トヨタ環境活動助成プログラム: フィリピン ルソン島におけるフィリピンワシの保護(2015年~2016年)

プロジェクトの背景

フィリピンワシは、フィリピンの国鳥に指定され、国民からも敬愛が持たれている大型の猛禽類です。しかし、近年は個体数250-750羽と世界的な絶滅危惧種となっています。2012年度トヨタ環境活動助成プログラムの支援を受けて現地調査を行った結果、フィリピン・ルソン島で過去36年間ほとんど生息が確認されていなかったこの種が、ミンガン山周辺で1組のつがいと1羽の幼鳥が再発見されました。

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ルソン島シエラマドレ地域でフィリピンワシの生息を36年ぶりに確認

絶滅危惧種の生息が新たに確認されたことは、世界的に見ても大変貴重なことです。この再発見を受けて、新たな繁殖地であるミンガン山周辺を安全な保護区とするため、2012年1月から2014年6月のプロジェクトに引き続き、活動を実施しました。

プロジェクトの概要

 本プロジェクトでは、プロジェクト地・ルソン島のフィリピンワシの生態調査を通し、ミンガン山周辺における生息状況や繁殖生態を解明します。また、調査結果を元に、フィリピンワシの「重要生息地指定」として法的に保護するために、管理計画策定のためのワークショップ開催や保護区設立のための条例制定に向けた自治体向けの政策提言活動を行いました。さらに、地元住民のバードウォッチングガイドの育成、バードウォッチングツアーを開催し、人々への普及啓発や生計向上を支援しました。

プロジェクト対象地: フィリピン ルソン島 ミンガン山周辺(オーロラ州、ヌエヴァ・エシハ州)
共同実施団体: ハリボン協会(フィリピンにおけるバードライフのパートナー団体)


図1. 調査地の位置図

プロジェクトの活動内容

  1. ミンガン山周辺の保護区・管理計画の策定に向け、フィリピンワシの基礎生態を明らかにする。

    ミンガン山周辺において、地元住民と協力し、調査隊を結成しました。調査隊により、定期的なモニタリングが行われ、プロジェクト地には少なくとも2つがいのフィリピンワシが繁殖していることが明らかになりました。


    図1. 確認されたフリィピンワシ           写真2. フィリピンワシ調査隊


    図2. フィリピン・ルソン島ミンガン山周辺の地域に、約25平方kmの調査区を28箇所設置し調査を実施しています。

  2. フィリピンワシの生息地であるミンガン山周辺を法的な措置に基づき保護区に指定する。(フィリピンワシ重要生息地への指定※)

     フィリピンワシの生息地であるミンガン山周辺は、ガバルドン村(ヌエヴァ・エシハ州)、サン・ルイス村、ディンガラン村(オーロラ州)の3つの村にまたがっています。そのため、この3村に対して、フィリピンワシ重要生息地へ指定し、生息地全体が保護されるように働きかけを行いました。

    ※「重要生息地」とは、すでに保護区になっている地域以外において絶滅危惧種が発見された場合に、適用される制度で、地方自治体の申請により、保護区として設定される。

     重要生息地の指定のためには、フィリピンワシの生息状況に基づき、管理計画を策定する必要があります。そこで、ハリボン協会は、各村においてフィリピンワシ管理計画策定のためのワーキンググループを組織しました。ワーキンググループには、各村の自然保護行政に係る行政機関、先住民、地域住民、州の天然環境資源省職員などが参加し、管理計画草案を策定するとともに、各ステークホルダーの役割分担について議論しました。2016年6月現在、最も活動が進んでいるガバルドン村では、管理計画の草案が作成されました。


    写真3(左)、4(右)ワークショップの様子

  3. ミンガン山周辺の生息環境を守るため、違法伐採や密猟などのパトロールを実施する。

     フィリピンワシの生態調査や重要生息地の登録に加え、フィリピンワシ減少の直接的要因となる違法伐採や密猟などに対する対策も非常に重要隣ります。本プロジェクトでは、それらを取りしまる森林監督官を育成するとともに、森林パトロール隊を結成し、パトロールを実施しています。

     2016年5月には、現地住民の狩猟用の罠にかかったフィリピンワシの幼鳥が保護され、翌6月には無事に放鳥されました。


    写真5. 森林監督官育成研修

  4. 地元住民のほか、マニラ市民の保全への意識を高める。また、地元住民の生計向上のための能力開発を行う。

     フィリピンワシの保護や地元住民に対する普及啓発の他、バードウォッチングガイド育成とマニラ市民を対象とした地元ガイドによるバードウォッチングガイドツアーを開催するなど、地元と都心をつなげ、保全への意識向上と生計向上の相乗効果を狙った取組を実施しました。

     特に、バードウォッチングツアーでは、ガイド研修を受講した地元のツアーガイドにより、マニラ市内からのバードウォッチャーに対して、ツアーが実施されました。この取組は始まったばかりですが、多様な生物が生息するこの地域に根づいた活動となるように、今後も力を入れていきたいと考えております。


    写真6. 地元の村での普及啓発活動イベント      写真7. 地元ガイドによるバードウォッチングツアー

今後の活動方針

 本プロジェクトでは、ミンガン山周辺が重要生息地であることを示し、フィリピンワシの重要生息地指定に向けた道筋をつけることができました。直近では、この取組を継続し、重要生息地に指定されることがとても重要な課題です。さらに今後は、調査やパトロールを継続するためのスキームを強化するとともに、重要生息地指定後の維持管理について、各ステークホルダーと協議・検討を重ねていく予定です。

 また、地元ガイドによるバードウォッチングツアー開催など、地域住民の生計向上の活動についても開始されたばかりであり、今後は詳細なプログラムの開発等を通し、段階的に自立へ向けた取組を実施することが重要です。

このプロジェクトは、トヨタ自動車株式会社の2014年度「トヨタ環境助成プログラム」の助成を受けて活動しています。