2017年版レッドリスト:海鳥は飢え、鳴禽類は罠の餌食に。ペリカンとキ-ウィには希望が。

ニュージーランドの今年の鳥ケアは絶滅危惧IB類に格上げ 写真提供: © Mark Hurrell

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト更新のためにバードライフがまとめた世界の鳥類の最新情報によれば、魚の乱獲と気候変動によって、ミツユビカモメやケープシロカツオドリなどの海鳥が絶滅に近付いています。

陸地では、北アメリカの北極圏に生息するシロフクロウが餌不足に苦しんでいます。かつては途方もなく数が多かったシマアオジは、中国での密猟(食料としての)を止めなければ遠からず絶滅する可能性があります。そしてニュージーランドでは、ケアが外来哺乳類の餌食になっているだけでなく、観光客がこの好奇心旺盛な鳥にジャンクフードを与える行為によって保護活動の進展が阻まれています。

一方、希望もあります。ヨーロッパのニシハイイロペリカンは、筏の上に作られた人工の巣と攪乱の防止のお蔭で数を増やしており、ニュージーランドでは外来の捕食動物の抑制や人口飼育、地域コミュニティの努力によって、2種のキーウィへの脅威は低減されました。

「鳥はよく研究された生物の一つであり、環境全体の健全性を測るのに適した指標でもあります。絶滅危惧度の高い種は、迅速な保護活動が必要であることを知らせてくれる警報なのです。キーウィとペリカンのの成功例は、十分な資金と支援があれば保全活動は報われるものであることを示しているのです。」とバードライフの世界科学コーディネーターのIan Burfield博士は述べています。

ミツユビカモメは繁殖がうまくいかず、絶滅の危機に

北ヨーロッパ・北アメリカ・北東アジア

魚の乱獲と気候変動によって、繁殖期におけるミツユビカモメの主な餌(イカナゴなど)の量と質に変化が起きています。北大西洋と太平洋のミツユビカモメのコロニーでは雛の餌が足りず、雛の生存率は近年、悲惨な数値となっています。親鳥も、漁具による混獲、海洋汚染、フェロー諸島とグリーンランドでの狩猟などの脅威にさらされており、この海鳥が激減している要因になっています。

ミツユビカモメは1970年代から約40%減少した。
写真提供: © Ed Marshall

ミツユビカモメの営巣数は、2000年以降、オークニー諸島とシェットランド諸島で87%、セント・キルダのヘブリディーン島で90%も減少しました。世界的には本種は1970年代以降約40%減少し、軽度懸念種から絶滅危惧Ⅱ類に格上げされました。ミツユビカモメはどこの国にも属さない公海を含め、広範囲の海を餌を求めて飛びまわります。

「ミツユビカモメやニシツノメドリなどの北大西洋や北極圏に生息する海鳥の悲惨な現実は、国が保全に目を向けず、気に留めないでいると何が起きるのかを示す、痛ましい教訓となっています。」とバードライフの欧州海洋保全オフィサーのMarguerite Tarziaはコメントしています。

バードライフは近年、中部大西洋における公海のIBAを定めました。この地域はミツユビカモメやニシツノメドリなどの20種以上の海鳥にとっての主要な採餌エリアになっています。また、公海上の海洋保護区として検討してもらうため、オスパール条約(北東大西洋の海洋環境保護に関する条約)に提案書を提出しました。

カツオドリすら飢えている-過剰漁獲が原因

アフリカ南部

食いしん坊で知られる海鳥に対する究極の皮肉:南アフリカ共和国とナミビアでのみ繁殖するケープシロカツオドリは、1950年代と比べて50%以上個体数が減少しています。ナミビアでは、カツオドリが好むマイワシとカタクチイワシの乱獲により、1960年代にはこれらの漁業資源がほぼ完全に枯渇し、今なお回復していません。南アフリカでは原因は不明なものの、魚が西海岸から南海岸や東海岸に移動しました。これらの変化によってケープシロカツオドリは十分な餌を確保できず、絶滅危惧Ⅱ類から同IB類に格上げされました。

ケープシロカツオドリの餌である魚の乱獲によって1950年代以降個体数が半減した。
写真提供: © Mark Anderson

「餌不足を補うため、ケープシロカツオドリはメルルーサ漁の漁船の後ろに集まり、捨てられた栄養価の低い魚の切れ端を食べるようになりました。漁具による偶発的な混獲の危険が高まるだけでなく、この「ジャンクフード」で育った雛は成長が遅く、本来の餌で育った雛よりも生存率が低いことが報告されています。」とバードライフ南アフリカの海鳥科学者Christina Hagenは述べています。

南極海ではアンティポデスアホウドリの個体数が減少し、絶滅危惧Ⅱ類から同IA類に格上げされました。延縄漁における混獲が主な要因で、アホウドリは餌を求めてより遠くまで行かなければならなくなったために、混獲の脅威は増大しています。また、オスに比べてメスの方が混獲の犠牲になる割合が高く、性比のバランスが大きく崩れていると考えられます。

中国では食材目的の密猟によって、かつては膨大な数を誇った種が絶滅危惧IA類に

アジア

現在深刻な絶滅危機にあるシマアオジは、リョコウバトの二の舞になってしまうのでしょうか?かつては極めて数が多かったシマアオジは、大規模かつ無制限の狩猟(主として食料目的)によって恐ろしいほど減少してしまいました。この魅力的な鳴禽類の大群がアジアの農耕地で見られるのは、ほどなく過去のものになるでしょう。かつては十億羽を超えていたリョコウバトが、1800年代の北アメリカで狩猟により絶滅した姿と重なります。

シマアオジの狩猟は1997年に禁止されましたが、闇市場では今も続いています。
写真提供: © Sergey Yeliseev

「米の鳥」として知られるシマアオジは、軽度懸念種に指定されていた2002年と比べて80%以上減少したと考えられており、今回、絶滅危惧IB類から危惧度が最も高い同IA類に格上げされました。コミュニケーションと移動の技術革新がなお一層狩猟を加速させており、中国では1997年に狩猟が禁止されましたが、現在でも闇市場で売られています。

香港バードウォッチング協会では本種を救う緊急活動を呼びかけており、新たな市民キャンペーンの一環として2018年を「シマアオジ国際啓発の年」と定めました。香港食物及衛生局の前職員のKo Wing-man博士は、人々に「地元の農業を支え、シマアオジを食べるのは止めよう」と呼び掛けています。

ジャンクフードでケアが絶滅の危機に

太平洋地域

2種のキーウィは個体数が回復し、絶滅危惧IB類から同Ⅱ類に格下げになりましたが、2017年のニュージーランドの「今年の鳥」だったケアは急速に数を減らしていることが明らかとなり、逆に絶滅危惧IB類に格上げされたのです。観光客がそうとは意識せずこの好奇心旺盛な山岳性のオウムにジャンクフード(パンやチップスなど)を与える行為によって、本種を絶滅から救うための保護活動が妨げられているのです。

観光客にケアへの餌付けを禁止する看板
写真提供: © keaconservation.co.nz

毎年、ケアの巣の60%がオコジョなどの外来捕食動物によって荒らされています。ときにはオコジョの「大発生」が起こり、この割合が99%にまで達することもあります。外来哺乳動物の抑制には毒入り餌を使う方法が有効であることが分かっており(キーウィや他の在来の鳥の保全に非常に効果がある)、実施すればケアの繁殖成功率がかなり改善します。しかし、一部の地域ではケアが毒餌を食べてしまうリスクがあるため、実施されていません。

「多くの観光客や一部の地元の人がケアを餌付けしており、こうした行為によってケアが新しい食物を試す行為が増えているのです。このような「ジャンクフード・ケア」は、ネズミ、オコジョ、フクロネズミ、野良猫などの外来種の抑制を目的とした毒入り餌を食べてしまう可能性が特に高いと思われます。私たちの保全活動の大きな課題の一つは、観光客や他の人たちがケアに餌を与えるのを止めさせることなのです。」とフォレスト&バード(ニュージーランドのパートナー)の保護活動アドヴァイザー主任のKevin Hackwellは述べています。

獲物不足がシロフクロウを脅かす

北アメリカ

北アメリカの北極圏から届いた新たな情報によると、地域の象徴的な存在であるシロフクロウの個体数は、以前考えられていたよりもずっと少なく、しかも減少傾向にあります。ユーラシア大陸北部での同種の状況は不明ですが(欧州でも減っていると考えられる)、米国とカナダでは1970年以降主要な個体群が64%減少しました。その結果、ハリーポッターに登場する「ヘドウィグ」によって世界的に知られるようになった本種は、軽度懸念種から一気に絶滅危惧Ⅱ類まで格上げされました。このフクロウは様々な脅威に直面していますが、中でも気候変動によって雪が融け、それが餌であるげっ歯類の減少につながっています。車両や建造物との衝突も問題の一つです。

気候変動がシロフクロウの餌を減らしてしまう。
写真提供: © Francais Cadien

「極地の生物多様性は、気候変動などの多くのストレスを受けています。シンボル種であるシロフクロウの絶滅危惧度の格上げが、この地域の様々な問題に目を向けるきっかけとなることを期待しています。」とバードライフのグローバル科学コーディネーターのIan Burfield博士はコメントしています。

世界最大の淡水性鳥類の命綱

ヨーロッパおよびアジア

長期にわたる保全活動によってヨーロッパ南東部のニシハイイロペリカンの個体数が復活した結果、本種は絶滅危惧Ⅱ類から準絶滅危惧種に格下げされました。欧州では個体数が1990年代以降4倍に増加しました。これは「種の活動計画」とEUの野鳥および生息地指令に基づく保護のお蔭です。この指令は、ギリシャ、ルーマニア、ブルガリアの本種の主な繁殖地の保全に効果を発揮しました。

人工の浮き島を利用するニシハイイロペリカンとその雛
写真提供: © A. Vizi / Natural History Museum of Montenegro

モンテネグロのシュコダル湖では、このペリカンは攪乱から守るために人工的に作られた浮き島でのみ繁殖しますが、2017年には、これまでで最多の60羽の雛が育つという大きな成功を収めました。ギリシャでは個体数が20年間でほぼ2倍に増加しました。

ヨーロッパの大きな個体群は増加していますが、中央アジアの個体群については状況が不明で、東アジアの小さな個体群は危機的状況にあります。この鳥は撹乱の影響を受けやすいことから、ヨーロッパにおいても幾つかの湿地では、繁殖が成功するかどうかはフルタイムの保護管理に依存している状況です。

 2017年版IUCNレッドリストの概況

世界的に見ると、今回のレッドリストの更新で再評価された種の4分の1(26%)以上にあたる238種が、より危惧度が高いカテゴリーに格上げされましたが、その一方で28%がより低いカテゴリーに格下げになりました。

現在バードライフとIUCNが認識している11,122種の鳥のうち:

1500年以後156種が絶滅。最後の個体が死んでしまったことに疑いの余地はない。

5種が野生絶滅し、飼育下で生存。

222種が絶滅危惧IA類で、そのうち21種は恐らく絶滅、1種が恐らく野生絶滅。このランクに分類されている種の野生絶滅のリスクは、極めて高い状態にあると考えられる。

461種が絶滅危惧IB類に分類され、野生絶滅のリスクが非常に高い。

786種が絶滅危惧Ⅱ類で、野生絶滅のリスクが高い種。

絶滅危惧IA類、同IB類、同Ⅱ類の3つのカテゴリーを合わせて世界的絶滅危惧種と呼ばれます。現存する鳥類の種のうち、およそ13%、すなわち8種に1種が世界的絶滅危惧種に分類されています。

 

補足:

1,017種が準絶滅危惧種。近い将来危惧種に分類される可能性が高い。

8,417種が軽度懸念種。現状では世界的に見て絶滅の危機にあるとは考えにくい種。

58種がデータ不足種。絶滅のリスクを評価するための情報が不十分な種。

 

報告者:Shaun Hurrell

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