最後のダンス?絶滅危惧ⅠA類のカイツブリのディスプレイ行動の撮影に初めて成功

パタゴニアの人里離れた氷河の沼で希少なカイツブリが魅惑的なダンスを踊っている様子が初めて撮影されました。しかしながら、外来捕食動物とダムの建設計画が彼らの生存を脅かしており、あとどれくらい彼らのダンスを見ることができるでしょうか。

まず この映像をご覧ください。頭を激しく上下に振るパタゴニアカイツブリの魅惑的な求愛ディスプレイです(謝辞:Living Wild in South America)。

何が起きているのでしょうか?ほとんどのカイツブリ類と同様、パタゴニアカイツブリもパートナーを選ぶ時には信じられないほど選り好みします。指輪の交換をする前に、パートナー候補同士でダンスの動きやスタミナ、リズムなどを見定め、相性を確認します。

パタゴニアカイツブリは隔絶した、ほぼアクセスできないパタゴニア地方の湖に生息しているので、その精妙なダンスを練習する時間はたくさんありました。本種は43年前に発見されたばかりの種で、私たちはまだこのカリスマ的な種の秘密を解明できていません。

この映像はドキュメンタリー「風のタンゴ」の制作のために撮影されたもので、これほど詳細にパタゴニアカイツブリの素晴らしいダンスが撮影されたのは初めてのことです。けれども、本種が発見されてからまだ半世紀も経っていないにも関わらず、人間活動の影響で絶滅に向かっています。北アメリカ原産の半水生哺乳動物ミンクが、1930年代に毛皮の生産のためにパタゴニア地方に持ち込まれたのは、パタゴニアカイツブリの存在が知られる数十年も前のことでした。

数匹のミンクが飼育場から逃げ出し、カイツブリを捕食し、かつてないほどその数を減少させています。また計画が不十分なまま進められている2つのダム建設がとどめを刺す恐れがあります。

パタゴニアカイツブリの個体数は急激に減少しています。1980年代半ばまでは少なくとも成鳥3,000羽~5,000羽と推定されていましたが、今日では400つがい以下です。この状況を知ったアヴェス・アルヘンティナス(アルゼンチンのバードライフ・パートナー)は、同国で愛情をこめて「Macá Tobiano(フード付きカイツブリ=パタゴニアカイツブリの意味)」と呼ばれる本種を救うため、アルゼンチン沿岸全域の繁殖地と越冬地での保護のために調査や、教育、保護活動を開始しました。

2009年以降、「パタゴニアカイツブリ・プロジェクト」では、捕食だけでなく、もう一つの減少要因である家畜の過放牧を低減する取り組みを実施してきました。

けれども、このような努力も全て、サンタクルス川のダム建設プロジェクトの継続が認められれば無に帰すでしょう。中国企業と共同で、アルゼンチン政府はサンタクルス川に2つの巨大なダムの建設を計画しており、それはパタゴニア地方最後の氷河河川の破壊につながり、川の生態系のおよそ半分と、川に依存する多くの種の絶滅につながる恐れがあります。ダムは自然のプロセスを妨げ、その結果川の流れとこの地域の水生生態系に影響を及ぼすでしょう。下流域での餌も影響を受け、そのためにパタゴニアカイツブリの最重要の越冬地も失われるでしょう。

サンタクルス川はパタゴニアの氷河の融水で生まれ、385キロ下って大西洋に至ります。その曲がりくねった流路はこれらの地域の気象条件に適応した、特にパタゴニアの固有種でシンボルでもあるパタゴニアカイツブリなど、多くの種が好む生息地です。数年前、州政府は本種を絶滅から守るために国立公園を作りましたが、その同じ州がその死を承認する可能性があるのです。

サンタクルス川の流路には100もの沼がありますが、パタゴニアカイツブリの個体数の70%はほんのひと握りの沼にだけ生息しています。最近の調査では、518羽がわずか6つの沼で観察されたのみでした。

背中に雛を載せて育てるパタゴニアカイツブリの親
写真提供: © Living Wild in South America

保護プロジェクトの開始当初から、手遅れになる前に個体群を回復するために多くの活動が行われてきました。その結果、現在では主な脅威は低減され、管理されています。ミンクだけでなくニジマスの養殖やカイツブリの卵や雛を食べるミナミオオセグロカモメなどがそれです。

現時点で、本種にとって最大の脅威の一つであるミンクの個体数管理は4年目を迎えています。重点地域は外来捕食動物の影響が最も激しいブエノスアイレス湖台地(パタゴニア国立公園内)につながる地域でした。40個の罠が4つの川に120日間にわたり仕掛けられ、26頭のミンクを除去することができ、その後今日までに合計114頭になりました。

一方、サケ類、特にニジマスによるサンタクルス西部の高原の沼における影響に対する活動の目的は、過去数十年の養殖漁業により改変された環境の復元能力の評価でした。デル・イスロテ湖が外来種のニジマスの影響から復元される最初の場所に選ばれました。この湖は1980年代には1,000羽(当時の世界全体での個体数の20%)のパタゴニアカイツブリの成鳥が生息していた場所で、本種の回復にとって極めて重要です。カモメ類などの捕食性の鳥は「コロニーの守護者」プログラムにより管理されており、本種のセンサスとモニタリングはそのライフサイクルを通して行われます。

けれどもこれらの活動はすべてパタゴニアカイツブリの生息地の保全ができなければ意味がありません。このため、私たちがサンタクルス川のダム計画の反対運動を続けることが基本になるのです。

ここ数ヶ月、アルゼンチンの幾つかの環境保全団体がダム建設に反対する不屈の活動を始めました。その期間内で「川の殺戮」というタイトルの短編ドキュメンタリーが作られ、600人以上の観客の前で放映されました。またアルゼンチンの歴史上初めてのダム建設に関する国民会議での公聴会が行われました。2日間の公聴会で全ての環境保護団体を含む60%以上の出展者がダム建設反対の意思を示しました。現在ダム建設は最高裁判所の命令により停止されています。各団体の献身的な活動のおかげです。けれども、今でもダンスはアルゼンチンの会議室と沼(少なくとも今現在は)の両方で続いています。

 

報告者: Alex DaleおよびFrancisco González Táboas(Aves Argentinas)

原文はこちら

 

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