EUが‘欧州の野鳥リスト更新版’でバードライフの分類基準を採用

‘EUの野鳥公式リスト2015年度更新版’に加わった’新’種の一つカナリーチフチャフ
写真提供: Orientalizing/Flickr

 ‘EU(欧州連合)の野鳥公式リスト’は重要な文書です。それは野鳥の保護対策を含む‘EU野鳥指令’の目的のためにEU内に野生状態で生息する全ての鳥の種を‘法的に’定義をしているのです。

ところがリストが最後に更新されたのは1999年でした。ですから、欧州委員会のウェブサイトに発表されたばかりの2015年更新版は明らかにこれまでのものよりはるかに総合的で、また欧州の鳥の現在の分類に従ったものです。

新しいリストは472種の在来種、304種の迷鳥、13種の‘1950年以前のカテゴリーB’の種(野生状態で確認されたのは1950年以前で、現在は世界的に絶滅した種も含まれるカテゴリー)及び32種の‘外来’種(放鳥または逃げたもので繁殖個体群を維持している鳥)からなっています。これにより合計821種となり、1999年の約700種から増えています。

以下に2015年度リストが何故不可欠なものかを説明します。

新リストはバードライフの分類と共通のものです

新しい分類の基準はLynx Edicions and BirdLife International チェックリスト(Volume 1: 非スズメ目は2014年に発行済み、Volume 2: スズメ目は2016年に発行の予定)に従っています。

多くの世界的、地域的、国別、科別分類のチェックリストが既にありますが、どれもが大なり小なり違いがあります。明確な保護の優先度を確立するために(例えば、世界的、地域的な絶滅危惧種、‘固有鳥類生息地域(EBA)’、‘重要生息環境(IBA)’など)世界基準が必要です。

バードライフとHBWの分類システムは既に2014年に開催されたCMS(国連移動性野生動物種の保全に関する条約)で採用されており、IUCN(国際保護連合)のレッドリストの鳥類分野もこのシステムに従っています。EUがこのシステムを採用したことはその政策や保護活動への妥当性を一層強化するものです。

新リストは‘新種’と渡り鳥の状況を含んでいます。

2015年版は新しいEU加盟国とその固有種(例えば、2004年にキプロス共和国がEUに加盟したことに伴い、キプロスムシクイとキプロスサバクヒタキが加わりました)、分布の変化(生息地の変化あるいは気候変動、その他の理由による)が考慮され、分類基準の更新が行われています。

多くの欧州の海鳥と島嶼の固有鳥類が1999年以来初めて分割され、それぞれが種として認知されました(例えば、かつてのチフチャフからカナリーチフチャフとイベリアチフチャフが別種として分けられ、チチュウカイミズナギドリとバレアレスミズナギドリが2つの別種と認められました)。

新リストは今回初めて種が渡り鳥か否かについても示しています。このことはこれらの鳥が‘野鳥指令’による適切なレベルの保護の利益を確実に受けられるようになるので重要なのです。

新リストはEU指令を環境保全のために法的活動を実施するために利用されるでしょう

 ‘野鳥指令’の実施とは別に、このリストは‘環境犯罪指令’実施の目的で大いに利用されるでしょう。‘環境犯罪指令’はEU法制の一つで、鳥の密猟など全てのタイプの環境犯罪は抑止力をもつ刑罰の対象となり、確実に罰すべきものとされます。

実際面では、もし誰かが鳥を持っているところを監視員が見つけた時に、彼はその鳥が野鳥指令の保護対象種かどうかをリストにより調べることが出来ます。本当に保護種である場合はその所有者は刑法により起訴され、検事は実刑判決を求めることが出来ます。これは野鳥犯罪と取り組む上で非常に効果的な方法であることが証明されています。

 

報告者: Sanya Khetani-Shah

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