今こそペンギンを守ろう

ペンギン類はアホウドリ類に次いで最も絶滅が危惧される海鳥です。写真はオウサマペンギン。 写真提供: © O. Prince/princeimages.co.uk

美しく、元気付けてくれ、また、絶滅が危惧されるペンギンは世界で一番チャーミングで、一目で姿かたちが分かる鳥です。けれども南極から赤道まで、様々な脅威の網が彼らをこれまでにないほど絶滅の危機に向かわせています。次週、私たちは世界的なペンギン・キャンペーンの開始を祝うために世界中からペンギンの話を集めて共有する予定です。それにより何か状況を改善する助けになるでしょう。

人々の注目を掴む鳥が何種類か居ます。ツノメドリ、オウム、アホウドリ、フクロウなどです。彼らは物語や歌を呼び起こし、人は彼らの写真で家の中を飾ります。けれども鳥のあるグループは他のどの鳥よりも頭抜けて人から好かれています。それがペンギン類です。このことを考えると不思議です。

ペンギンは鳥類の最も知られた特徴である飛翔を行うことが出来ません。ですから彼らが帆翔や空中アクロバットを楽しむことはありません。実際に多くの人には野生のペンギンの行動を楽しむ機会がありません。多くの人には彼らを自然の生息地で見る機会が限られているので、ペンギンは月から来たと言っても同じことかもしれません。

実際には、もし人々がこのような機会を得れば、すぐにペンギンのコロニーが放つどうしようもない臭いを嗅ぐことになるでしょう。けれどもこのことはむしろペンギンを見つけることがどれほど感動的であるか、そして、私たちの限られた生活圏を超えてペンギンを見る能力や地球上で最も遠隔な場所の命を考えることを物語るものです。

勿論ペンギンには多くの愛すべき点があります。彼らは可愛らしく、地上にいる時は滑稽ですが水中深く潜り毎年数千キロの渡りをすることが出来る優秀なスイマーなのです。南極圏に生息する種は雛を育てるために地球上で最も過酷な条件に耐えるのです。

ペンギンはニュージーランドの森林からガラパゴスの火山島まで、また、アフリカ南部の海岸から亜南極圏の遠く離れた島々まで様々な環境に生息しています。けれども、多くの人に愛される他の鳥達と同様、人に好かれることだけではペンギン類が絶滅に向かって滑り落ちて行くことを止めるには十分ではありません。

ペンギン類全18種のうちの10種がIUCNのレッドリストで絶滅危惧ⅠB類またはⅡ類に挙げられており、アホウドリ類に次ぐ2番目に絶滅が危惧される海鳥という不名誉を与えられています。アホウドリと同様、ペンギンは二つの生息地で最悪な状況にあります。その一つ、陸上の繁殖地では外来種による捕食、環境の劣化および病気が生息数を減らしています。

二つ目の生息地、海では油汚染と漁業の影響が大きな被害を与えています。この二つは彼らの餌を減らし、また漁具による混獲事故を招きます。気候変動の悪影響も陸上と海の両域で迫って来ています。生息地の喪失や、これまでよりも度々起きる集中的な嵐、海洋の食物連鎖の混乱などは気候変動により引き起こされます。

ですから地元から地球規模まで、あらゆる段階でやるべきことはたくさんあります。既に多くのことが行われているのも事実です。世界中の自然保護団体が最も危惧されるペンギン種の保護活動を行っています。それは保護の第1歩であるペンギンの生態とその減少の原因をより良く知ることから、より進んだ段階、コロニーにおける外来種の抑制や根絶、更には全く新しいコロニーの建設などがあります。

実際、バードライフのパートナー団体によるペンギンの保全活動全てをカバーする時間もスペースもないということは、おそらく励ましとなるはずです。それはこれらの象徴的な鳥の運命を好転させるために活動している研究者の団体、独立した組織、国の研究機関の大小には関係ありません(ほとんど知られていないペンギンの一種ニュージーランドのキマユペンギン(現地名:タワキ)をより詳しく知るために、タワキ・プロジェクトのブログをご覧になることを心からお勧めします)。

ここ数ヶ月、南極ではより規模の大きな励みになるような動きがありました。コウテイペンギンアデリーペンギンの両方(プラスその他)を守る助けとなる世界最大のマリーン保護区(MPA)(面積1.5平方キロメートル)が昨年10月にロス海に設定されたのです。

これはいくつかの顕著な交渉の結果、EU(欧州連合)と24カ国の合意により可能になったものです。もちろん私たちはこれが第一歩に過ぎないことを望んでいます。バードライフはここ数年間‘英国南極調査’と共にウェッデル海とスコシア海のどこがペンギンにとって最重要な場所かを特定するために活動してきました。

南極全域と、言うまでもなくペンギンの重要な採食地と世界に広がる渡りのルートの海洋保全を改善することは自然保護というパズルの重要なピースです。ペンギンは私たちの海洋環境の管理に関する生きた指標であり、同様に、まだやることが多くあると告げています。

保護活動は前に進めてゆきますが、私たちはあらゆる段階でのペンギンへの脅威に取り組まなければならないことも明らかです。それは気候変動への取り組みを地球レベルとし、地域レベルでは個々のコロニーが消滅しないようにすることが含まれます。もし一種でもペンギンが絶滅するなら(ケープペンギンキンメペンギンが極めて危険な様に)それは世界で最も愛される鳥であってさえも人類の行き過ぎた行為から救われないことを私たちの社会に告げることを意味するのではないでしょうか?

これは誰をもやらずにはおかない気持ちにさせることですが、ロス海のMPAのように、私たちが続けて行くことを希望し期待する行動です。このことを心にとどめて、バードライフは今こそ世界的な‘ペンギン保護キャンペーン’を立ち上げるときだと決めました。脅威が増大し、ペンギンの個体数が減少する中、私たちは保護活動への支援を確立し、これらの象徴的な鳥の未来を漫画のフィクションやビスケットの包み紙だけになってしまわないように確保するために直ちに断固として行わなければなりません。

この目的のため、私たちは今月1ヶ月をペンギンのために捧げています。また彼らが行くところはどこでもその未来のために戦っています。今後何回かの記事でこの世界でもっとも危惧される鳥の特集を組みます。それはアフリカ、ニュージーランド更には赤道をまたぐ群島の熱帯海域のようなペンギンには相応しくない前線まで私たちを連れて行く旅です。

私たちはペンギンが面している脅威を軽減するために行っている重要な活動の詳細も報告しますが、皆様の支えがあって初めて活動の規模を広げ、ペンギンの家族に如何に人が彼らを愛しているかを示すことができるのです。

 

報告者:Rory Crawford

 

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