バルカン諸国で鳥類が農薬漬けに

Vajska(地名)でのキンイロジャッカルの死骸の近くで見つかった、毒死したオジロワシ
写真提供: Marko Tucakov

皆様は欧州の鳥類レッド・リストに‘軽度懸念’とされている種は、カテゴリーの名称から絶滅の危惧はないと思われるかもしれません。けれども、これは彼らの生存に対する深刻な、特に人為的な脅威が無いことを意味するものではありません。

オジロワシはそのような鳥の一つです。本種はセルビアとその近辺の東ヨーロッパと中央アジアに元来生息しており、セルビアの個体群は近年増加していました。2016年には125ペアに達したのです。ただしセルビアの研究者によれば、セルビア全土での約50羽の年間増加数のうち、つがいとなって繁殖するのは5羽だけです。ですから、わずか1羽死んでも大きな損失なのです。

2009年以後セルビアでは33羽のオジロワシの死骸が発見されました。何が原因なのでしょうか?最大の原因は農薬による中毒死なのです。

薬害問題

中毒死したオジロワシや農薬のワタリガラス、ノスリ、カササギなどの影響を受けた個体のほとんどは、毒を加えた餌(主にキンイロジャッカルやアカギツネなどの捕食動物を対象として毒を混ぜて供される家畜の死骸)の近くで発見されています。

事例の大半はGornje PodunavljeとKarađorđevo(どちらも地名)というセルビア北西部の自然保護区で記録されており、ここはおよそ30の繁殖ペアや冬季には100羽以上のオジロワシが集まる場所です。

「保護種の死骸が見つかった時には、その事例を農業・環境保全省と近隣の獣医協会に報告しなければなりません。彼らはその死因を判定します。」と、ヴォイヴォディナ州自然保護研究所のMarko Tucakovは言います。けれども、検査費用の支払いなどの行政上の問題から死因の分析は実際には数例にしか行われません、と彼は付言しました。

その結果、2012年以後で訴訟につながったのはたった4件だけです(しかも全て氏名不詳)そのうちの2件は不起訴)。

カルボフラン合併症

この2年間、事態は悪くなるばかりです。モグラの個体数の増加により、広大な畑の地表に(薬の処方には穴の中入れること、にとあるのに反して)鉛系の殺鼠剤を無差別に撒く事例が増えたのです。これが鳥や哺乳動物の2次的中毒死のリスクを増やしたのです。

「2014年の春、BPSSS(セルビア鳥類保護研究協会: 同国のバードライフ・パートナー)はベルン条約事務局に公式の抗議を送りました。私たちは彼らに行政的対策を取り、セルビア政府には同条約付表2に従って鳥を意図的に殺すことを止めるために至急対策を取るよう求めました。事態はまだ決着していません。」とBPSSS会長のMilan Ružićは言っています。

2014年に発見されたオジロワシの8体の死骸の毒物分析の結果、死因は農薬カルボフランによるものであることが明らかになりました。

セルビアではカルボフラン系農薬は2014年初頭まで合法でした。2014年7月にカルボフランの使用、販売、保管が禁止されましたが、鳥類学者は同農薬は今でも使われており、闇市で容易に入手できると指摘しています。また農薬使用者の認識の欠如が鳥の薬殺の主な原因であると付け加えています。

認識の拡大

BPSSS、WWF(世界自然保護基金)や他のセルビアの自然保護団体が合理的で責任ある農薬の使用を促進するキャンペーンを始めました。土地所用者、農家、活動家、ハンターおよび農業専門家が公開イベントに参加しました。配布されたパンフレットには中毒死した動物を見つけた時には何をすればよいかや、そのような場合の緊急電話番号が説明されています。

「キャンペーンの一環として、‘話を聞いて!毒殺を止めよう!’ワシが死んでしまう!’で、私たちは地元の農家、ハンター、地元当局の役人および政策決定者のためのパネルディスカッション、討論会、プレゼンテーションを開催し、農薬の責任ある使用と違法な毒物使用の規制改善を提唱ました。参加者は200人以上でした。」とセルビアでのWWFプログラムのディレクターDuška Dimovićは言いました。

「私たちは地方や国内のメディアで集中的なキャンペーンを行いました。また小学生向けのオジロワシの保護についての対話型プログラムを開発しました。」

セルビアでは保護種の毒殺は刑事犯罪で、罰則は高額の罰金から実刑判決まで及びます…書面上は。法律の執行が大幅に改善される必要があります。そうしなければ30年に亘るオジロワシの集中調査と保護活動が無駄になってしまいかねないと、ゼルビアの自然保護活動家は心配しています。

 

報告者: Marko Tucakov

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