追跡不能な種を守るには?

絶滅危惧IA類のバルカンオオヤマネコは現在19~36頭しか残っていない
写真提供: Tom Bech/Flickr

10年ほど前まではバルカンオオヤマネコ(ヨーロッパオオヤマネコの亜種)は地元民にもほとんど知られておらず、その目撃例は架空の動物と言われてもおかしくないほど稀な存在でした。それもそのはずです。現在バルカンオオヤマネコの成獣の個体数は僅か19~36頭と推定されているのです。

昨年11月にIUCN(国際自然保護連合)は絶滅危惧種のレッドリストでバルカンオオヤマネコを絶滅危惧ⅠA類に定めました。現在飼育下にあるバルカンオオヤマネコは居ないので、もしこの指定がこれ以上格上げされればそれは絶滅を意味します。本種はマケドニアのマブロボ国立公園とアルバニアのMunela山脈のみで繁殖が確認されています。

バルカンオオヤマネコの繁殖地として知られている場所の一つマブロボ国立公園 写真提供: MES

バルカンオオヤマネコの繁殖地として知られている場所の一つマブロボ国立公園
写真提供: MES

本種の個体数に関するこのような惨状に‘バルカンオオヤマネコ復活プログラム(BLRP)’チームは肩を落としてばかりではありません。彼らは本種の密猟、餌の減少、生息地破壊などの脅威を防ぐために尽力しています。

‘バルカンオオヤマネコ復活プログラム(BLRP)’はドイツのEuroNaturとスイスのKORA社により2006年に開始されました。このプログラムに対し、科学者の国際コミュニティが保護のためのデータ収集を支援するという意向があり、また本種の追跡調査を可能にする技術が進んだという背景がありました。

フィールド専門の生物学者で構成されたチームは追跡調査、自動撮影カメラ(カメラ・トラッピング)および地元民へのインタビューを行い、バルカンオオヤマネコを初確認するまでにほぼ4年を費やしました。「自動撮影カメラに写っていたオオヤマネコを初めて目にした瞬間は、私の生涯で最も興奮した時でした。オオヤマネコがマケドニアで生きていることを遂に確認した時のこと想像できますか?」とBLRPメンバーの一人でMES(マケドニアのバードライフ・パートナー)に所属するAleksandar Stojanovはラジオのインタビューで語りました。

バルカンオオヤマネコを初めて観察するまで、追跡調査に4年が掛かりました。 写真提供: Marko Selce/MES

バルカンオオヤマネコを初めて観察するまで、追跡調査に4年が掛かりました。
写真提供: Marko Selce/MES

‘オオヤマネコ復活プログラム’は現在EuroNatur、KORA社およびノルウェーのNINA社の支援を得て、地域の市民団体、科学者およびボランティア(マケドニアのMES、アルバニアのPPNEA、コソボのERA and Finchおよびモンテネグロのバードライフ・パートナーCZIP)により進められています。

「多くの利害関係者、特にハンターとの協力関係がオオヤマネコとその獲物についてのこれまで以上の詳細な調査と保護活動への道を開きました。私たちの次のステップはバルカンオオヤマネコをIUCNのレッドリストのカテゴリーで1ランク低い絶滅危惧ⅠB類に下げることです。具体的には現在の19~37頭という個体数を50頭以上に増やすことです。」とBLRPのメンバーDime Melovskiは言いました。

バルカンオオヤマネコが生存していてくれたお蔭で、このほとんど知られていなかった亜種に関するデータが驚くほど多く集まっています。「これは私たちにとって大きな成功といえますが、浮かれている暇はありません。オオヤマネコにはより多くの観察と熱心な支援が必要です。ただし、IUCNのレッドリストが‘政治的な’認識と世界的な宣伝を提供してくれたので私たちは勇気を与えられました。」とMelovskiは付言しました。

バルカンオオヤマネコの人工衛星・写真追跡が保護活動に利用できる多くのデータを提供した。 写真提供: MES

バルカンオオヤマネコの人工衛星・写真追跡が保護活動に利用できる多くのデータを提供した。
写真提供: MES

このプログラムから私たちが得たのは大量のデータだけではありません。アルバニアとコソボはこの時からオオヤマネコの生息地を守るために新しい国立公園を設立しました。マケドニアは残念ながらまだ同調していません。MESは現在マケドニアにも保護区を作るために認識向上とロビー活動を熱心に行っており、また地元の支援者やボランティアを求めています。地元の支援とやる気がなければプログラムも成立せず良い結果も出ないからです。

「私たちのチームは現在も課題に直面しており、世界中の保護活動家と自然愛好家からのあらゆる支援が必要です。」とMESのBLRPチームのGjorgje Ivanovは言いました。

報告者:Ksenija Putilin

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