アジアの片隅で踏ん張る絶滅危惧種の鳴禽

キガシラヒヨドリ © Lee Tiah Khee

鳴禽類売買のための罠猟が、ほとんどの生息地で絶滅してしまったキガシラヒヨドリへの最後の一撃を与える寸前まで来ています。ところが、最近の調査によってこの鳥がシンガポールの小島でこの流れに逆らっていることが発見されました。

キガシラヒヨドリは(少なくとも東南アジアに生息する他の鳥と比べると)さほど魅力的な鳥ではないかもしれません。しかし、素晴らしい喉の持ち主であることは間違いありません。

その鳴き声を聞いてみてください(© Lena Chow)

しかし、不幸なことに、彼らの豊かで力強いこの鳴き声こそが、彼ら自身を絶滅の危機に追いやっているのです。2016年レッドリストの更新に関する記事でお伝えしたように、鳴禽類をペットとして飼うことは東南アジアの文化には欠かせないもので、特にインドネシアでは、通りには小鳥の籠が並び、鳴禽コンテスト(鳴き合わせ)は大きなビジネスになっています。

通りが鳥の声で賑やかになるほど、森は静かになっていきます。地元の鳥市場の需要を満たすため野生の鳴禽の罠猟が広範囲に渡って行われており、地域の固有種の多くを絶滅に追いやっています。その影響を最も受けた種の一つがこの貴重なキガシラヒヨドリなのです。

オーストラリア国立大学のヨン・ディン・リー氏はこう言います。「ジャワ、カリマンタン、スマトラ、マレー半島の鳥市場での売買のために、東南アジアでキガシラヒヨドリの罠猟が広範囲にわたり執拗に行われています。タイと、かつて本種が見られたジャワ島全島を含むインドネシアの大部分で既に絶滅してしまいました。マレーシアでも個体群が崩壊しました。」

タイとインドネシアの大部分で絶滅するほどまでに捕りつくされたキガシラヒヨドリは、永久に姿を消してしまうかもしれません。

しかし実は、キガシラヒヨドリの生息状況が安定しているだけでなく、数が増加している小さな地域が一ヶ所だけあります。シンガポールです。

これは 最近Bird Conservation International誌に発表された、ディン・リー氏主導の研究で発見された情報です。この研究は、オーストラリア国立大学とシンガポール自然協会(同国のパートナー)の著者が、同協会が毎年行ってきた年次野鳥センサスの15年以上ものデータを解析したものです。

その結果は私たちに勇気を与えてくれるものでした。キガシラヒヨドリの野生個体群はシンガポールにおいて順調に増加しており、今や本種にとって重要な生息地となっていたのです。実際に、現在シンガポールには世界のどこよりも多くのキガシラヒヨドリが生息していると考えられます。

シンガポール本島でのキガシラヒヨドリの増加は記録されていませんが、そこでも個体数が安定して維持されています。キガシラヒヨドリの他の場所での非常に苦しい状況と比べると、このことでさえ大きな勝利といえます。これに加え、キガシラヒヨドリの増加がシンガポール本島の北西に位置する小さなPulau Ubin島で報告されました。ここでは本種が1年でほぼ4%増加しました。

現在では、小国シンガポールにキガシラヒヨドリの世界の個体数の3分の1が生息している可能性があるといわれています。

シンガポール西部の幾つかのエリアはアクセスが限られているために十分な調査が行われていないので控えめな推定となりますが、現在同国には少なくとも200羽が生息していると考えられています。その上、ごく最近新しい生息地も発見されました。世界にキガシラヒヨドリが600~1,700羽と推定されるので、シンガポールはその3分の1以上が生息していることになります。

シンガポール本島ではキガシラヒヨドリはブキット・ブラウン墓地やKhatib Bongsu(地名)などの狭い森林で生き残っていますが、どちらの場所も現在保護区ではありません。

「保護区になっていないこうした場所を守るために、もっといろいろなことを行う必要があります。キガシラヒヨドリを対象にした保護活動は他の生物多様性にも良い影響を与える可能性もあります。」と論文の共著者でシンガポール自然協会の保護委員会の副会長であるHo Hua Chew博士は言いました。

シンガポールに残る最後の農村地域の一つPulau Ubin (via Wikicommons)

シンガポールに残る最後の農村地域の一つPulau Ubin (via Wikicommons)

またこの研究は、市民科学に価値があることを証明する事例にもなっています。ボランティアの力がなければ島の保護活動家はキガシラヒヨドリなどの希少種にとって最も重要な生息地を特定するためのデータを十分に得られなかったでしょう。この尽力により、近年のキガシラヒヨドリの減少が著しいことが明らかになり、バードライフは2016年度レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧ⅠB類に引き上げました。

「シンガポールでのキガシラヒヨドリを含む野鳥の個体数をモニタリングする活動は1986年以来シンガポール自然協会の主導により行われてきました。朝から大勢の熱心なメンバーが睡眠を犠牲にしてまで担当地域で過ごして鳥の数を数えるという、過去20年にわたるこのセンサスにより、世界的に絶滅が危惧されるキガシラヒヨドリなどの絶滅危惧種の個体数の変化を追跡することが可能になったのです。」と論文の共著者で‘年度野鳥センサス’のコーディネーターであるLim Kim Seng氏は言います。

インドネシアの一部ではキガシラヒヨドリは既に絶滅してしまったかもしれません。しかし、東南アジアの小さな一角では彼らの大きく誇らしげな声を今でも聞くことができるのです。

 

報告者:  Alex Dale

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