バケツを蹴飛ばそう: EU共通農業政策は今でも農村地域で機能しているか?

写真提供: (c) Shutterstock

2013年に決まったEUの共通農業政策(CAP)が効力を発揮し始め、政府からの農家への助成金の支払い遅延の原因となったITシステムの問題が解決した今、多くの人たちが欧州の農業部門がひと時の平穏を迎えられると願っていました。けれども2016年は既にかなりの‘危機’を迎えています。牛乳価格の暴落や、ロシアからの豚肉の輸出禁止、更には西ヨーロッパで例年にない春の大雨によって小麦収穫量が大幅に減産となる可能性が生じたことなどにより、まるで農業部門は一難去ってまた一難という状況にあるようです。

欧州の予算の3分の1以上が農業を支えるために使われていることを考えると、農業部門は好成績を上げていると思うかも知れませんが、残念ながら、現実はこれとは程遠い状態です。もしCAPが水漏れのするバケツならば、穴を指で塞ごうとしてもまた次々と穴が現れるため、すぐに指が足りなくなるでしょう。そして、バケツの底が抜けてしまうような脅威は、CAPにより集約農業が促進された結果生じた生態系の危機なのです。バードライフ・ヨーロッパと欧州環境機関により行われた報告書では、CAPによる新しい‘緑化’対策は最も頭の痛いこの水漏れに対処することに完全に失敗したと説明されています。自然を守るために新たに導入された対策は生物多様性のために提供されるには無用以外の何物でもなく、抜け穴、例外、矛盾だらけです。例えばある国では生物多様性のために利用される地域に土地管理者は殺虫剤を散布することが許され、それでいてその地域の‘緑化’のための助成金の支払いを受けているのです。これこそ人と地球のためになることが実現しない政策の結果の一例です。

問題が山積みで農家からも環境保護活動家からも国の省庁からも懸念が生じている今、CAPが完全に信頼を失うのは遠いことではないでしょう。このような水の漏るバケツを使い続けるのではなく、今こそ新しいバケツを手に入れる時ではないかと自問するべき時が来るでしょう。

共通農業政策(CAP)は最初第2次大戦後に欧州に十分な食料を確保するために作られました。この目的は幸いに上手く叶えることが出来ました。けれども今私たちは新たな問題に直面しているのです。21世紀は広範な生物多様性の喪失、気候変動、食べ物に関連する健康問題などの危機に直面しています。もし新しいCAPが今までと同じなら、同じように穴が開いているバケツができるでしょう。私たちの次の食糧政策は単に‘量’の問題ではありません。最近直面している危機から考えてみると、現在のCAPが実際に農家の生計を脅かし、生物多様性の大規模な喪失を起こしていることは明白です。何をどう育てるかということに重きを置いた新しいCAPが必要です。更に、農家に対して何らかの支援を行うなら、それは気候変動と生物多様性喪失にも対処する方法で作られた、人々の必要とする食糧に向けなければなりません。

バードライフは他の欧州の団体と共に、政策が何をなすべきか、どのようにそれを達成するかについて、すべて考え直すことを求めてきました。すなわち、欧州委員会にCAPに関する‘フィットネス・チェック’を求めるものです。欧州自然指令の‘フィットネス・チェック’の集中的な精査のあとを受けて、農業に対して同様の作業を行うことは、歓迎すべきものになる可能性があります。この作業は欧州の農業に新しい局面を作り出すでしょう。農家を支援するだけでなく、欧州の住民が農業から正しい産物、即ち持続可能な食料を得ることにつながるでしょう。

またどのような種類の食糧の生産を支援するべきかを論議する良い機会となるでしょう。より健康に良いものか、気候に優しいものか、生物多様性を支えるものか、あるいはこの3つすべてを満たすものかです。取り組むべきは農民にも家族にも野生生物にも有効な政策を作ることです。予算に制約がある今、水漏れする容器に数千万ユーロを投入することを正当化するのはもっと難しくなるでしょう。古いバケツを使い続けるのはやめて、新しいバケツを手に入れましょう。

報告者: Thomas Quinn

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