3万羽の海鳥を救った男

ニシキバナアホウドリ
写真提供: © Ed Dunens

独特のヘアスタイルと微笑をもつクレメンスは魅力的な男です。彼はナミビアでのATF(アホウドリ・タスクフォース)をまとめ上げた真の‘公海のヒーロー’です。彼の活動により先頃ナミビア政府が海鳥の混獲を止める規制を、議会通過に導いたのです。去年、数週間を海で過ごし、漁師たちと友達になり、海鳥を救う活動を手助けするよう説得し、鳥さえも魅了してしまったようです・・・。以下は彼とのインタビューの一部です。

ナミビアの現状をお聞かせください:

ナミビアは混獲に関して言えば大変破壊的な漁業をやっており、一年に3万羽の海鳥を殺していました。混獲で溺死する鳥を目にするのは本当に悲しいことです。特に大きな鳥の場合ほどそうで、彼らは寿命が長く、巣には彼らを待っている雛が居るかも知れず、しかも簡単な方法で混獲を避けられるのが分かっているので尚更です。このことが、もしそう呼んでもよろしければ‘上層部の人たち’の注目を大いに集めました。今回は規制が実施されていますので、混獲数を85~90%減らすことが出来るものと期待しているところです。この混獲削減方法を採用しているはえ縄漁船に乗って海に出る今では、実際に混獲で死ぬ鳥の記録はゼロなのです。

今回の規制が行われる前にもこの方法を採用していた漁船はあったのでしょうか?

はい、メルルーサ(魚の種名)漁業組合が自主的に採用していました。それは私たちが多くのワークショップをやり、漁師が漁港に居て忙しいところを何度も港を訪れた時でした。私たちはさぞ邪魔だったでしょうね(笑)! 私たちは彼らの船に乗るようになり、漁師や漁労長にどのように‘鳥ポール’(鳥を脅して船に近付けないようにする道具)を使えば良いか、それがどれ程簡単で安価なものか、またこの方法は毎日の漁業活動の邪魔をするものではないことを示しました。彼らは言いました。「OK。やってみるよ。」正に上手くいった瞬間でした。

漁船に乗って何をするのですか?

私たちは1回につき12日間乗組員と共に海に出て、混獲データの記録を含むモニタリングを行います。私たちが作業台の天辺に座って鳥の数を数えているのを見ると彼らはいつも好奇心をそそられるようで(笑)、私たちに聞きます。「船の後ろにはこんなにたくさん鳥が居るのに何で守らなきゃならないのか?」。そこで私は鳥のライフサイクルや繁殖などの状況を説明します。彼らはアホウドリの寿命が60年もあることに驚きます。私は一度も悪い経験はしませんでした。彼らは理解さえすれば鳥を守ろうとしました。船上では漁民との間に良い関係を築く最善の方法は自分のやっていることを単に説明することではなく、彼らの視点を尋ね、それを理解するように努めることだと思います。あなたが彼らに話し、彼らがあなたに話をし、友達になり、その友情が信頼を生むのです。偶然バーで彼らに会い、私たちはイギリスのサッカーについてたくさん話をします。彼らは私がイギリスに行ったことに感心して、今では私には彼らに話すことがいろいろあるのです!

最も記憶に残った出来事は何でしょうか?

私自身が経験した最も面白かったことの一つは、私が船の先端に居て、漁師がイルカを指さして私を呼んだ時のことです。私が振り返った時、何と1羽のトウゾクカモメが頭に止まったのです。私はトウゾクカモメが私の目か何かを突こうとしたのではないかと思い、居場所を変えると飛んで行きました。ところがすぐに戻って来てまた頭の上に止まったのです。私の髪の毛を狙っていたのだと思います。船長は涙を流して笑い転げ、以後彼らは私のことを‘鳥男’と呼ぶようになったのです。

最初の船旅はいかがでしたか?

夕方漁船で出港すると、彼らは私が船酔いしないかどうか聞きました。「分からないけれども、多分大丈夫だと思う。」と答えました。夕食を始めると、彼らは私がどうなるか知っていたので大量の料理を出しました。2時間は大丈夫でしたがその後丸二日間船酔いに苦しめられました。彼らは笑いながら「海の生活はどうだい?」と聞きましたが、よく世話をしてくれ、元気付けてくれ、水をくれました。

ではあなたは船酔いになった海鳥保護の指導者だったわけですね?

それだけの意味はあります。船酔いにかかっていた日数をお忘れですか?誰かが「あなたは3万羽の鳥を助けたのですよ」と言えば、それはワオと叫ぶほど素晴らしい実績です。けれども私はこの混獲問題を真剣に捉え、規制の後押しをしたナミビア政府と漁業長にもお祝いを述べます。そして時には漁師たちも本当に鳥に興味を持ち、私が写真を撮るのを手伝い、「あれはニシキバナアホウドリじゃないか?」と言ったりしました(しかもそれが合っているのです)。

 

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