彼らが旋回を続けられるようにしよう: ハゲワシの美しさへの賛歌

ヒゲワシは世界的には準絶滅危惧種、ヨーロッパでは絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。
写真提供: (c) JayHem Flickr

巨大で、禿げていて醜く、腐った肉や骨の消費者として、ハゲワシが長い間誤解されてきたことは驚きではありません。迫害と毒殺によりその多くがヨーロッパやその他の場所から一掃されました。しかし、VCF(ハゲワシ保護基金)とそのパートナーは、彼らが私たちの頭上高く旋回を続けるようにあらゆる努力を行っています。

終わりのない旋回をしているように見えるハゲワシは地表に暗い影を落とします。たとえ鳥のことをあまり良く知らなくても、それがハゲワシの影だということは分かるでしょう。ヨーロッパにはシロエリハゲワシ、ヒゲワシ、クロハゲワシ、エジプトハゲワシの4種が生息し、このうちシロエリハゲワシ以外の3種は絶滅危惧種です。ハゲワシは気味の悪い鳥との印象がありますが、人間のためになる重要な汚れ仕事をやってくれるのです。彼らは死んだ動物を食べますが、それが毎年世界のどこかで数千人の死者を出す狂犬病のような恐ろしい病気のまん延を防止する助けをしてくれます。

この数十年、VCFはこれらの絶滅危惧にあるハゲワシを昔からの分布域に戻す活動を続けて来ました。彼らの活動で最もエキサイティングなのは恐らくハゲワシの再導入活動で、これは捕獲して育てられたハゲワシを戦略的な場所に放鳥する活動です。特にヒゲワシの再導入は、それがヨーロッパでは最も希少なハゲワシなので(世界的には準絶滅危惧種、ヨーロッパのレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類)重要です。ヒゲワシは40年生きることが出来、かつては西スペインからバルカン諸国に至るヨーロッパ南部の山岳地帯で見られましたが、これらの多くの場所で絶滅してしまいました。例えばスペインの山岳地帯ではヒゲワシが仔羊や幼児を殺すと恐れられていて、その頭には懸賞金が掛けられ、虐殺が行われました。スペインでは1913年に野生の最後の1羽が射殺されました。

ヒゲワシは普通の肉を食べようとしないことで特異の種です。彼らの食物のほぼすべてが動物の死骸の白骨です。つまり骨を食べるのです。他のハゲワシ類と同様、ヒゲワシは極めて腐食性の強い、腐肉や骨を消化することが出来る胃酸を持つ異例な消化システムを有しています。ヒゲワシはヒツジの脊椎骨の大きさの骨を飲み込み、消化することが出来ます。鳥にしてはいかに頭が良いかを示す例として、もし骨が大きすぎる時には彼らは骨を咥えて飛び立ち、これを眼下の岩に落として食べやすい大きさに砕くのです。もう一つの変わった習性として、顔に黒い目印があり翼も黒い時には、頭の残りの部分、首、体の色が濃いさび色のオレンジになります。しかし、羽毛は白いので、この色は自然の色ではありません。何らかの不可解な理由で彼らは酸化鉄を体にこすり付け、羽に異なる色を付けるのです。

1986年にVCFはオーストリアのHohe Tauern国立公園に最初のヒゲワシを放鳥し、その後、フランス、イタリア、スイスでも放鳥を行いました。1997年に最初の繁殖ペアが自然界でヒナを育て、それ以来60羽の雛が捕獲飼育され放鳥された親鳥から巣立ちしました。これらのハゲワシの反応が大変良いことから、最近は活動をスペインのアンダルシア地方にハゲワシを戻すことに集中しています。今年だけで彼らは10数羽のヒゲワシをカソルア/アンダルシア(スペイン)、グラン・コース(フランス)、オーストリア・アルプス、スイスアルプスなどに、また先頃4羽をイタリアアルプスとアンダルシアに放鳥しました。

VCFやそのパートナーおよびボランティアの努力により、140羽以上のハゲワシが山岳地帯の上空を再び帆翔しています。現在、欧州全体での個体数は600~1,000つがいで、ピレネー、コルシカ、クレタ、アルプス、トルコおよびロシアに生息しています。しかし、一度居なくなってしまったアンダルシアや欧州のその他の場所にヒゲワシを復活させる作業にこれほどまでに熱心に活動する人たちにとって最大の報酬は恐らく放鳥されたヒゲワシが野外で産んだ最初の雛を育てているのを見ることでしょう。

(報告者: リサ・ベネデッティ)

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