ビクトリア湖に伝わる知恵と保全化学

ビクトリア湖のアフリカハゲコウ
© Marc Veraart

新しい論文では、東アフリカのビクトリア湖周辺のバードライフ・パートナーが政府、NGO、コミュニティの保護グループとの取り組みについて報告されています。彼らの分析によって、保護プロジェクトをより良い、あるいは悪い方向に導く可能性のあった要因を明らかにしており、アフリカや世界各地の活動家は、彼らが苦労して得た経験からたくさんの教訓を得ることが出来ます。

この土地周辺の住民は、地元の環境に関する深い知識を持っています。どの植物にも名前があり、それぞれ食糧、燃料、薬あるいは建築材料などの用途が世代を超えて受け継がれています。季節の移ろい、動物のライフサイクル、川の水の増減は、毎日の生活からかけ離れたものではなく、生活そのものなのです。このような情報と経験の全てが人々の心の中に蓄えられており、保護活動に役立つ貴重な情報源になりうるのです。

残念なことに政策決定者は地方の習わしや知識を常に尊重するわけではありません。地元に伝わる知識が本や学校の勉強からではなく、その土地に暮らし、働いている人々の世代を重ねて蓄えられた総合的な経験に由来するものであるにもかかわらず、技術的な資格、あるいは識字力の欠如といった理由で、しばしば無視されてしまいます。土地管理政策も同様に、生態系から遠く離れた会議室で決められ、実際にその生態系に生計を依存しているコミュニティーと適切な話し合いは持たれません。

大勢の自然保護活動家が今では地元のコミュニティや団体と共同で活動することは非常に有益なことと理解しています。彼らの環境と結びついた知識は、適切で費用対効果の高い保護戦略を策定するのに不可欠です。彼らは自身の生存のために依存している自然資源を守ることに関しては非常に意欲的なことが多く、プロジェクトに参加することにより彼らの責任感も高まり、長期的には成功する可能性が高くなります。

地元コミュニティと共同で活動することはバードライフの‘地方から世界へ’という自然保護戦略の重要な核であり、それにより長期的かつ非常に効果的な自然保護活動につながります。ほとんどが小さな、地方の団体からなる世界的ネットワークを活かして、良いものも悪いものも含めて様々な経験を共有していることがバードライフが成功している理由の一つです。バードライフはこの新しい論文の中で、ビクトリア湖周辺の地元自然保護グループ(LCG)と共同で活動しているバードライフ・パートナーによる5つの事例を評価しています。

アフリカで最大かつ世界最大の熱帯湖であるビクトリア湖はシクリッドという魚の多様性で有名で(魚の進化の過程が見られるとされることからビクトリア湖は「ダーウィンの箱庭」とも呼ばれる)、ハシビロコウやハシボソキイロムシクイやシタツンガ(羚羊の1種)などの世界的な絶滅危惧種の生息地です。生物多様性におけるこの湖の重要性は、17のIBA(ビクトリア湖盆地にまで広げればさらにもっと)がこの湖と河川でつながっていることからもよくわかります。湖はアフリカ最大の内陸漁業を支え、その資源と生態系サービスは数百万人の人々の生計の維持に役立っています。

悲しいことに、ビクトリア湖はその沿岸部での際限のない人口増加と、これに関連する汚染、環境劣化および自然資源の過剰利用により生物多様性の劣化が危惧されています。歴史的に見ると、深刻な貧困のために、政府は持続可能な生物多様性の管理よりも経済開発と貧困緩和を優先してきたのです。

液体石鹸の作り方を教えるマバンバのサイト支援グループ 写真提供: © Mercy Kariuki

液体石鹸の作り方を教えるマバンバのサイト支援グループ
写真提供: © Mercy Kariuki

ケーススタディでは地元のIBAの保全活動を行っているLCG(地元自然保護グループ)の活動を引用しました。それには、ケニアのYala湿地、ウガンダのMabamba湾とLutembe湾、ブルンジのMpungewe山脈、ルワンダのAkanyaru湿地が含まれています。彼らは野生生物の密猟、山火事、外来種から湿地の排水や農業の侵入まで、様々な脅威に取り組まねばなりませんでした。これらの国のバードライフ・パートナーはLCGと共に‘コミュニティ活動計画’を策定、実施し、地方及び国の政府にインプットしてきました。2015年にウガンダの首都キガリで行われた検討会でパートナーはこれらのケーススタディを討議し、政策決定者、NGO、地元コミュニティむけの意見書を作成しました。

保護活動には‘フリーサイズ(一つで全てに当てはまる)’の解決方法はありません。どの森林、湿地、村落、社会もそれぞれ特有の課題が組み合わさっており、一つの場所で有効な方法が別の場所ではそうではないかも知れないのです。けれども、NGO、国際機関、政府がより良い保全活動計画を策定するのに役立つような、どこでも共通かつ包括的な知見も沢山あります。それは次のようなことです。

  • 外からの資金提供のあるプロジェクトは短期のもの(最大で2~3年)なので、コミュニティ自身が持っている資源を管理するための能力構築、独立性の推進、コミュニティ団体の強化などにより重点を置くべきこと。
  • コミュニティ団体と政府機関との間の関係を強化すること。
  • 初期の段階からコミュニティを計画過程に関与してもらい、より適切で持続可能な保護計画を作り、地元の受け入れと責任感を強化すること。
  • コミュニティ団体が法的認識を得られるように支援し、政府当局との立場を改善し、開発における公式のパートナーになるようにすること。
  • 知識や教訓を近隣コミュニティーと共有するようLCGに働きかけ、啓蒙活動の効果を高めること。

この報告はビクトリア湖の熱心な保護グループの価値のある知識を世界のバードライフ・パートナーおよび広い範囲の保護ネットワークに広めることに役立つでしょう。彼らの成功と失敗から学ぶことで、世界の野生生物のためのより効率的かつ持続可能で、公正な保護を達成することが出来るのです。

 

報告者: Louise Jasper

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