イランで獣医薬用のジクロフェナクが完全に禁止に

写真提供: Sergey Dereliev - www.dereliev-photography.com

イランの環境局は同国内でのジクロフェナクの輸出入、生産、獣医薬としての使用を正式に禁止しました。

「イランによるジクロフェナク禁止の決定はアフリカ・ユーラシア地域でハゲワシ類を守る上で大きな一歩です。これはイランが渡り性猛禽類の保護にリーダーシップを取り、関心を示していることを表しています。イランの他にもインド、パキスタン、ネパールでもジクロフェナクは禁止されていますが、その他の国もそれに続くべきです。」とアブダビのCMS(移動性野生動物種の保全に関する条約)事務所・上級コーディネーターのLyle Glowkaはコメントしています。

この重要な決定はCMSの猛禽類覚書の第2回署名会議の際に発表されました。イランは2015年3月にこの条約に署名しています。

イランは急速に数を減らしている絶滅危惧種のエジプトハゲワシにとって中東地域に残された重要な生息地の一つです。同国には猛禽類覚書でカバーされている渡り性猛禽類のおよそ60%が生息しています。

イラン政府によるジクロフェナクの全面禁止は‘猛禽類覚書’の署名国やバードライフにより歓迎されました。同政府の今回の決定によって、国際的に進められている同地域でのハゲワシや他の猛禽類の絶滅を防ぐ取り組みがより一層前進するでしょう。このようなことが出来たのも環境局、イラン獣医学会、タルラン鳥類学グループの緊密な協力があってこそです。

バードライフ中東地区パートナーシップ事務局の地域ディレクターIbrahim Khaderは、「イランでのこの成功は、ハゲワシが生息する他の国の政府も見習うべき好例と言えます。この地域に生息するハゲワシや他の大型の猛禽類の死亡率が下がることで、彼らが生き残り、ゆっくりとでも回復することを期待しています。」と満足の意を表しました。

ジクロフェナクは非ステロイド系抗炎症薬で、この薬の家畜への使用が世界中でハゲワシ類の減少の主な原因になっていました。ハゲワシは死肉食の鳥で、よく‘自然の掃除屋’と呼ばれますが、彼らが腐った動物の死体を食べることにより病気の蔓延から守ってくれているということでもあるのです。ところが、ジクロフェナクで治療が行われた後に死んだ動物を食べたハゲワシは腎不全を発症して数日内に死んでしまうのです。

ジクロフェナクは世界の多くの地域で大きな懸念材料でした。南アジアでは3種のハゲワシ(ベンガルハゲワシ、インドハゲワシ、ハシボソハゲワシ)がジクロフェナクが獣医薬として広範囲に使用されるようになった1990年以後99%以上も減ってしまいました。しかし、バードライフ・パートナーシップの一般向けキャンペーンにより、2006年にインド、ネパール、パキスタンで獣医薬としてのジクロフェナクが全面禁止となりました。その結果、依然として脆弱な状態ではあるもののハゲワシの個体数は安定し始めています。

獣医用ジクロフェナクのアジアでの凄惨な事例があるにもかかわらず、2013年、欧州のハゲワシの95%が生息するスペインなどの欧州数カ国でその使用が合法化されました。CMS事務局とバードライフはEU(欧州連合)に対してジクロフェナクの禁止を働きかけています。

CMSのアフリカ・ユーラシア地域の渡り性猛禽類に関する覚書(Raptors MOU)はアフリカ・ユーラシア全域で渡り性猛禽類の個体数を維持し、減少傾向を反転させるための国際的協力活動の促進を目的としています。

 

報告者: Julien.Jreissati

本文はこちら

  1. TOP
  2. 世界のニュース
  3. イランで獣医薬用のジクロフェナクが完全に禁止に