夜明けの王様

自然の環境内のセキショクヤケイのオス 写真提供: © Philip Pikart

雄鶏の声で目が覚めました。ハードワークと幸運な一日の始まりです。今回は十二支の中の唯一の鳥を取り上げます。

米国では「cock-a-doodle-do」、ガーナでは「konkoliirikoo」、スウェーデンでは「kuckelikuuu」、イタリアでは「chicchi-ri-chììì」、中国では「O-O」・・・と表現される雄鶏の声で、毎朝世界中で多くの人が目を覚まします。

これほど人の生活に関わっている鳥は他には居ないでしょう。世界の人口75億人に対してニワトリは120億羽を超え、世界で最も数の多い鳥です。けれどもニワトリは生物学的、文化的、精神的にその数以上の存在で、1月28日は中国の暦では幸運、知恵、勇気、努力をもたらす‘酉年’の始まりなのです。

もし子供のころからの童謡などでどこにでもいる慣れ親しんだ「ただのニワトリ」だとお考えでしたら、もう一度よく見てください。肉や卵などの食糧としての見方や、残酷な集団養鶏場から離れてみると、この美しい鳥がまるでキジのように農場や村に佇んでいませんか?

およそ7,000年前、私たちの祖先の一人がアジアのどこかの緑豊かな森林を軽やかに歩いているのを想像してみてください。。突然落ち葉がカサカサ鳴る音が聞こえ、太い鳥の爪が虫を狙って下生えを引っ搔いているのが見えます。もし映画「ジュラシックパーク」を見たことがあるなら、ヴェロキラプトルの敏捷で獰猛な足と見まがうかも知れません。けれども、その代わりに朝日の色の羽毛、オスの素晴らしい緋色の鶏冠、大きく強力な胸の筋肉(危険から逃れるために林の中に全力で飛ぶために使う)が見えるでしょう。野生のヤケイと出会ったなら、有意義な体験になるか、健康的な食事に恵まれた幸運な日となったことでしょう。思ったように捕まえられたらの話ですが。

この出会い以降、このキジ科の近縁種であるセキショクヤケイは飼育され、交雑され、今日のニワトリとなって人類の文化に深く入り込んでいきました。時の経過とともにアジアから西に広がり(東へも)多分イヌイットを除くあらゆる人の社会と関係を持ちました。良し悪しは別として、ヤケイは最初単なる食糧としてだけでなく、レクリエーション(闘鶏)や運勢占いや素晴らしい羽衣が飾りとして使われるなどしてきました。

この鳥がどのようにして生活の中の「善」なることと関係するようになったかは簡単に知ることができます。十二支の動物の一つとしての雄鶏には、幸運、道徳という意味があります。中国語では‘luck: 幸運’と‘cook: 雄鶏’の発音が同じです。バードライフの中国プログラムのアシスタント・マネジャーのVivian Fuは「雄鶏は知恵(鶏冠に由来)、勇気(戦う時の大胆さによる)、親切さ(食べ物を一緒に食べる習性)、信頼性(毎朝の時の声)を象徴しているのです。」と言っています。

そして、雄鶏の声が夜明けに人を起こさなければ私たち人類の生産性は恐らくはるかに低かったでしょう。

アジア人のニワトリへの見方には清々しさがあります。これに対して一部の西洋文明ではこの鳥の名前は「臆病」と同義語となり、食用の肉としては幾分「劣った」ものと考えられています(バードウォッチャーでさえも・・・ニワトリはもはや鳥ではないと)。ところが本当は、ニワトリは数十億人の人々にとって信頼のおける「脂肪分の少ない」貴重なタンパク源であり、養鶏は気候変動への影響が牛を育てるよりもはるかに小さいのです。

地球上で最も数の多い鳥の保全?

セキショクヤケイの優美な羽衣
写真提供: © Panu Ruangjan

ところで、家畜化されたニワトリは技術的には「ほぼ」セキショクヤケイであると考えられていますが、実際には他のアジアのヤケイとの交配種であり、品種改良によって野生の近縁種と比べてあまりスリムではなく、敏捷でもありません。黄色の足の特徴はインドに生息するハイイロヤケイから受け継いでいるものと思われます。IUCNのレッドリストでは家畜化されたニワトリは世界中で移入種と指定され、レッドリストの評価の対象にはなりません。しかし、バードライフの「データゾーン」では、セキショクヤケイは他の3種のヤケイと共に低懸念種に分類されています。

これらの野生のヤケイは今もアジアの森に生息していますが、数が非常に多いので保全上の懸念はありません。しかし、放し飼いのニワトリが野生のヤケイと交雑し、それによりいずれは野生種が絶滅する恐れがあるのです。「庭園都市」とも呼ばれるシンガポールは、ニワトリとの関わりも深い都市ですが、森林がほとんど残っておらず、野生のセキショクヤケイの生存が危惧されます。

ベトナムでは同じキジ科の絶滅危惧ⅠA類のコサンケイがセキショクヤケイと運命共同体となっています。より繁殖力のあるヤケイなどを対象とした見境のない罠猟が、ベトナム戦争当時の‘枯葉作戦’や農業のための森林伐採と整地によるり分断された森林に辛うじて生き残っているコサンケイにとって大きな脅威となっています。Viet Nature(ベトナムのパートナー)はコサンケイを絶滅から守るプロジェクトを進めています。

アジアの他の国では、野生のヤケイの生息が確認されている数百のサイトが含まれる、IBA(重要生息環境)の保全活動を通して、夜明け、生産、繁栄、幸運の到来を告げる「ku-ku-ruyuks」というニワトリの祖先種の鳴き声(明らかにニワトリの雄よりもピッチが速く、突然終わる)がこれからも続くように保全活動を行っています。それにはカンボジアの西シエンパンやインドネシアのハラパン森林も含まれています。

コサンケイ
写真提供: © Myles Lamont, World’s Rarest Birds

報告者: Shaun Hurrell

 

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