報告されていますが、総個体数は2千万羽を超えるものと推定されており、オーストラリアの海域では最も数の多い海鳥です。

 

月まで行って戻る

種:キョクアジサシ

平均周回距離:90,000

キョクアジサシ
写真提供: © Tony Brindley / Shutterstock

渡り鳥のリストで、キョクアジサシの記録破りの快挙に触れないものはありません。動物界で並外れた最長の渡りが知られているこの中型の鳥は、毎年北はグリーンランドから南はウェッデル海まで、極から極へと90,000㎞も旅をします。際立っているのは、キョクアジサシは30歳まで生きることができるので、一生の間の移動距離を合計すると彼らの旅の全距離は月との間を3回以上往復するのと等しくなります。この大旅行家の壮絶な旅行が、私たちのプロジェクトの世界的な影響と目的達成の良い例となるため、バードライフのロゴに選ばれたことは驚くことではありません。

 

報告者: Irene Lorenzo

原文はこちら

 

200ペアしかいない渡り鳥、ヘラシギ
バードライフ東京では渡り鳥を守る活動も行っています。詳しくはこちら

絶滅危惧ⅠA類の渡り鳥ヘラシギの雛
写真提供: © Pavel Tomkovich

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