最新研究で確認: スペインでのハゲワシ減少の主因は獣医薬の可能性大

スペインにはヨーロッパのシロエリハゲワシの95%が生息しています。
写真提供: Carles Carboneras

‘Journal of Applied Ecology’に発表された、スペインでの獣医薬ジクロフェナク使用の潜在的影響を分析した最新研究によれば、“同国で使用を認めたジクロフェナクを含有する2種の新しい獣医薬であるジクロベットとドロフェナクは、ヨーロッパで最も重要なシロエリハゲワシの繁殖個体群の生存を危うくする可能性がある”としています。

ケンブリッジ大学、RSPB(英国のバードライフ・パートナー)、ドニャーナ生物学実験所(CSIC)、ミゲル・エルマンデス大学、リェィダ大学から集まった研究論文の著者は、スペイン政府の規制機関AEMPSが指摘した知見不足に取り組み、スペインにおけるジクロフェナクを原因とするハゲワシの死亡数を年間715~6,389羽と推定しました。

ジクロフェナクの投薬治療を受けた家畜の死骸の予想数およびジクロフェナクの毒性に関する実験研究からのデータと合わせて、同治療を受けた家畜(主としてウシとブタ)の死骸のジクロフェナクの残留量を測定することにより、研究者はスペインのシロエリハゲワシの個体群は年率0.9~7.7%減少している可能性があると推定しました。

ジクロフェナクは抗炎症、鎮痛薬として家畜に使用されます。この薬は家畜にとっては毒ではありませんがハゲワシにとっては毒性があり、ジクロフェナクが処方された動物の死骸を食べたハゲワシは数時間後に腎臓疾患によって死亡します。

「ハゲワシの個体群に重大な影響をもたらす可能性があり、私たちの発見はスペインでのジクロフェナクの使用の予防的禁止と、ハゲワシに安全な代替薬メロキシカムの使用推奨を正当化するものです。」とこの研究の主導者Rhys Green博士は言いました。

博士の声明は英国獣医協会(BVA)会長のSean Wensleyも支持しています。「NSAID(非ステロイド系抗炎症薬)は動物福祉のためには重要な薬品ですが、例えばメロキシカムのような代替NSAIDはジェネリック薬品として、安価に入手できるます。代替NSAIDはハゲワシにも安全で、ジクロフェナクの代用としてインドで使用されています。」と彼は言い、BVAはEU(欧州連合)内でのジクロフェナク使用許可の取り消しを支援すると付言しました。「NSAIDを含むすべての獣医用製品は治療対象種と野生生物の両方に安全なものでなければなりません。」

スペインでのジクロフェナクを含む二つの新薬が承認されたことは、スペインが欧州のシロエリハゲワシの繁殖個体群の95%を超える生息地であるからだけでなく、アカトビ、イベリアカタシロワシ、エジプトハゲワシ、クロハゲワシ、ヒゲワシなど他の死肉食性鳥類の繁殖地でもあるために特に危惧されています。これら全てが獣医薬ジクロフェナクの影響を受けやすい種なのです。

論文の共著者Antoni Margalida教授は、予防的禁止以外にも、「ハゲワシや他の死肉食性鳥類に好まれる動物の死体あるいは瀕死の個体はNSAID汚染の検査が必要です。」と言いました。

ジクロフェナクの脅威は決して大げさではありません。1990年代にインドでは3種のハゲワシ類を準絶滅状態(99%減少)にまで追いやりました。「スペイン政府は家畜へのジクロフェナクの使用を禁止すると共に、EUでは最大かつ世界でも最重要な死肉食性鳥類の個体群の保護する責任があります。私たちはアジアで起きたような環境災害がスペインで起きることを許容することはできません。」とSEO(スペインのパートナー)のCEOの Asunción Ruizは言いました。

ハゲワシの個体群減少は人にとっても環境にも悪いニュースです。ハゲワシは環境内から死骸を除去するという重要な生態系サービスを提供してくれるのです。例えばもしハゲワシがいなければ、死骸の物理的移動と焼却により温室ガスも放出されます。

「科学により、私たちが欧州委員会、欧州医薬品庁、スペイン当局に対して表明してきたことを裏付ける数値を示すことができました。スペインで獣医用ジクロフェナクの使用を認めることは不合理かつ無責任なことです。」

と、バードライフ・ヨーロッパの保護活動責任者のIván Ramírezは言いました。

「欧州諸国はこの証拠を真摯に受け止め、アジアに続くべきです。」

 

報告者: Sanya Khetani-Shah

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