2016年版レッドリストで見落としたかもしれない6つのこと

スラウェシヤイロチョウ
© feathercollector, Flickr

先月2016年版レッドリストが公表された時には、危機的状況にあるオウムやキリンが新聞の見出しを独占しました。

世界的に有名な種が苦境にあるとそれは必然的にメディアの目に留まりますが、その他の多くの興味深くて奇抜な話は取り上げられずに終わります。サルからマンゴーまで、数万種もの動植物を毎年評価しているレッドリストの役割を考えれば、避けられないことです。

今回は発表当時メディアに見落とされたであろう鳥に関するいくつかの重要なニュースを取り上げます。 

 

1.700の新種

バ-ドライフはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストのために全ての鳥類の危惧の状況を評価する役割を担っています。この任務を果たすために先ずは世界に何種を鳥が生息しているのかを正確に知る必要があります。

鳥類の多様性をより良く理解するため、私たちの科学チームはバイオメトリクス(生物測定学)、羽衣、声、生態、習性、地理的関係、遺伝子を比較して世界の鳥全てを対象に分類の見直しを行い、どの亜種が実際には独立種であるかといった決定作業を行いました。

結果は目を見張るものでした。これまで鳥類の多様性を著しく過小評価していたことが分かったのです。2回に分けて行われた見直しで1,000種を超える‘新種’が認識されました。今回のレッドリストではそのうち742種が公表されました(残りは2014年に既に公表済み)。

これら742種は全て先月発行された「Illustrated Checklist of the Birds of the World Volume 2」で解説されています。

Comoro Blue Vanga © Paul van Giersbergen

 

2.ヨーロッパのもっとも新しい鳴禽は最も希少

分類の見直しにより得られた新しい情報は、保護活動の優先順位付けにも活かされます。例えば、今回私たちはGran Canaria Blue Chaffinch(写真)が恐らく欧州で最も希少なスズメ目の鳥であることを発見しました。

本種は、以前はアオアトリと同種とされていました。けれども基亜種アオアトリが比較的安全な状態にあるのに対して(準絶滅危惧種)、Gran Canaria Blue Chaffinchが好む松林は山火事によって破壊されてしまいました。現在240羽程度が残っているだけで、はじめから絶滅危ⅠB類に分類されました。アゾレスウソでは回復の証拠が得られていることため、Gran Canaria Blue Chaffinchが欧州で最も希少なスズメ目となるでしょう。

Gran Canaria Blue Chaffinch © Aurelio Martin

 

3.ガラパゴスで最初の絶滅した鳥

分類の見直しの一環として、私たちの専門家は昔絶滅した博物館の標本も確認したところ、少々異常な状況を招きました。742種の新種のうち13種が既に絶滅していたのです。

絶滅後に新種と認定されたこれら13種は全て島嶼に生息する種で恐らく外来種により一掃されたのでしょう。セーシェル諸島のMarianne White-eyeもその一つで、他の島嶼の固有種の多くを救ったような対策が実施される以前の19世紀に絶滅しました。

もう一つ、独立種とされた輝く赤色のLeast Vermilion Flycatcherは、ガラパゴス諸島で最初の絶滅した鳥という不名誉な称号を得ることになりました。サンクリストバル島のみに生息していた本種は1835年にチャールス・ダーウィンが航海中に発見しました。1960年以後、外来植物が島の在来種に取って代わった結果、この昆虫食の鳥が好む虫が減少しまました。これに加えて鳥ジフテリア、皮膚バエ、ネズミなどが最後の一撃となったようです。信頼できる最後の観察は1987年のものでした。

Least Vermillion Flycatcherに最も近縁なベニタイランチョウ © Lip Kee Yap

 

4.1種の鳥が12種に

分類の見直しで最も極端な結果となったのが、東南アジアに生息するアカハラヤイロチョウが12の独立種になったことです。Red-bellied/Philippine Pitta (Erythropitta erythrogaster), Talaud Pitta (Erythropitta inspeculata), Sangihe Pitta (Erythropitta caeruleitorques), Siau Pitta (Erythropitta palliceps), Sulawesi Pitta (Erythropitta celebensis), North Moluccan Pitta (Erythropitta rufiventris), South Moluccan Pitta (Erythropitta rubrinucha), Papuan Pitta (Erythropitta macklotii), Louisiaide Pitta (Erythropitta meeki), New Britain Pitta (Erythropitta gazellae), Tabar Pitta (Erythropitta splendida) and New Ireland Pitta (Erythropitta novaehibernicae)がそれです。

この結果の理由はバードライフのNigel CollarがMotherboard/Vice誌に発表済みです。実はさらにもう一種(スラヤイソチョウ)が既にアカハラヤイロチョウから分岐されているので、現在この鮮やかな赤い鳥は「パン屋の1ダース」(=13)いることになります。

 

5.分布域の広い鳥も窮地に

分布の広い鳥にはリスクが少ないことは容易に想像できます。けれどもこれはカシラダカのケースが示すように、常にそうではないようです。カシラダカはノルウェーから日本までユーラシア大陸北部全域で繁殖し、この広い分布域のために長い間、本種は安全であると考えられてきたのです。ところが、新しい調査データから21世紀に入って以来本種は3分の1以下に減ったと考えられています。繁殖地における森林伐採や排水、農業の集約化、越冬地における大規模な罠猟などが要因です。この憂慮すべき事態を受けて、2016年版レッドリストでは本種は軽度懸念種から絶滅危惧Ⅱ類に格上げされました。

カシラダカ © Aaron Maizlish

 

6.オウムにとっては悪いニュースばかりではなかった

アジアやアフリカではペットとしての鳥の売買によって、多くのオウムやインコが野生絶滅に近い状態に陥ってしまいました。けれどもニュージーランドの東海岸に位置するチャタム列島では、魅力的な緑色のインコが絶滅との戦いから復活しつつあります。

チャタムアオハシインコは約20年間レッドリスト上で絶滅危惧ⅠB類と評価されていましたが、それは生息地の喪失や外来種だけでなく、ライバルのオウムの恋心にも原因がありました。

この列島に生息する近縁種アオハシインコとの交雑がチャタムアオハシインコを絶滅させる恐れがありましたが、地元の保護活動グループによる慎重かつ継続的な管理により、チャタムアオハシインコは絶滅危惧Ⅰ類から同Ⅱ類に格下げするところまで戻ってきたのです。

チャタムアオハシインコ © Bill and Jack Moorhead

 

報告者: Alex Dale

原文はこちら

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