単純な縞模様のシートがどのように海鳥を救うか

写真提供: © Julius Morkunas

毎年、世界で推定40万羽の海鳥が餌を求めて潜水した時に図らずも刺し網に掛かって死んでいます。

刺し網は世界中の川や海で漁師が使っている水中ではほとんど見えない網です。刺し網(英語名gillnet の gill は鰓(エラ)の意味)は、網に掛かった魚が逃げようとすると鰓が絡まり捕えられることからこのように名付けられています。動かさずに済み、設置も維持も容易なので、刺し網は魚を取る上で信じられないほど費用効率が良いのです。

けれども残念なことに魚だけが刺し網に掛かる唯一の生物ではありません。‘混獲’と呼ばれる、多くの目的外の種が網に捕らわれて死にます。その中にはカワウフンボルトペンギンビロードキンクロなどの海鳥が含まれ、後の2種はIUCNのレッドリストでバードライフにより絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。網に掛かった鳥は息継ぎのために水面に出ることができなくなるので、これは致命的なことなのです。

漁獲量を確保しつつ、漁網に捕らえられる鳥の数を減らすことは保護活動家にとって特別な課題を提供します。なぜこれほど多くの海鳥が漁網に掛かるかを正確に知るために、バードライフのマリーン・プログラムは鳥の目で見ることが必要であるとの結論に至りました。それも空からではなく、水の中からです。

私たちの理解を深めるためにバードライフのマリーン・チームのマネジャー、Rory Crawfordは鳥が水中に潜っている時にどのように見えているかをビジュアルで示すために知覚生態学者のDr Graham Martinに連絡を取りました。結果は考えていたものとは違うものでした。

「私たちは、鳥は刺し網を見ていないと結論付けることができます。彼らは暗い場所で餌を取るので、水中の細かいことは見ることが出来ません。ウミガラスは日の光がほとんど差し込んでこない水深100メートル以上まで潜るということを考えてみてください。これは彼らが日中であっても、夜と同じ条件で餌を取っていることを意味します。ですから細いナイロンの網に気が付く見込みはほとんどありません。

この情報を持ってDr. Martin は混獲問題に対処するための有力かつ簡単な解決策を考案しました。‘警告パネル’です。これは柔軟性のある素材で、コントラストが明白な黒と白の目立つ模様が交互に並ぶ帯を一定間隔で漁網に取り付けるものです。その理論は潜水する鳥に漁網の存在を警告するはずだということです。

潜水する海鳥に見えるようにデザインされた黒と白のコントラスト模様 写真提供: © Julius Morkunas

潜水する海鳥に見えるようにデザインされた黒と白のコントラスト模様
写真提供: © Julius Morkunas

これが確実に役立つかどうかを知るための唯一の方法は言うまでもなく実際に使ってみることです。バードライフの‘アホウドリ・タスクフォース’の、南半球の港や船上で直接漁師と活動を共にした現場主義に触発されて、Segré基金の財政支援のお蔭で‘海鳥タスクフォース’も過去3年間リトアニアの海で同様の活動を地元の漁民と行って来ました。リトアニア・チームはこの黒と白のパネルの実験を行い、通常の漁網との比較を行いました。2015~2016年の漁期に同チームは約80回の航海からのデータを収集することが出来ました。この成功の鍵は船が小さいために私たちの監視員を一人乗船させるのも難しい小規模の漁師との間で信頼関係を築いたことです。

「個人的に言わせてもらえば、私は保護活動家と漁師がコミュニケーションを持ち、肩を寄せ合って一緒に活動する道を見つけたことを喜んでいます。」とリトアニア鳥学会(同国のバードライフ・パートナー)の‘海鳥タスクフォース’を率いるJulius Morkūnasは言っています。「私たちの意味する信頼関係とは、多くの小型漁船が混獲について自主的に報告し、データ収集を自分たちで行っていることです。」

最終結論を出す前に、今年の冬にはより多くのデータ収集が必要ですが、初期の結果は有望です。データは、パネルを付けた漁網での混獲は約3分の1になっていることを示唆しています。興味深いのは通常の漁網と比べてパネル付き漁網の漁獲量がかなり増えていることです。漁民にとって、パネル付き漁網により漁獲量にマイナスの影響が出ないということは明らかに重要です。

リトアニアで作られたパネル付き漁網の一つ 写真提供: © Julius Morkunas

リトアニアで作られたパネル付き漁網の一つ
写真提供: © Julius Morkunas

このような黒白パネルは世界中の漁網に取り付けられています。欧州委員会からの資金によりSPEA(ポルトガルのパートナー)はベルレンガス諸島付近で実験を行っており、日本野鳥の会(日本のパートナー)もバードライフと共にキングフィッシャー財団と経団連自然保護基金の支援を受けて世界最大のウトウのコロニーのある天売島沖で同様の活動を行っています。この両国のプロジェクトは漁網に何らかの作業上の問題が起きないかどうかを知る予備的実験段階を終え、近々商業漁船での完全実験を行う予定です。

年間合計40万羽という混獲を減らすための最終的な答えを見つける道のりはまだ長いのですが、大いに勇気づけられることがあります。それは、リトアニアでの初期実験の成功だけでなく、同じくらい重要なのは、これらの国々で海鳥の混獲を限りなくゼロに近づけるために漁業との間で築いた素晴らしい関係です。

「漁民が自分の網に掛かった鳥の混獲を問題視し始めた時に、彼らはこれをどのように減らすか考え始め、更には自分たちからアイディアを出すようになるのです。私にはこれは本当に元気付けられることです。」とMorkūnasは言っています。

 

報告者: Alex Dale

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