海鳥と漁具: 難題

漁船の後を追うオニミズナギドリ
写真提供: (c) Pep Arcos

毎日世界中で漁師は沿岸あるいは沖合に良い魚を求めて海に出ます。海鳥は彼らの船や釣り餌、即ち確実に得ることのできる美味しくて簡単に得られる食事、に抵抗し難く引き寄せられます。けれども漁具に近付き過ぎるのは危険で、疑うことを知らない海鳥は偶然に針に掛かったり、漁網に巻き上げられ溺れてしまいます。このような意図しない海鳥の死を‘海鳥の混獲’と呼ばれますが、それは毎年数十万羽の海鳥を殺すのです。鳥が針に掛かれば魚を捕える貴重な機会を失うことになるので水産業にとってもこれは高くつくことなのです。

この問題の規模は巨大ですが、数年前から私たちには最初の段階で海鳥の混獲を防ぐための非常に簡単な方法があるのです。10年前からバードライフの‘アホウドリ・タスクフォース’は、世界中で漁業の使命に取り組んできました。海鳥の混獲を防ぐための解決策を策定するために水産業界と協力したのです。これまでに南アフリカと南アメリカでは海鳥の死を大幅に減らすことに成功しています。けれども、うまく行くことが証明されているにもかかわらず、これと同じプログラムをヨーロッパに導入するのにはまだ長く険しい道のりがあるのです。

海鳥の混獲はヨーロッパでの大きな問題ですが、政府がしばしばこれを無視するのです。少なくとも毎年20万羽の海鳥がヨーロッパで混獲の犠牲になっていると私たちは考えています。ヨーロッパで最も絶滅の危惧にある海鳥、絶滅危惧ⅠA類のバレアレスミズナギドリは地中海と大西洋で延縄漁の犠牲になる恐れの強い種です。延縄漁は本種を絶滅への道に押しやっています。バルチック海ではビロードキンクロやコオリガモなど多数の海ガモ類が採餌の時に水面下に潜水するために漁網に掛かってしまい個体数を減らしています。ヨーロッパの海鳥の個体群がどのようにして居なくなって行くのかを考えれば、これは解決策を必要とする重大問題だということが明白です。

この問題をEU(欧州連合)内で取り組むために欧州委員会は2012年に‘海鳥行動計画’を採択しました。これはEU加盟国に海鳥の混獲を減らすよう行動する道を計画するものです。これには漁船に乗船することで海鳥の混獲状況の監視を改善するよう推奨したり、漁師がバードライフの‘アホウドリ・タスクフォース’が示したような証明済みの‘安全な漁法’による解決策を確実に利用することを含んでいます。

これに対する国レベルでの進展は極めてのろいものです。各国政府はこの問題に現場でどのように取り組むかについて引き続き考えていますが、私たちバードライフ・ヨーロッパの海洋パートナーシップにとってはヨーロッパで‘海鳥タスクフォース’が必要だったということは明白でした。ではその目的は?政府に対して海鳥の混獲に関する詳細な情報を集めることの有効性を示し、混獲が最も大きいな問題になっているエリアをはっきりとさせることです。更に私たちは漁民と共同で活動することにより漁船と漁法に対する解決策を開発することが出来ればと望んでいます。

バードライフの‘海鳥タスクフォース’は今年混獲問題に取り組むための欧州での協力的アプローチを確立する目的で始まりました。現在のところ‘海鳥タスクフォース’は二つの専門家のチームで構成されており、一つはスペイン領の地中海で、もう一つはリトアニアで活動し、共にバードライフ・パートナーが主導します。スペインではチームはカタロニア地方沿岸で操業する延縄漁に焦点を絞ります。ここは特にバレアレスミズナギドリの重要な採餌場所です。リトアニアではチームは大西洋タラを捕るために漁網を使う漁師と共同で活動しています。この漁法は秋と春にタラと一緒に多数の鳥を捕獲してしまうことが分かっています。現在私たちが集中しているのは両地域でそれぞれの漁法により混獲される鳥の数をモニタリングすることで、それにより問題について遥かに詳しいことまで分かるようになります。次の重要なステップは2016年から始まる、協力してくれる漁師との解決策の開発です。これは特にリトアニアでは大きな課題で、これまで同国にはこのタイプの漁網による海鳥の混獲を減らすための認められた‘最良の実施例’がないのです。これは私たちがやろうとすることが可能な解決策の開発とテストの最先端を行くことを意味します。

‘海鳥タスクフォース’は欧州全域で活動し、海鳥に真の保護活動の恩恵をもたらすワクワクするような機会です。私たちの進展の様子は同チームが定期的に更新するブログからご覧いただけます。またSPEAのホームページでも重要な混獲問題への活動をご覧いただけます。

(報告者: Marguerite Tarzia)

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