南米ティエラ・デル・フエゴ諸島でコオバシギが25%も減少

アメリカ大陸を渡るコオバシギの一亜種rufaコオバシギ 写真提供:© Hans Hillewaert

しばらくの間、コオバシギは回復の途上にあるように見えました。しかし、今年の調査でアメリカ大陸のコオバシギの亜種がかつてないほど減っていることが分かりました。その原因は、渡りの途上での重要な採餌のための中継地であるデラウェア湾での餌不足と考えられます。

2018年1月、南米のティエラ・デル・フエゴ諸島上空を飛んだ調査員は、みじめな光景を見ました。ヘリコプターの窓からの景色が、前年の同時期とは全く異なるものでした。このサイトで越冬するrufaコオバシギ(6亜種居るコオバシギの亜種の一つ。和名なし)の数が劇的に減って9,840羽しかいないことがすぐに分かったのです。これは2017年1月の13,127羽と比べて25%の減少で、調査開始以来最低記録だった2011年の9,850羽に匹敵する数でした。

 

最もずんぐりとした者が生き残る

原因を特定するためには、1万キロ離れた彼らの渡りの中継地である米国・西海岸のデラウェア湾へ行かなければなりません。デラウェア湾は極めて重要な場所なのです。ここは、凍てついた北国へ長距離の渡りをする前に、彼らが採餌できる最後の場所なのです。ですから、彼らは渡りの長い旅のためだけではなく、目的地に着いた後の繁殖活動のためにも確実に十分な栄養補給をしておかなければならないのです。十分な体重のない鳥は生存率も繁殖率もはるかに低くなってしまいます。

デラウェア湾では通常ここで繁殖するカブトガニの卵が鳥のご馳走になる。
写真提供:© Gregory Breese / USFWS

デラウェア湾では、コオバシギは通常カブトガニの卵をたくさん食べて体重を2倍にします。ところが2017年の5月には水温が低かったことによりカニが繁殖のために海岸に来るのが遅くなり、そのためコオバシギの食べ物が間に合いませんでした。これは2000年代初期の個体数減少に酷似するもので、この時も同様な卵の減少が原因で、恐らくは気候変動と人によるカニの採取も加わって事態を悪化させました。それ以来、カニの採取については規制されています。

けれども問題は一つだけではありません。バードライフのフライウェイの生物多様性保全マネジャーのAngarita-Martínezは、渡り鳥が利用するルート沿いの全サイトに関連する統合アプローチの重要性を主張します。「すべての分野と領域で活動を共にすることにより、私たちは渡り性のシギ・チドリ類の重要な中継地あるいは繁殖地であるIBAなどのネットワークを保全することが出来るのです。今こそ共に行動する時です。」

 

報告者:Jessica Law

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