二つの条約の物語

トラフズク

米国の世界で最も重要かつ影響力のある野鳥保護法が危機に瀕しています。ただしまだ全てが失われたわけではありません。大西洋の向こう側では、バードライフが50万人の市民を動員して同様の危機を逆転させました。以下はどのようにしてこれを達成したかという話です。

これは二つの自然法の物語です。一つは「米国渡り鳥保護条約」(MBTA: 1918年)、もう一つは「EUの野鳥および生息地指令」です。チャールズ・ディケンズの偉大な小説「二都物語」の一節より「いい時代でもあり、悪い時代でもあった」という言葉で始めるのが良いでしょう。

米国の自然愛好家は紛れもなく、世界で最も素晴らしい野生生物保護法のMBTAの改定が提案され、その影響力が抑えられるのは最悪の時代だと恐れています。同法は人に起因する脅威から1,000種以上の種を守り、過去1世紀の間にオーデュボン協会はユキコサギを絶滅の縁から復活させたことを含み「10億羽とは言わないまでも、数百万羽の鳥を救った」と推定しています。ところが同法の百周年に当たって、法律そのものが危うくなっているのです。

ユキコサギ

ヨーロッパの自然愛好家たちは、これに共感しています。ごく最近、2015年に私たちもEU野鳥および生息地指令が政治的な攻撃の犠牲になるという最悪の時代を経験しました。この基準となる法律は、1,000種以上の動植物とナチュラ2000と称する世界最大の保護区のネットワークのために不可欠な保全を提供するものです。同法の弱体化はEUの行政執行機関である欧州委員会が、「より良い規制」の名目でいわゆる「フィットネスチェック」を公表した時に「既成事実」となるように思えました。この危機を避ける唯一の希望は、欧州委員会がインターネットを使って国民の意見を聞くことだけでした。問題は、通常このようなやり方への市民の参画が低いということです。

「あらゆる声を集めたバードライフの夜明けのコーラスは#NatureAlertのハッシュタグを増やしました」

バードライフはWWF、Friends of the Earth、欧州環境局と共に、自然法を守るために欧州市民を結集するEU全体でのキャンペーン「Nature Alert」を立ち上げました。このキャンペーンは数えきれないほどの環境NGO、市民団体、科学者、環境大臣、政治家、企業、熱心な個人の支援を得て急速に成長、増強しました。EU加盟国28の全てのバードライフ・パートナーが初めて一つの家族のように結集したのです。

ブリュッセルでのNature Alert 活動
写真提供: © Friends of the Earth

驚いたことにキャンペーンは成功しました。50万人以上の欧州市民が自然のために立ち上がり、EUにおける国民からの意見聴取の記録を破ったのです。

今後の15カ月の間、欧州委員会は同法の検討を行い、その行方を静かに審議し、繰り返し決定を遅らせていますが、この市民による巨大な負託はNature Alert を生かし続けます。私たちのキャンペーン戦略はいわゆる「ブリュッセルのバブル」に圧力をかける方向に移りました。ツイッター、公開状、Politicoのようなブリュッセルの有力紙への論説や広告などによる有力政治家をターゲットとする方法です。 

© Dagmar Cohnen

私たちのメッセージは一貫して、前向きであることを意識しました:「自然指令をそのままに!私たちは50万人以上いる!全てを自然のために、自然は全ての人に!」。多くの加盟国においてポピュリズムが広がる中、私たちは反EUレトリックには組みしません。むしろ私たちはEUに、欧州の共通自然遺産の偉大な守護者としてその能力通りに振舞うことを求めました。即ち、EUと同様自然には国境がないのです。

© BirdLife Europe & Central Asia

2016年12月、ついに勝利が訪れました。欧州委員会は自然指令を維持するだけでなく、強化し資金も増やすことを宣言したのです。英国のEU離脱国民投票の混乱とそれが増幅させた分裂の後では、これは単に自然のための勝利ではなく、デモクラシーのための勝利であり、欧州とその未来のための勝利でした。最悪の時代にあっても私たちは自身の中に最善を見出しました。自然指令への脅威は前例のない団結をもたらしました。それはバードライフのパートナーシップの中だけではなく、異なる環境保全団体、政治的グループ、産業界の間にも生じました。そして、この脅威が28か国の人々を共通する原因のために欧州人として一つにまとめたのです。

ですからNature Alert キャンペーンの成功を、大西洋の向こうでまだ全てが失われたわけではないMBTAを守るために、苦戦している友人たちに届けようではありませんか。「絶望の冬」の後に「希望の春」が来るかもしれません。そしてこの「二つの条約の物語」は「二つの国民の物語」に変更されるかもしれません。

報告者: Gui-Xi Young

原文はこちら

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