2016年の海洋保全の目標: 混獲の削減から国境を越えた保全へ

EU共通漁業政策は混獲対策に法的な支援を行い、
混獲をなくすための絶好の機会にしている。
写真提供: Dave Peake/Marine Photobank

昨年ヨーロッパでは海鳥を守る上での幾つかの重要な成功事例がありました。けれども2016年にはまだ多くのやるべきことや継続的に取り組むべき課題があります。私たちの社会はまだ海洋環境を守るための活動を十分にやっているとは言えません。

今年はEUの政策決定者が共通漁業政策に合致するバルチック海での漁業を規制する管理計画に合意することが期待できます。これはバルチック海での過剰漁獲に終止符を打ち、北海や西部海域でも同様な道筋が取られるお膳立てになるはずです。

私たちは海鳥への漁業の影響、特に混獲による影響がもっと認識されることを期待しています。EUが‘EU海鳥行動計画’で扱われるべき問題点として海鳥の混獲を特定したので、共通漁業政策はこの問題にEUの漁船団全体で解決するための法的な裏付けを与えています。それ故、これは海鳥の混獲を防ぎ、それが出来ることを証明することに焦点を置くには絶好の機会なのです。全ての漁船には船にトリポールを付けるなどの具体的な行動により漁業の影響を最小化するべきこと、偶発的に鳥を捕えた時の情報を集めることが期待されています。

バードライフ・パートナーシップによる‘海鳥タスクフォース’は科学的データや、データ収集の方法を提供し、海鳥混獲緩和のための最善のやり方を提案するなど、現場での更なる保護活動を支援します。

私たちは今年活動の地理的範囲の拡大を計画しており、その計画では刺し網漁による混獲を解決するための有力な方策の開発に、新たな焦点を当てます。私たちはどのように混獲をモニターし、漁師にも海鳥にも有効な解決策を各国の政府に示すことにより、政府が自身の手で海鳥混獲に対する国家計画の策定を開始することに期待しています。

欧州の鳥のレッドリストに掲載されている種への脅威と個体数減といった問題に早急に取り組むことが必要です。欧州の海鳥の多くが、生態系の変化と、過剰漁獲による気候変動と食物資源の枯渇の影響を受け続けています。海鳥にとってどこが最も重要な場所か―どこで採餌し、繁殖し、どこを渡りのルートにするか等―を理解し、その場所を保全することが不可欠です。

マリーンIBAをナチュラ2000サイトとして指定することが政府に課せられた課題です。2014年にバードライフ・ヨーロッパは海鳥のためのSPA(特別保護区)を選定して各EU加盟国に対する進捗度査定を公表しました。この発表は自然保護活動家によりそれぞれの海域でマリーンIBAが特定されたにもかかわらず、多くの国がまだ海鳥保全の点で遅れていることを示しました。

ほぼすべての国がまだ既存のマリーンIBAの管理を始めておらず、ほとんどの国では管理計画さえありません。これは海鳥への脅威が正しく理解されていないだけでなく、それらの地域で適切な緩和策が取られてもいないことを意味します。

更に各国政府は、公海におけるサイトの特定と保全をさらに行う必要があります。公海では海鳥やクジラ、イルカ、カメ、サメなどの大型捕食動物が泳ぎ回る一方、各国の司法権が及ばない外洋の広大なエリアでもあります。これらのエリアで採餌する多くの海鳥のために、彼らを守るための国際協力が大いに必要です。政策決定者は海洋環境に国境がないことを心得たうえで、そこに生きる動物の保護に重点的に取り組まねばなりません。

また、EU野鳥および生息地指令を実施せず、未だに海洋ナチュラ2000ネットワークを完成させていない国の政府を欧州委員会が断固として認めず、裁判を起こすかどうかは大きな注目です。その結果、マルタ共和国、ギリシャおよびスロベニアなどの政府がIBAリストを審理し、一層の海洋ナチュラ2000サイトを指定することに期待しています。

 

報告者: Marguerite Tarzia and Bruna Campos

原文はこちら

  1. TOP
  2. 世界のニュース
  3. 2016年の海洋保全の目標: 混獲の削減から国境を越えた保全へ