地中海地方の20カ所で毎年800万羽の鳥が密猟により殺されている

エジプトで鳥もちに掛かったセアカモズ
写真提供: Mindy El Bashir/Nature Conservation Egypt

バードライフの科学者は、地中海地方の20カ所で毎年8百万羽の鳥が違法に殺されるか生きたまま捕獲されていると推定しています。

今週科学雑誌‘Bird Conservation International’に発表された論文‘地中海地域における鳥の違法な殺傷と捕獲に関する範囲と規模の予備的査定’のなかで著者はどの種がどの程度の影響を受けているか、20カ所の最悪の場所は何処か、何故国により対象になる鳥が異なるか、などの詳細な分析を行っています。この報告書は昨年8月に発行されたバードライフの報告書‘The Killing’でもプレビューがありました。

「私たちは毎年地中海地域で推定450種以上、2,500万羽の鳥が主として食料(珍味として食べられるか、利益のために売買されるか)、娯楽、飼育目的、狩猟のためのデコイ(おとり)として違法に殺されるか、生きたまま捕獲されていることを知り、ショックを受けました。重要なのは、そのうちの800万羽がわずか20カ所で殺されたり、捕獲されていると考えられることです。密猟は正確に把握することが困難なため上記の数値には不正確さはありますが、5百万羽から1100万羽の間でしょう。」とこの報告書の主筆者Anne-Laure Brochet博士は言いました。

この最悪の20カ所があるのはキプロス、エジプト、レバノン、シリアのたった4ヶ国です。その中には毎年40万羽~100万羽の密猟が行われるキプロス共和国のファマグスタ地方や、3万羽~110万羽が密漁されているエジプトのエル・マンザラ地方が含まれます。

地中海地域で最も多くの鳥が密猟されていると推定されたのはイタリア(300~800万羽)、エジプト(30万~1,100万羽)、シリア(300~500万羽)の3ヶ国でした。一方、面積当たりの密猟の密度が高かったのはマルタ共和国(18~667羽/1㎢/年)、キプロス(146~351羽/1㎢/年)、レバノン(161~335羽/1㎢/年)でした。

「EU(欧州連合)法制が良い影響を及ぼしているにもかかわらず、密猟が最も盛んな国10カ国のうち半数がEU加盟国であるのは憂慮すべきことです。これはEU野鳥指令が各国のレベルで確実に完全に実施されるために一層の努力が必要なことを示しています。」と論文の共著者で、バードライフ・ヨーロッパの欧州・中央アジアのフライウェイ保全担当のWillem Van den Bosscheは言いました。

密猟の影響を受けた種にはズグロムシクイ(120~240万羽/年)、コキジバト(30万~90万羽/年)、ウタツグミ(70万~180万羽/年)、その他多数が含まれます。

このデータは、モニタリング・データ、警察の記録、刊行物、報告書と専門家の意見などの様々な情報ソースから、地中海地域のバードライフ・パートナー団体により集められたものです。これらの数値の多くはカスミ網、射撃、動物病院やリハビリテーションセンターでの回収および違法な鳥もち猟のデータまたは推定値などから推定されたものです。

「密猟は国によって方法、対象種、目的が異なる厄介な問題です。この問題に対処するには、地方、国家、国際レベルなど様々なスケールでの法律執行当局、裁判所、狩猟協会、政府機関、非政府組織(NGO)、国際的政策手段などによる取り組みが必要です。

密猟に取り組むための国の行動計画は、法制の強化、その執行、モニタリングの改善、個別の種に対する活動の支援を目的として、エジプト、リビア、キプロスで様々な利害関係者が参加して最近策定されました。

「持続可能でない開発が世界の鳥に対する主要な脅威の一つで、その多くは違法なものです。この研究は地中海地域における問題の大きさについて詳細にわたって定量的な推定をまとめた初めてのものです。最悪な場所を特定できたことは、この問題に取り組むために現場で集中すべき活動に役立つでしょう。」と論文の共著者でバードライフの科学部ヘッドのStuart Butchart博士は言いました。

 

報告者: Stuart Butchart

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