新報告によりアフリカで越冬する英国の渡り鳥の減少規模が明らかに

1955年以来、英国ではツメナガセキレイの個体数が43%減少した。
写真提供:Andy Hay; rspb-images.com

地球上を渡る数百万羽の鳥は自然の最も大きな年中行事の一つです。多くの場合大陸間をつないで、ある種は毎春一方向に移動し、同じ種が秋になると反対方向へ移動します。

このような渡りのパターンは季節の移り変わりのように不変のものですが、モニタリングにより、英国で繁殖する種を含み、種によっては個体数の急減により毎シーズン渡りをする鳥の数が減って来ていることが明らかになりました。

年刊の‘英国の鳥の現状報告’最新号には‘渡り鳥の項’があり、そこには29種の、夏に英国で繁殖し冬に地中海沿岸やサハラ砂漠より南のアフリカで越冬する渡り鳥の傾向が記されています。今回初めてこれらの渡り鳥の個体数の傾向が、越冬地の違いにより著しい違いがあることを示す指標にまとめられました。

セネガル南部からナイジェリアに広がるアフリカの湿潤地域で越冬するマミジロノビタキ、サヨナキドリ(通称ナイチンゲール)、ヨーロッパビンズイ、ムナフヒタキなどの種は最も劇的な減少を示しています。このグループの種の指標は1980年代末以来70%以上の減少です。これは乾燥地帯(サハラ砂漠直下)で越冬するショウドウツバメ、ノドジロムシクイ、スゲヨシキリなどの種と対照的です。これらの種では個体数に1970年以後かなりの変動が見られますが、全体的には20%以下の減少です。

最も劇的なのはコキジバトが1995年以後88%減少したことです。以下の種も同じ時期に減少しています: モリムシクイ=66%、セグロビタキ=53%、ムナフヒタキ=49%、カッコウ=49%、サヨナキドリ=43%、ツメナガセキレイ=43%。

渡り鳥への懸念は増加しており、‘英国の鳥の現状報告’には今後渡り鳥指標の定期的な更新が行われます。英国の渡り鳥に起きている変化の状態を理解するためには、研究者はこのような減少を招いている要因をもっと知る必要があります。衛星追跡研究や地上での調査など様々な情報源からの証拠が今集められています。

RSPB(英国のバードライフ・パートナー)の保護部門理事のMartin Harperは「西アフリカは英国で繁殖する多くの鳥の越冬地です。ところが二つの大陸を通る鳥の多くが急速に減っています。地球上の非常に離れた場所に生息地と資源を必要とする彼らの移動性のライフスタイルが減少の原因を特定し理解することを非常に難しくしています。問題は英国にあるのか、西アフリカにあるのか、あるいは実際にはこれら2地域の間の渡りそのものにあるのかも知れません。」と言いました。

‘英国の鳥の現状報告’は英国の海外領土の鳥についても言及しています。最新の証拠として英国海外領に生息する2種の重要なアホウドリの個体群について相反する運命を明らかにしています。マユグロアホウドリの世界の個体数の70%がフォークランド諸島で繁殖します。ここでの個体数増加により、研究者は本種の絶滅危惧度を絶滅危惧ⅠB類から準絶滅危惧種に格下げすることが可能になりました。一方、残念ながら、ハイガシラアホウドリの運命は世界の個体数の半数を支えるサウスジョージア・サンドウィッチ諸島の営巣コロニーにおける個体数減少が報告されていることから悪化しています。

(報告者:マーチン・フォーリー)

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