モロッコで虐待されていた鳥を自由に

放鳥後のシロエリハゲワシM13号 写真提供: © Rachid El Khalmichi

モロッコ王国北部の町F’nideqで若者の集団により捕獲され虐待を受けていたシロエリハゲワシが他の鳥と一緒に野生に戻され、元気に育っています。この鳥は、適切な時期にバードライフのモロッコのパートナー(GREPOM:モロッコ鳥類保護研究グループ)が介入し放鳥され、現在GREPOMの保護活動家による観察が行われています。

識別番号M13とされたこの鳥は最初、ジュベル・ミュザ地域で他の4羽の疲労困憊した淡黄褐色のハゲワシと一緒に発見されました。ジブラルタル海峡の南という戦略的位置で知られるジュベル・ミュザは、イベリア半島からサハラ砂漠以南のアフリカへ向かう渡りのルート上にあります。この重要な生物多様性エリアではモロッコのバードライフ・パートナーGREPOMの活動家による定期的な観察が行われています。

合計5羽の疲労したシロエリハゲワシは直ちにラバト動物園に搬送され、手当てを受けました。その後、これらの鳥の翼には識別マークと送信機が装着され、それによりラジオ受信機とアンテナの使用による観察が行われました。2017年の「世界湿地の日」のイベントの一環として、2月7日に彼らが最初に発見されたジュベルの自然環境の中に放鳥されました。

その中のM13のタグが付けられたオスの成鳥が放鳥後、餌を求めてF’nideqの市街地へ行きましたが、2月11日に町の近くで正体不明の若者のグループに捕まり虐待されました。この鳥への虐待の画像が国中のメディアを通じて広がりました。GREPOMの野外活動家たちは、直ちにテトゥアン当局の支援を得てこの鳥を助け出しました。

「M13号事件はモロッコで非難の声を呼び起こし、ハゲワシを救うGREPOMの活動は多くのメディアの関心を集めました。広範囲のマスコミ報道を通して、以前は環境問題について関心のなかった人々を含む多くの一般の人たちと心を通わせました。それが人々に直接影響を与え、彼らは鳥を保護することの重要性を学んだのです。これこそが、私たちの戦略の最重要点です。」とGREPOMのコミュニケーション担当のAdil Boulahia氏は述べました。

野生復帰後M14号と一緒にいるM13号(奥の個体)
写真提供: © Rachid El Khalmichi

検事総長はどのような状況下でこの鳥が捕獲されたかを明らかにし、その行為を行った者を特定するための調査を始めました。この事件は野生生物虐待問題に関する国家レベルでの論議を引き起こし、市民団体を鳥と生物多様性の保全に積極的になるよう動員しました。多くの人々が鳥類保護に関連する法律に関心をもち、その目的のために地元自治体が動き始めたのです。

「これは長い目で見ると鳥に対する有害な行為を変えさせることへの出発点です。そして、キャンペーンを通じて認識を向上させ、大規模な保護プログラムを策定するための基盤をGREPOMに整えました。それは、地域住民がそのプログラムの目的を受け止め、この地域におけるGREPOMの活動をより理解してくれるようになったためです。」とAdil氏は付言しました。

M13号が放鳥された1ヶ月後、専門家はM13が体力を取り戻し彼の兄弟のM14号と一緒にいるところを度々観察されていると述べています。

「私が最後にM14号を見たのは3月20日で、他のハゲワシの群と北へ向かうところでした。放鳥された5羽のうち少なくとも2羽は山の上空にいるのを見ることができます。4月25日まで100羽ほどのハゲワシが高空を飛んでいるのが見られましたが、その時は標識を判別できませんでした。」とGREPOMの北部ユニットのモニタリング・コーディネーターのRachid El Khamlichi氏は説明しています。

今回の成功によりGREPOMは、このプロジェクトの成功を支援するためにハゲワシのモニタリングのための寄付調達に期待をしています。

モロッコ政府もGREPOMや他のパートナーと共にこの地域におけるハゲワシの保護活動をし、保護、リハビリ、モニタリングを効率的に行う活動を緊密に進めています。

何年にも亘りGREPOMは、ハゲワシの習性と適応に関する観察データを集めており、鳥類保護問題に関して地元の人々の認識を向上させ、教育を続けて来ました。この活動により、地元住民にハゲワシは人と生態系に多くのサービスを提供する重要な鳥であると納得してもらうことができました。2016年には20人を超える若者が、ハゲワシを守る活動への参加を誓い、ハゲワシのための採餌場所の設定に参加しました。

 

報告者: Blandine Mélis and Jude Fuhnwi

 

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