悲惨な状況―ヨーロッパは海鳥を守っているのか?

写真提供: © Iván Ramírez

バードライフの保護部ヘッドIván Ramírezの主導により作成された新しい科学論文がある論文審査の専門誌「Marine Policy(海洋政策)」誌で発表されました。この研究はEU(欧州連合)のマリーンSPA(特別保護区)ネットワークの最新の国別および種の特徴の解析を要約したもので、欧州がどれほど海鳥を守っているかについて重要な新しい考察を提供します。

地球は、その表面の71%が海洋に覆われています。太陽系の中の私たちの小さな家(地球のこと)がしばしば「青い惑星」と呼ばれることはさほど不思議ではありません。それでも、海洋環境には未だに多くの謎が残されています。そして事実、今日「世界海洋の日」を私たちが祝っていることはこの巨大な青い広がりが持つロマンスではないでしょうか?それはキャプテン・クックからコスト―に至る冒険家、あるいはホーマーやヘミングウェイなどの作家、そしてもちろんその水深を測ろうとする保護活動家を動かしたロマンスなのです。

その一方で悲しいことにバードライフ・ヨーロッパ&中央アジアの保護部ヘッドIvan Ramirezの言葉を借りれば、海洋の生物多様性の保全は「冒険的な企て」です。しかしこれでも完全に形容するには不十分です。多くの海洋生物は観察や追跡が信じられないほど難しく、欧州だけでなく世界の多くの国で海洋固有のデータや調査資源が不足しているのです。

デゼルタスミズナギドリは全て海に

最近、独立した種に分離され、個体数が少ないことから絶滅危惧Ⅱ類にリストされたデゼルタスミズナギドリ(和名未定につき仮称。デゼルタスはポルトガル領の無人島の名前)を例に取ってみましょう。Ramírezと彼の仲間は2007年以来本種を通年追い続けて来て、今やシロハラミズナギドリ類では世界最大の追跡データセットの一つになっています。鳥の足に装着された小型のデータロガーが明らかにしたのは驚きの事実でした。隔絶したブージオ島(マデイラ諸島=ポルトガル領)の繁殖地から、デゼルタスミズナギドリはまさに大西洋のツアーとも呼ぶべき移動をし、ケープベルデ、ブラジル、アルゼンチン、フロリダで判明している5ヶ所ほどの異なる場所で越冬しています。Ramírezはこれらの鳥が越冬地に対して非常に忠実であることを見つけました。つまり、ある特定の鳥がブラジル沿岸を好めば、その鳥は毎年ここを訪れるのです。

けれどもデゼルタスミズナギドリは他の多くの海鳥のように海上で筏のような群を作って集まる傾向がなく、カモメ類や他のミズナギドリ類のように漁船を追いかけたりもしません。加えて外洋でデゼルタスミズナギドリを識別するのは非常に困難です。それでは、このような種が一度繁殖地を離れてしまった場合その保護を確実に行うにはどうしたら良いのでしょうか?

デゼルタスミズナギドリの保護の課題は偶然にもRamírez自身の博士論文のテーマで、実に適切でした。その暗色の頭頂と目立つ翼上のM型の模様により、本種はまさに「海鳥のスーパーヒーロー」と呼ぶのにピッタリです。デゼルタスミズナギドリの研究は、ヨーロッパの海鳥が何故このような悲惨な状況にあるのかということに対する洞察に関して非常に有効です。海鳥は、鳥類の中で最も絶滅を危惧されるグループですが、彼らを上手く守るにはどうしたら良いのでしょうか。

デゼルタスミズナギドリ
写真提供: © Iván Ramírez

マリーン保護区のためのダイアル「M

実際にこの調査を基にしてRamírezは新しい論文審査のある科学論文を発表しました。それは次の質問を正確に検証するものです:「EUは域内の海鳥をどれ程良く守ることができているか。海洋における野鳥指令実施の進展度はどの程度か」

バードライフ・パートナーと欧州委員会からの入手可能な最近のデータをすべて利用して、この論文では、EU地域内に通常生息する82種の海鳥について、EUのマリーン特別保護区のネットワークによる現在の法的保護と空間的カバーをバードライフ自身のIBAネットワークと比較しました。初めて国別および種に特有なアプローチを行う中で、この論文はEUが自身の海洋の生物多様性の目標をどの程度達成しているかを評価するための重要な新基準を定めました。

ニシツノメドリのコロニー
写真提供: © Wes Davies

海の変化が必要

論文の研究結果は、EUがマリーン保護区(SPA)に関する限りは必ず「海の変化」が必要であることを示しています。EUは世界の他の地域よりはましですが、その海域のSPAによる保全はまだ全く不十分で、陸地の12.5%に比べて僅か3.9%に過ぎません。更にその上に、地域による差が極めて大きく、スカンジナビアとバルチック諸国は黒海、地中海中央部と東部、英国およびアイルランドなどの国々と比べて国内のサイトに対してはるかに大きな法的保護を提供しています。興味深い事には、このような違いは国のEEZ(排他的経済水域)の規模や各国の経済的豊かさを反映したものではありません。EU加盟国のうちの10カ国が水域の3%以下しか保全を行っておらず、その中の5ケ国のうちの4ヶ国に最大の海域を持つポルトガル、英国、イタリア、ギリシャが含まれています。

この研究はEU加盟国のSPAネットワークの大きさが、EUに加盟した年次の影響を受けておらず、また、多くの加盟国が欧州委員会の呼びかけにもかかわらずマリーンSPAネットワークの宣言を行っていないことを明らかにしました。これは欧州全域での完全なマリーンSPAネットワークの特定、指定及び管理は、それが成功するための主要な推進力の一つが国およびEUレベルでの政治的意思であることを示すものです。

ニシツノメドリのコロニー
写真提供: © Sheila Russell

意志あるところに道あり

これらの結果は昨年末に公表された欧州委員会による「フィットネスチェック」と一致しています。EU自然指令は‘目的に合っています’が適切な実施という面では上手く行っていません。これらの法律は理論的にはEU加盟国自身の国法に置き換えられ実施されるべきもので、それが出来なければ欧州委員会により欧州裁判所に控訴される可能性があります。実際には加盟国が欧州の自然に対する義務を十分に果たすようにしている状態ではありません。

委員会にとって今や古い格言「意志あるところに道あり」から決別する時です。彼らは既に自然指令のより良い実施の「意志」を述べているのです。バードライフではこれが欧州の海鳥の悲惨な状況を通る‘道’を開くかどうかをしっかりと(希望を持って)見つめて行くでしょう。

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