産業界は石灰岩採掘で脅威を受ける生物多様性保全のために直ちに行動を起こさなければならない、とNGOが言っている

新論文は研究不十分な石灰岩地域に限定して生息している種の
保護強化を行うよう採掘産業に的を絞って提言しています。
写真提供:バードライフ・インターナショナル、IUCN,
Fauna & Flora International, WWF

石灰岩はセメントやビルの建築材料を作るために世界中で採掘されている有益な素材であることはよく知られています。また石灰岩地形は、バルカンの洞窟や絵葉書のような東南アジアの島や海岸線など、世界的に有名な美しい崖の地層や複雑な洞窟網を作りだします。

一方、石灰岩周辺に見られる環境が、狭いエリアに生息が限定されている非常に稀な種にとって極めて重要であることはほとんど知られていません。そして、採掘の影響でこれらの研究されていない種への脅威が驚くほど増加していることも知られていません。

そこで、バードライフ・インターナショナルなどの主導的な自然保護NGOのグループがこの差し迫った問題への関心を高め、保護活動を強化するために共同で活動することを決めました。‘石灰岩エリアでの採掘と生物多様性’というタイトルの新論文により、採掘業者、政府及び科学者に希少種が絶滅する前にこの環境を保全するように主張しています。

今週ロンドンで‘生物多様性の純損失ゼロ’に関する初の世界サミットが開催されました。‘産業と生物多様性オフセット・プログラム’の主導によるこのイベントには採掘業者、NGO、政府関係者、市民社会などからの多くの参加者と共に、バードライフのチームも参加しました。

このイベントでは生物多様性の喪失を回避、最小化、復元、そして絶対に必要ならオフセットするためのアプローチに重点的に取り組みました。しかしながら、何がオフセット出来るかということについては、石灰岩エリアで見られるような他の場所には居ない地域限定種について言えば限度があり、第一に、影響を与えないことが大切なのです。‘軽減ヒエラルキー’として知られているこのような優先的な道筋がバードライフ・インターナショナル、Fauna & Flora International、IUCN、WWFの共同作成による新論文では強調されています。

脆弱で代わりのない石灰岩地域限定種

石灰岩地域の種は幾つかの理由により特に採掘に対して脆弱です。洞窟系のような石灰岩環境は自然のプロセスにより数百万年掛かって形成された複雑なものです。また、暗闇の中で進化してきた幾つかの洞窟種のように、全ての種が極めて狭いエリア(個々の洞窟や丘など)にしか生息が限られている可能性があります。

石灰岩の採掘は南ヨーロッパの石灰岩洞窟でのみ見られるホライモリのような種に脅威を与える可能性があります。 写真提供:Gregor Aljancic

石灰岩の採掘は南ヨーロッパの石灰岩洞窟でのみ見られるホライモリのような種に脅威を与える可能性があります。
写真提供:Gregor Aljancic

専門家にはこれらの観察が困難な種を見つけることも求められています: 専門知識がないとそのような種は環境影響アセスメントで見落とされる可能性があるのです。例えばCEPFのプロジェクトであるバルカンの洞窟の固有両生類であるホライモリの分布調査には同種のDNAをトレースするため洞窟内の水を調べるための新技術の開発が必要でした。

その理由は以下のように簡単です: 採石場での僅か1度の爆発事故で私たちがまだ何も知らない種が一掃される可能性があるのです。

採掘ビジネスのレーダーでの生物多様性

しかしながら、生物多様性が経済分野と産業部門の持続可能性の実践において重要な役割を持つことが徐々に認識されるようになっています。バードライフは採掘産業の主導的企業と共同で、彼らが生物多様性保護のために積極的に活動することを支援しており、実際に彼らは既にそれに着手しています。

「私たちはこの論文がセメント部門を助けてこのように微妙なエリアにある生物多様性地域を効果的に管理することを期待しています。」とCEMEX-BirdLifeパートナーシップのマネージャーチャールス・ブットは言いました。「このことは企業の名声と作業ライセンスを守ることへの助けになるだけでなく、生存を石灰岩環境に完全に依存しているアナツバメ類、洞窟魚類、洞窟クモ類や素晴らしいが未発見の種を守る助けにもなるでしょう。」

(報告者:ショーン・ハレル)

 

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