インドのハゲワシの個体数は推定より少ない可能性

新たな論文で保全状態が再査定された3種のハゲワシのうちの一種、インドハゲワシ © Sudipto Roy

インドの絶滅危惧ⅠA類のハゲワシの個体数は安定しているように思われますが、新たな調査によると、これまで考えられていたよりも個体数は可能性があることが明らかになりました。ハゲワシを死に追いやる家畜用の獣医薬ジクロフェナクはすでに禁止されましたが、同程度に致死性が高く、使用が禁止されていない薬があり、これが大きな原因と考えられています。

罰せられることのない悪しき行為の話です。1990年代から2000年代にかけて、南アジアのハゲワシは壊滅的に減少しました。ハゲワシは、彼らがもたらす最も重要で価値のある生態系サービス、即ち、ウシの死骸を食べるという行動によって次々と死んでいったのです。こうした死骸は、もしハゲワシが食べなければ野良犬などの問題の多い腐肉食動物の餌となり、その個体数が増加したり、政府の清掃費用を上昇させたりすることにつながったことでしょう。ハゲワシの壊滅的な死の主な原因は、獣医薬ジクロフェナクであり、ウシにとっては鎮痛剤ですが、ハゲワシにとっては毒そのものだったのです。

かつては数千万羽を数えたインドの3種の留鳥、ハシボソハゲワシベンガルハゲワシインドハゲワシは今や絶滅危惧ⅠA類に分類されています。

ところで、この窮地に立つ猛禽類は実際には何羽残っているでしょうか?

それこそ保護活動団体が明らかにしようと尽力していることです。ボンベイ自然史協会(BNHS:インドのパートナー)とRSPB(英国のパートナー)は、「Saving Asia’s Vultures from Extinction」(SAVE)キャンペーンの一翼を担い、個体数が激減する前からこれらの種のモニタリングを行ってきました。4年ごとに彼らはインド全体の13の州で15,500kmの道路をカバーする大規模な調査を行い、これら3種のハゲワシの個体数をカウントしました。

 

ベンガルハゲワシは数が増えているようです 写真提供:© Natasha Peters

当初、状況は極めて厳しく見えました。その後、2012年になると3種のハゲワシすべてに減少スピードが低下したと報告しました。ベンガルハゲワシに至っては復活の兆しが見られました。この発見は瞬く間に世界に知れ渡り、勇気を与える知らせとなりました。

今回、新しい手法により、さらに正確な発見が得られました。無料の広報誌Bird Conservation International」に発表された論文では、BNHSとRSPBの共同チームの調査による3種の最新の個体数とその傾向が報告されています。今回の個体数の推定では、ハゲワシが比較的多い保護区周辺で集められたデータかどうかが考慮に入れられています。これにより、以前よりも正確な推定値が得られました。

しかし、結果は必ずしもポジティブだったわけではありません。良いニュースとしては、ベンガルハゲワシは依然として増加傾向にあると考えられることです。悪いニュースは、インドハゲワシが減り続けていることでした。さらに悪いことに、ハシボソハゲワシは個体数が少な過ぎるために個体数の傾向を正確に推定することができませんでした。バードライフは、この新情報に基づき、世界の個体数推定および「ハゲワシ類活動計画」を推進します。

 

ハゲワシの個体数は「驚くほど少ない」

論文の主筆者でBNHSの主任科学者であるVibhu Prakash博士によれば、3種のハゲワシの個体数は以前考えられていたよりもはるかに少なく、2015年のデータからベンガルハゲワシは約6,000羽、インドハゲワシは12,000羽、ハシボソハゲワシは1,000羽と推定されました。これは驚くほど少ない値です。

現在インドにはハシボソハゲワシ(中央)が1,000羽しか残っていない可能性があります。写真提供:© J Irons

ではなぜ個体数がこれほど激減したのでしょうか?実は、問題がまだ残っているのです。2006年にジクロフェナクの獣医用の使用はインドとその隣国で禁止されました。ところが製薬会社は人間用の「多数包装」という謳い文句を付けて、人用にしては疑わしいほど大きな瓶に入れて製造・販売を続けたのです。これらは簡単に家畜用に転用できるのです。そこで2015年にインド政府はこの大瓶でのジクロフェナクも禁止しました。2017年には、2つのインドの製薬会社が、この2度目の禁止処置に対して法的な訴えを行いました。けれども幸いにもこの訴えはマドラスの高等裁判所にて却下されました。これが鎮痛薬問題への最終判断になることが期待されます。

 

インドのハゲワシの危機はまだ終わっていない

けれども問題はジクロフェナクだけではありません。ジクロフェナクはインドで入手可能な10種を越える非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の一つに過ぎません。メロキシカムというハゲワシへの毒性がない薬があることは分かっています。けれども、他の5つの薬品(aceclofenac, carprofen, flunixin, ketoprofen および nimesulide)には毒性があることが分かっており、これらの薬品はいまだ合法なのです。

すべてが悪いニュースだけではありませんが、もっと多くの努力が必要なことは明らかです。論文の共著者でRSPBの保護科学センターの上級保護科学者であるToby Galligan博士は状況を総括して次のように述べています。「私たちの論文は、インドのハゲワシの危機はまだ終わっておらず、ハゲワシに毒となる非ステロイド系抗炎症薬に対するより一層の規制措置が必要であることを示すものです。」

報告者:Jessica Law

原文はこちら

 

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