アジアの渡り性鳴禽類が苦境に

シマアオジはその生息域全体で減少してしまいました。
写真提供:Abdelhamid Bizid

最新の調査によれば東アジアの渡り性鳴禽類が苦境に陥っています。同研究はこの脅威に取り組むための国の活動と国際協力、更にはこれらの鳥に独特の渡りのシステムの理解と保護を助けるためのモニタリングと調査の強化を呼び掛けています。

北はシベリアとアラスカから、南は東南アジアとオーストラリアに至る東アジア・オーストラリア・フライウェイは地球上で最大の渡り鳥の多様性を支えています。170種の長距離を渡る鳴禽類と、80種以上の単距離の渡り鳥がこのフライウェイを利用します。ところが、同フライウェイは世界の主要な渡りのルートの中でも最も研究が遅れているものの一つでもあります。特にこの渡りのルート沿いの環境に生死をゆだねている多くの渡り性鳴禽類の個体群や生態についてはほとんど分かっていません。

オーストラリア国立大学と中山大学(中国・広州)の科学者チームに率いられ、バードライフにより発行された‘東アジア・オーストラリア・フライウェイの渡り性鳴禽類: 保護の観点からの総括’では既知の事実を示し、今後の研究で緊急に必要とされるギャップを明らかにしています。

フライウィ規模での保全

同研究は東アジア・オーストラリア・フライウェイ沿いの多くの国で生じる様々な脅威により、同フライウェイで多くの渡り性鳴禽類が減少していることを明らかにしています。その論文では効果的な保護のためには国ごとの活動と共に国際協力の両方が必要であると強く主張しています。

「フライウェイというコンセプトは多くの国の間での協力的活動の推進を助けます。」とバードライフのアジア・フライウェイ政策担当オフィサーのベッキー・ラッシュは言いました。「自国での保護活動だけでは不十分であり、種の保護にはその渡りのルート全域での保護を行うことが必要であることを益々多くの政府が理解してくれています。」

論文の主筆者Ding Li Yongによれば、アジアの渡り性鳴禽類はその多くがかなりの越冬地を失い、個体数が減っているにもかかわらず、水鳥と比較すると保護活動家の注目をあまり集めていません。「生態学的にこれらの鳴禽類はアジアの寒帯、温帯、熱帯のバイオマスの生態系をつないでいるので重要なのです。」と彼は言いました。

小さな鳥に大きな脅威

渡りは鳥にとって非常に厳しいもので、特に体重が数グラムしかなく、度々栄養補給をしなければならない小鳥にとってはつらいものです。ですから渡りのルート沿いで彼らに影響を及ぼすどのような脅威でも積み重なれば全個体群に大きな被害を与える可能性があります。これまでに入手した証拠によれば生息地の喪失と狩猟が東アジア・フライウェイでの2大脅威であることを示唆しており、また外来種、気候変動、人工建造物への衝突などその他の脅威も大きな影響を与えるでしょう。

絶滅危惧Ⅱ類のイイジマムシクイやウチヤマセンニュウなど幾つかの種は繁殖地が限られているだけではなく、全体の越冬地が知られておらず、そのため効果的な保護対策も困難なため特に危惧されています。絶滅危惧ⅠB類のシマアオジは、かつては数の多い種でしたが、東南アジアや中国南部で毎年大量に罠猟で捕らわれために急減してしまいました(注: 昔は北海道の代表的な夏鳥として道内各地の草原で普通に見られましたが、近年では稀な種になっています)。

脅威への対処

同研究はこのような減少をどのように食い止めるかの方法についても明らかにしています。主な生息地の保全、主要な繁殖地、渡りのサイト、越冬地の保全強化、および法律のより適切な施行などの全てが必要であるとしています。それに加えて国際条約や国内法に渡り性鳴禽類を含めて拡大されることが必要です。

同論文に示された優先事項にはモニタリングを拡大、標準化し、個体群と脅威の詳細を一層理解するための調査の増加があります。これは絶滅危惧Ⅱ類のズアカコマドリやノドグロコマドリなどの殆ど知られていないアジアの渡り性鳴禽類をターゲットにする必要があるでしょう。

「アジア全体でのこれまで以上のモニタリング、特にもっと協調したモニタリングが必要です。」とラッシュは言いました。「アジアではバードウォッチャーが急増しており、彼らから寄せられるデータが鳴禽類の分布と現状を理解する上で貢献しているケースもあります。」前向きな流れの一つに、渡り性陸鳥のモニタリングと保護での国際協力を進めるために中国、韓市民科学からのデータとより多くの公式なモニタリング・スキームは間違いなく知識の向上を助けますが、保護活動はこれまでに明らかになっている渡り性鳴禽類への現在の脅威に直ちに取り組むことが必要です。

(報告者:マーチン・フォーリー)

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