国々の経済力は自然保護活動の実績を予測しない

フィジーなど幾つかの島嶼国は自国内での絶滅危機を逆転させることが出来ている
写真提供:Stuart Chape

幾つかの国は世界的な脊椎動物の生物多様性の保護において他国より優っており、その成功の要素は経済力とは関係がありません。CEFE(Centre d’Ecologie Fonctionnelle et Evolutive: 機能性と進化生態学センター)、IUCN(国際自然保護連合)およびバードライフの自然保護科学者が行った新研究により個々の国と地域が生物多様性に対する責任を全うする活動に対する初めての評価結果を提供します。それにより最も高度な経済力を有する国が他の国よりも良い結果を出していないことが明らかになります。予想に反して国の一人当たりGDPの額は生物多様性喪失を減らす上での有効性を説明するものではありません。むしろ、成功は健全な政策の実行の結果のようです。

「私たちは世界で最も豊かな国の二つである米国とオーストラリアが最悪だったことに驚いています。」と論文の主筆者CEFEの研究者アナ・ロドリゲスは言いました。「ブラジル、インド、ペルー、マダガスカルなどの発展途上国が生物多様性喪失に対する約束を守る上で、一人当たりGDPに比例してはるかに優れていることを考えるとこれは驚きでした。」

ほとんど全ての国と地域がIUCNのレッド・リスト指標で測ると鳥類、哺乳類、両生類に対する生物多様性に対して悪影響を与えていることが分かりましたが、生物多様性喪失はある特定のエリアに集中していました。実際に、オーストラリア、中国、エクアドル、インドネシア、マレーシア、メキシコおよび米国の8か国が脊椎動物の保護状況において世界的な劣化の半分以上に責任があるのです。

それにもかかわらず、一握りの国は種が絶滅に向かうところから彼らに責任がある種の幾つかを回復への道に乗せることにより状況を改善することで全体的なバランスを保つ上で卓越しています。脊椎動物の保護状況で改善を達成したのは5つの発展途上の島嶼国でした。

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「クック諸島、フィジー、モーリシャス、トンガなどで絶滅の危機を逆転させることが出来たということは外来種の駆除、バイオセキュリティー、保護地区の管理、生態系の復元などの保護活動がいかに効果的に出来るかを示しています。」とIUCNの‘種の存続委員会’議長で論文の共著者サイモン・スチュアートは説明しました。「これらの5か国での成功の鍵は数十年に亘る継続的な保護活動が行われたことにあります。保護活動が短期のプロジェクトで成功することは滅多になく、長期のアプローチを必要とします。このことは活動への資金提供者が留意しておくべきです。」

この研究では生物多様性への主な脅威はエリアによってかなり異なるということが明らかにされました。食糧や伝統薬のための乱獲の影響とペットの取引がアジア諸国、特に中国とインドネシアで最大の要因です。持続可能でない農業と林業が東南アジアでの生物多少性の喪失の主因で、米国(特にハワイ)とオーストラリアでは外来種が主な脅威です。熱帯アンデスと中央アメリカでは外来のツボカビが両生類減少の主な原因です。

世界の国々が2010年生物多様性目標である‘2010年までに現在の生物多様性喪失率を大幅に減らす’ことに失敗した後、各国政府は生物多様性のための新しい野心的な戦略プランに合意しました。名古屋で開催されたCBD(生物多様性条約)COP10(第10回締結国会議)で採択された生物多様性愛知ターゲット12には「2020年までに既知の絶滅危惧種の絶滅を防ぎ、それらの保護状態、特に減少が著しい種の保護を改善し、維持すること」と述べられています。

「愛知ターゲット12を達成するためには世界の生物多様性への責任度合いが大きな国が集中的で長期の保護活動のための投資を行うことが必要です。」とバードライフの科学部門ヘッドで論文の共著者のスチュアート・バッチャートは言いました。「それぞれの国が、IBA(重要生息環境)やKBA(主要生物多様性エリア)などの生物多様性にとって最も重要なサイトに焦点を当てて、自国のみの、あるいは大部分の責任がある種を守ることにもっと資金を投入することが必要です。」

報告者:マーチン・フォーリー

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