渡り:遠距離恋愛の話

クロアチアのコウノトリ、KlepetanとMalena(共にニックネーム) 写真提供: © Stjepan Vokic

この15年間、熱愛中のコウノトリは、体に障害のあるアモーレと再会するために、南アフリカの越冬地からクロアチアの同じ家の屋根に忠実に戻って来ます。これはクロアチア国民の心をとらえたラブストーリーです。けれども、彼がクロアチアを離れる時にはいつも、次の春まで彼が生き延びて彼女に会いに来れるのかと、心配になります。

Klepetanに時計を合わせてください。百万人以上の人たちがライブ配信を見ています。過去15年間毎年オスのコウノトリKlepetanは、ボスニアとの国境近くの小さな村Brodski Varošの同じ赤煉瓦の屋根に戻って来るのです。

去年は例外的にKlepetanの到着が6日遅れました。例年なら彼は3月24日(プラスマイナス1日)に戻るのですが、去年はそれが3月30日になり、彼のパートナーMalenaが夫の帰還を一人でじっと待つ姿が見られました。

しかし、3月30日の午後4時40分、Klepetanはライブ映像に飛び込んできて、仲睦まじい姿を見せ、国民に喜びを届けました。

ところで、このコウノトリ夫婦がクロアチア国民に共感を与えるのは何なのでしょうか?多分、それは彼らの関係が多くの恋人たちが経験する「遠距離恋愛」の姿を連想させるからでしょう。

Klepetanは毎冬1羽で5, 000マイルも離れた南アフリカへ、長く困難な旅をするのです。一方Malenaは1993年に密猟で銃撃され、それ以来上手く飛ぶことができません。彼女にとって幸運だったのは、学校の用務員のStjepan Vokicさんに道路脇にうずくまっているところを発見されたことです。彼はMalenaの怪我の手当てをし、それ以来ずっと世話をしています。家の屋根の上に巣を作り、寒い冬の間はシェルターを提供しています。

それは15年前のある日Klepetanが屋根の上の巣に居るMalenaを見つけ、求婚した時から始まりました。それ以来ペアは離れることが出来なくなりました(ただし、一年のうちの数ヶ月を除く)。この15年間に2羽は10羽以上の雛を育てました。

しかし冬になるとKlepetanは飛べないパートナーをクロアチアに残して、他のコウノトリと共にアフリカへ渡ります。春になって鳥たちが戻って来る時、Vokicさんや数十万人の人たちはライブ映像に釘付けになり、Klepetanが危険な旅から生き延びて戻って来るかを不安な気持ちで待ちます。渡り鳥は毎回壮大な旅に出る時に嵐、飢餓、捕食者、送電線など数多くの脅威に勇敢に立ち向かいます。けれどもKlepetanの旅には彼のサポーターたちが心配する特別な地域があります。レバノンを通過する時の100マイルの地域です。

世界で最も重要な渡りのルートの一つアフリカ=ユーラシア・フライウェイは、真っ直ぐレバノンを通っています。そしてここが、260万羽もの鳥が密猟により空から撃ち落とされ旅の終着点になってしまう場所なのです。

大型の渡り鳥の1種であるコウノトリは、密猟者にとって明確なターゲットです。今年は調査のためにGPS追跡装置をクロアチアで装着した2羽のコウノトリのうち、オスのTeslaが4月にレバノンで死亡したというニュースがあったため、Klepetanが無事かどうかが特に心配されていたのです。

Klepetanの安全を大変心配したVoickさんは、レバノン大統領のMichel Aounに手紙を書きました。それもKlepetanの羽根の一枚で作られた羽根ペンを使ったのです。「ペンは剣よりも強し」の象徴です。この心のこもった手紙は、全く同じ羽根が収められた箱に入ってAoun大統領に届けられました。VokicさんはAoun大統領に危険な渡りのシーズンに、鳥の保護を強化するための法律をこのペンを使って書くように求めたのです。

その手紙を引用すると、「私の国ではコウノトリは子供と新しい命を運ぶと信じられています。KlepetanとMalenaの2羽のコウノトリは私の全生涯です。コウノトリが子供を運んで来るという話を信じる必要はありませんが、クロアチアでは百万人を超える人たちがライブ配信のカメラ映像を通してKlepetanの帰還を心待ちにしており、彼が戻った時に多くの人たちに愛とは何か、愛とは何を意味するのかを思い出させてくれる幸福と喜びをもたらしている事は、信じて頂けるでしょう。」

この手紙に続き、バードライフのCEOパトリシア・ズリータから、大統領の特別アドバイザーClaudine Aoun Roukoz氏に、Aoun大統領の誓約に感謝を表すると同時に、この件でのバードライフとの緊密な提携を求める手紙が送られました。

Vokicさんの感情的な嘆願は、大統領の心を揺さぶる可能性があります。まさに先月、レバノン首相が同国内で毎年行われる鳥の虐殺を止めることを約束し「人と樹木同様、人と鳥の間にも平和条約を結ばねばなりません、私たちは彼らに背き続けています。」と述べました。

しかし、Aoun大統領のあらゆる活動は迅速で強固なもので、実地での行動が伴うものでなければなりません。Klepetanが再び南に向かう長旅を始めるまであと僅か数ヶ月です。時計のように毎年パートナーの巣に戻って来る熱愛中のコウノトリにとって、時計は刻一刻と進んでいます。

訳者注:大型鳥類の多くは一度つがいになると一方が死ぬまでペアを続け、渡り鳥の場合はコウノトリのように必ずしも同じ場所で越冬するのではなく、春になって繁殖地で再会する種がいます。

報告者: Alex Dale

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