2018年度バードフェアの支援プロジェクトを発表

マル・チキータ湖には地球上で最多のチリフラミンゴが生息しています。 写真提供:© Pablo Rodriguez Merkel

今年の英国バードウォッチング・フェアは、約百万羽のフラミンゴとシギ・チドリ類が安全に暮らせる場所を提供する過程で、アルゼンチンで最大の国立公園の創設を支援します。

十万の翼が飛び交う中、大興奮が上に向かう前にアルゼンチン北・中央部の広大な湖の上を巨大なピンクの綿菓子がたなびきます。南米で2番目に大きな水域で、世界で5番目の塩水湖のマレ・チキータ湖は、世界のほぼ全数のチリフラミンゴと世界のほぼ半数のアンデスフラミンゴの生息地です。そこは伝説を持つ潟湖で、「危機にあるIBA」でもあり、国立公園の予定地で…そして2018年度英国バードウォッチング・フェアの焦点でもあります。

マル・チキータとは「小さな海」という意味で、この巨大な塩湖は長さ70㎞、幅24㎞に広がっています。マル・チキータは文字通りオアシスで、その水域、湿地の周辺部および周りの草原には野生動物が群れています。最大318,000羽までのチリフラミンゴ(準絶滅危惧種)、冬にはピンクの風船ガムのように増える18,000羽のアンデスフラミンゴ(絶滅危惧Ⅱ類)、それよりは数の少ないコバシフラミンゴがカウントされています。

「小さな海」を意味する南米で2番目に大きな水域のマル・チキータ
写真提供:© Pablo Rodriguez Merkel

マル・チキータ湖のシギ・チドリ類の集団は、バカ正直に挑んでいます。数万羽のアメリカムナグロ、コシジロウズラシギ、コキアシシギが北米からここに渡って来ます。それぞれが数万羽です。でもそれらは小銭のようなものです。

ここでは60万羽のアメリカヒレアシシギが越冬するのです。60万羽ですよ!この繊細で針のような嘴のシギの世界の全個体数の3分の1が水上を活発に旋回したり、無脊椎動物の豊かな岸辺の間を曇らせるように空を暗くします。「マル・チキータは3つの大陸にまたがるフライウェイを利用するシギ・チドリ類の未来の鍵です。」と西半球シギ・チドリ類保全ネットワーク事務局の理事Rob Clayは言います。

マル・チキータ湖には60万羽のアメリカヒレアシシギが生息しています。
写真提供:© Gustavo Bruno

これはそれだけで十分な世界かも知れません。しかし、マル・チキータの動物相の豊かさをすべて味わうには、水辺から離れなければなりません。金色に乾燥した草原には、南米で最も背の高い飛べない鳥アメリカレア(準絶滅危惧種)が見つけにくいカンムリタイランンチョウの前をゆっくりと走ります。夜になると赤キツネが竹馬に乗ったように見えるタテガミオオカミ(準絶滅危惧種)が軽やかに走り、頭上にはカマバネヨタカ(準絶滅危惧種)が滑空します。湿地帯にはアルゼンチンヒメクイナ(絶滅危惧Ⅱ類)やムシクイタイランチョウ(準絶滅危惧種)が生息し、またカンムリノスリ(絶滅危惧IB類)はケブラコ(植物名)が点在するチャコ(南米の草原地帯)森林の上空を飛びます。

野生生物にとって明らかに安息の地です。しかし同時に残念ながら危機にある安息の地でもあります。マル・チキータは、公式な名称で満ち溢れている。「マル・チキータはラムサール条約登録湿地であり、アルゼンチンの最も重要なIBAの一つで、西半球シギ・チドリ類保護区であり、地方の保護区でもあります。」とアヴェス・アルヘンティナス(アルゼンチンのパートナー)のMalena Srurは言います。けれどもこれだけではマル・チキータを安全に守ることは出来ません。不名誉なことに、マル・チキータはアルゼンチンの一握りの「危機にあるIBA」の主役なのです。バードフェアの資金提供を受けることになったアヴェス・アルヘンティナスの活動によりこの活動に拍車がかかったことは、自慢できることです。

「竹馬に乗ったキツネ」と例えられるタテガミオオカミは周辺の草原に生息しています。
写真提供:© Spencer Wright

アヴェス・アルヘンティナスは、やるべきことでいっぱいです。マル・チキータ湖から水は乾燥問題を急がせる率で抽出されています。湖は地元の産業による汚染の影響を受けています。「エリアの完全さは農業の集約化、平均以上の伐採の進展、無機性の観光業により一層危惧されています。」、とSrurは言います。

何年にもわたりアヴェス・アルヘンティナスは、マル・チキータで鳥の調査を実施し、環境への関心を喚起し、管理を改善し、土地の所有権を明確にして来た、とSrurは説明します。そしてその見事な腕前が発揮される時が来ました。省及び国の当局と策定したアルゼンチンで最大の国立公園を作る、という野心的な計画です。2017年に同国の環境大臣、国立公園当局、コルドバ省の知事による合意が締結され、今年公式に指定されることが予想されているアンセヌサ国立公園は、70万ヘクタールを保全するでしょう。「地方レベルではなく、国が管理することにより保全はより確実になるでしょう。」とSrurは熱心に言います。これは力強い活動で、実に喜ばしいことです。

マル・チキータ湖は水の抽出、汚染、持続不能な農業などの脅威を受けています。
写真提供:© Gustavo Bruno

マル・チキータ湖には、色を添える伝説があります。寓話はこの国立公園の名前の由来を説明し、そこのフラミンゴを祝います。ある日美しいが残忍な水の女神アンセヌサが、彼女の潟湖の砂の多い岸辺で死にかけている戦士に偶然出会います。思いもよらず彼女は彼の美しさにうっとりとします。初めて恋に落ちたアンセヌサは、男の命が尽きる時に涙を流し、地上に落ちた涙が湖を塩性に変えたのです。アンセヌサを哀れに思った仲間の神々が、戦士の姿をピンクの羽根で飾った美しい、ほっそりとした鳥に変身させて生き返らせました。その時からフラミンゴは塩水性の沼沢地に生息するようになったのです。

国立公園のタイトルに付けた湖の俗称を正式なものにするのは、多くのことを語ります。アヴェス・アルヘンティナスには、参加型の計画策定、地元の利害関係者の強化、「地元の保護活動守護者」のネットワークの確立など、コミュニティの関与が初めから不可欠でした。更に、自然を基盤とする観光業により地元の経済を支えることはプロジェクトの成功の基本です。マル・チキータ湖を2016年のアルゼンチンの「持続可能なツーリズム戦略計画」の優先地域に定めたことを観光省は喜んでいます。「アンセヌサでの活気のあるエコツーリズム周遊旅行は、観光シーズンを長くし、広範囲で持続可能な生計を生み出します。地元コミュニティは、アンセヌサの長期にわたる自然保護を熱心に取り組むようになるでしょう。」とSrurは説明しています。

マル・チキータ湖は鳥だけでなくバードウォッチャーにもパラダイスになるでしょう。
写真提供:© Gustavo Bruno

英国バードウォッチング・フェアが支援しようとしているのは、正にこのような元気の出る未来を作り出すことです。それは単にお金の話ではありません。「バードフェアによる認定は既にマル・チキータ湖/アンセヌサがなぜ保全が必要かということについての政治的認識を高めるための大きな支えになっています。」とSrurは言います。バードライフの生物多様性保護マネジャーのIsadora Angarita-Martínezは更に一歩踏み込んで、「バードフェアというブランドはバードウォッチング産業の支援を得るための助けとなり、これはアンセヌサをバードウォッチングのパラダイスにするための鍵なのです。」

英国バードフェアの支援を受けるプロジェクトになるための競争には、激しいものがあります。毎年幾つかの有望なイニシアティブの中から選ぶに当たって、バードフェアの意志決定者はプロジェクトがどのように広義のバードライフ・パートナーシップを強化するかを考慮に入れます。Angarita-Martínezは、アヴェス・アルヘンティナスのバードライフのアメリカ大陸パートナーシップにおいて政策策定能力の構築を支援する意向を歓迎しています。彼女はアヴェス・アルヘンティナスが「危機にあるIBA」から「コーノ・スール地域草原連合のフライウェイ」までの、バードライフのプログラム全体のプロジェクトを一体化させようとしていることに称賛しています。

バードフェアのプロジェクトは常に、大きなことを考えて来ました。去年のテーマ「太平洋のパラダイスを救う」では、世界で最も遠隔な島の一つフランス領ポリネシアのラパ島から外来捕食動物を一掃することを目指しました。2017年のバードフェアでは、この活動のために驚愕の333,000英ポンドの基金が集まった、と今日発表がありました。これはバードフェアの歴史で2番目に大きな額です。

今年もこれに劣らず野心的なものになるでしょう。「危機にあるIBA」を保全された国立公園に変えるというもので、エコツーリズムを通して持続可能な生計を作り出し、大陸全体のバードライフ・パートナーに利益を与える計画なのですから。まさに2018年バードフェアが支援する価値ある受賞者です。アンセヌサの女神は、まだ泣いているかも知れませんが、彼女の涙はもう悲しいからではなく嬉し涙でしょう。

 

報告者:James Lowen 

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