欧州で最も意欲的な保護プロジェクト

カオジロオタテガモ
写真提供: (c) Agustín Povedano, Flickr

農作物と荒れ地、外来種、密猟がヨーロッパ原産の鳥の個体群に多大な影響を及ぼしてきました。その影響は大きく、約13%の種に絶滅の危惧があるほどです。けれども、バードライフによる意欲的な活動‘LIFE EURO SAP’プロジェクトにより、間もなくヨーロッパで最も象徴的で絶滅の恐れのある鳥16種が救われます。

このプロジェクトの対象になっている幾つかの種の個体群は長年に亘り減少していますが、保護対策は見直されないままでした。このプロジェクトでは欧州10カ国のバードライフ・パートナー、ハゲワシ保護基金、FACE(組織名:‘欧州ハンターの声’)を含む欧州全体からの13の組織がこの状況を変えるために力を合わせます。専門家や利害関係者が一緒になって既存のSAP(種ごとの行動計画)を更新し、または新たなSAPを作ります。SAPは種の現状、生態、個々の種が直面している脅威に関する最新の情報を提供し、保護状況を改善するために必要な主要な活動を説明し、それらの種がヨーロッパで絶滅することがないことを確実にするので非常に有用です。それぞれの種のライフサイクル全体を繁殖から越冬までの渡りのルート全域で調べる予定です。彼らが直面するいかなる脅威も詳しく調査され、より実情に合った、情報の豊富な保護活動が明確にされ、効果的な活動が行われるでしょう。

EU(欧州連合)の資金支援によるプロジェクトEuro SAPは欧州における野鳥保護の新時代の始まりを記すもので、種、私たちの活動、欧州の広義の生物多様性をより効率的に守るための幅広いパートナーシップを通じて真に大陸規模の問題に取り組みます。

ビロードキンクロ、カオジロオタテガモ、クロハゲワシ、ヒゲワシ、ニシハイイロペリカン、コキジバトに対する行動計画は修正される予定です。ヒゲワシやコキジバトなど、これらの種の一部は継続的な減少に見舞われています。ビロードキンクロについて私たちは本種が生息地の喪失と劣化および越冬地のバルチック海での刺し網漁で偶発的に殺されている(混獲)ことを除くと殆ど分かっていません。その他のカオジロオタテガモ、クロハゲワシ、ニシハイイロペリカンは目標を定めた保護活動が実り、生息地の一部で目覚ましい復活を果たしました。例えば1970年代のスペインには僅か22羽のカオジロオタテガモが残っていただけでしたが、彼らが依存する湿地環境の保全と再生により2,000羽以上に数を増やすことが出来ました。けれども、外来種のアカオタテガモとの混血と主な環境の喪失と劣化により依然として危機は続いています。ですから他の種と同様本種は遠い将来も復活が確実に続くようにするしっかりとした保護戦略を必要としています。次はチチュウカイミズナギドリやモンテイロウミツバメなどの海鳥で、これらは最新のIUCNのレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に区分されていますが今のところ保護戦略が全くありません。これらは対象を絞った保護が早急に必要で、SAPがまず最初に作られるでしょう。これらの種は捕食、人による攪乱、漁業活動などの様々な脅威による危険が迫っています。

場合によっては、複数種対象計画の方が単一種対象計画よりも減少の原因に効率的に取り組む上でより大きな可能性があり、理に叶っているでしょう。これは農業用草地の環境に依存している渉禽類には特に合っています。これらは欧州の鳥の中で最も危惧されており、殆どの国で数が減っています。困難な状態にあるミヤコドリ、ヨーロッパタゲリ、バルチックハマシギ、エリマキシギ、タシギ、ダイシャクシギ、オグロシギ、アカアシシギなどの欧州の低地草原で繁殖する渉禽類に対する‘複数種活動計画’が作られ、テストされる予定です。彼らは生息地の喪失や劣化など、同様な危機に直面しており、現在の複数種活動計画は活動が一つに統合されることにより8種を救うために資源の最善な活用を可能にするでしょう。

‘絶滅’とは、何かを永遠に失ってしまうことを意味する恐ろしい言葉です。しかし、この活動は最も危惧される種に、確実に生き延びる機会を与える対策を講じるのに必要な知識を私たちに与えるでしょう。

(報告者: Christina Ieronymidou)

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