世界最大規模の海鳥追跡のデータベースが彼らの信じられないような旅を明らかにした

20の研究所から提供された世界の海鳥の5百万カ所のデータ収集地点

世界最大の海洋保全協力活動の一つ、‘世界海鳥追跡調査データベース’のデータ収集地点が500万ヶ所を超えました。この発表は南アフリカのケープタウンで開催されている‘世界海鳥会議 (World Seabird Conference)’で行われました。

ハイイロアホウドリに衛星追跡装置を装着中 写真提供:© Ross Wanless

ハイイロアホウドリに衛星追跡装置を装着中
写真提供:© Ross Wanless

以前は‘海洋の渡り鳥衛星追跡(Tracking Ocean Wanderers)’と呼ばれていたこのデータベースは16種のアホウドリとミズナギドリの動向を初めてまとめて2003年に出来上がりました。アホウドリからペンギンまでを含めた現在は種数が5倍以上になり、120の研究機関からデータが提供されています。

海鳥は動物界で最も極端で魅惑的な生活史を持っています。キョクアジサシは最長距離の渡りを行い、同じ年の間に北極から南極までを往復し、8万キロを超える旅をすることが知られています。ワタリアホウドリなど他の海鳥もコロニーに戻るまでに6年もの歳月を海で費やすと思われます。

追跡調査データベースに収められたデータは、世界の海洋に関わる人々が、洋上での海鳥の生活を深く理解する助けとなります。個々の新しい研究から海鳥がどのように、また何故海洋を利用するかについての知見を得ることができますが、海鳥の飛行距離、旅のルート、目的地に至るまでのスピードなどは、しばしば私たちを驚かします。

データベースからの洞察

  • 最長期間を旅したことが追跡調査で分かったのはトリスタンアホウドリの若い個体で、2013年12月21日から2015年1月7日までの間に186,684キロを飛びました。これは一日500キロを383日間旅したことを意味します。
  • データは5種の海鳥について少なくとも20年間に亘り収集され、鳥がどのように長期間にわたり海を利用しているのかについての前例のない知見をもたらしてくれました。なお、マゼランペンギンのデータは26年に及んでいます(1989~2015)。
  • オニミズナギドリ、スコポリミズナギドリ(仮訳: 正式和名未定)、シロカツオドリ、マユグロアホウドリは観察場所や追跡記録などの点で最も研究が行われている種です。
  • データの半分以上は絶滅危惧種(絶滅危惧ⅠA類、同1B類、同Ⅱ類)および準絶滅危惧種に関連しています。これらの種の保護活動は最も急がれます。

保護活動のための情報

これらのデータは海鳥の生態に関する私たちの理解を進めてくれるだけでなく、海鳥にとっての最も重要な場所を明らかにするために益々使われており、彼らの保護を確実にします。バードライフはこのような活動を推し進める上で非常に効果的で、それはポルトガル、スペイン、ニュージーランドなどにおいて新たなマリーン保護区の設立に結実すると共に、漁業による海鳥の偶発的捕獲、即ち混獲のリスクが高い場所の特定につながっています。このことは世界的な海鳥への重大な脅威の一つであるこの問題への取り組みを助けるために、すべてのマグロの地域漁業管理機関による海鳥保護対策の採択にもなりました。対策が実施された時には混獲が劇的に減少できることを私たちの活動は示しており、例えばバードライフの‘アホウドリ・タスクフォース’チームが活動している南アフリカでメルルーサ(魚の名前)の底引き網漁で混獲の95%を減らす支援を行いました。

外洋性マグロの地域漁業管理機関が海鳥の混獲対策の採択を行うようにバードライフの活動を主導してきたクレオ・スモール博士は言いました。「海鳥の追跡データなしに、漁業関係者に海鳥の混獲問題を議題に取り上げてもらうよう説得できると想像するのは困難です。データベースは海鳥の混獲という悲劇に対する私たちの努力の正に土台となりました。」

2003年にデータベースの作成を助けたJohn Croxall教授はこれに付言して、「私たちの初めての会合では当時存在していた海鳥の全ての追跡データを持ち寄りましたが、16種のアホウドリ類のものだけでした。海鳥研究コミュニティの海洋保全を進めるという名の下でデータを共有しようという熱意のお蔭で、データベースがこれほどまでに劇的に大きくなったことを見るのは素晴らしいです。」と言いました。

データベースは今後も大きくなると予想されていますが、これは多くの海鳥の個体群が困難な状況にあり、彼らが海で直面している脅威が増加していることを考えると大変重要です。バードライフのデータベースを管理しているマリア・ディアス博士は言いました。「私たちの所にはいつも新しいデータの提出があり、それが世界の海鳥が今後どうなるかという姿を常に改善しています。世界中の政府がこの価値ある総合的資料を海鳥の運命を好転させるために使ってくれることが私の希望です。」

ペンギンからアホウドリ、アジサシまでデータベースの全ての追跡データはこちらでご覧になれます

www.seabirdtracking.org

 

報告者: Ben Lascelles

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