鉛: 鳥にも人にも悪影響

鉛弾は鳥の消化器系を阻害し、餓死に追い込む。
写真提供: Flickr/Adrian Kingsley-Hughes

鉛は人に悪影響を及ぼします。

ローマ時代には既に人々は鉛摂取による悪影響を経験していたものの、その後鉛はワインの甘味料として使われていました。時の経過とともに、必然的に鉛の使用は次第に制限されるようになり、EUでは現在ガソリンや宝石への使用が禁止されています。けれども、その他の用途ではまだ使用されています。いつものように、産業界から鉛の規制に対する強い抵抗があるのです。彼らは、自分たちの活動で環境内に何トンもの有害物質を放出しているにもかかわらず、規制によってビジネスが邪魔をされると感じているのです。

鳥は鉛の使用継続による主な犠牲者の一つです。人と同様、鳥にとって鉛は極めて有害です。もし鳥が鉛に晒されると、ゾッとするような死につながるのです。鉛は鳥の消化器系を麻痺させ、その結果鳥は何日もヨロヨロとさまよった末に餓死するのです。

鳥の種が鉛に晒される主な仕組みは‘グリット(砂嚢内の小石)’を通してです。グリットは鳥の消化管内にある小石で、餌の消化を助けるものです。進化の不思議な出来事として、鳥は砂嚢(消化器官の一部)にグリットを取り込むことで食べた餌を容易に磨り潰すという方法を身につけました。グリットが食べ物をすり潰すのを助けてくれるのです。

不幸なことに、鉛の銃弾はグリットと同サイズのことが多いため、多くの鳥が間違って小石の代わりに銃弾を飲み込んでしまいます。さらに悪いことに、何年にもわたる鉛弾での狩猟により、自然の石よりも多くの銃弾の方が多い湿地もあるのです。これがカモ類、シギ・チドリ類や陸鳥に大きな被害を与えます。死んだ鳥、あるいは、死にかけている鳥は通常ワシやトビなどの猛禽類が捕食しますが、彼らも同様に鉛害を受けてしまうのです。

鉛はホシハジロ、カオジロオタテガモ、エジプトハゲワシなどの個体数の減少に関係しており、これらの種はすべて絶滅の恐れがあります。特にカオジロオタテガモとエジプトハゲワシの2種は危険なほど個体数が少なく、たとえ1羽でも失うことが出来ない状況です。

欧州化学機関(ECHA)は湿地における鉛弾の危険性について専門家と協議を行いました。バードライフ・ヨーロッパはRSPB(英国のパートナー)と共同で鉛弾禁止の必要性を示す山のような証拠を提出しました。

これらの証拠は、現在ECHAが提案している湿地だけの禁止では不十分であることを示しています。ヨーロッパヤマウズラやオオハクチョウなど多くの種が湿地の外で摂取した鉛弾で死んでいるのです。それに加えて、過去の禁止の経験から、使用だけではなく、鉛弾の販売と保有に対しても対策が必要なことを示しています。何故なら、多くのEU加盟国の法律施行があまりにも限定的で、特定の種あるいは特定の場所に限った鉛弾禁止は事態を非常に複雑にしてしまいます。

鉛弾の禁止には想像できないことなど何もありません。オランダとデンマークでは既に禁止されています。唯一変化が必要なのは銃弾産業だけですが、鉛弾で鳥と、鳥を愛する人々に害を及ぼし続けることなど論外です。

私たちは鳥を悲惨な死から救う対策をEU(欧州連合)が実施することを期待しています。ECHAとEU加盟国は、ビジョンを持ち必要なことをやる意思があれば、達成することが出来るのです。

 

報告者: Wouter Langout

 

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