CITES 総まとめ: 世界がアフリカのヨウム保護に声を上げた

ヨウム
写真提供: © Ken Schwarz

2016年9月24日から10月5日まで、各国政府の代表が南アフリカ共和国のヨハネスブルで開催された野生生物会議に参加し、野生生物の国際的な需要増加の脅威にさらされている数百の種の未来について議論しました。

第17回会議(COP17)は、CITES(絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約: 通称‘ワシントン条約’)の直近の会議で、世界183カ国が参加しました。CITESは動植物の国際取引がどのような目的であれ種の長期的な存続を脅かさないようにすることを目的とする政府間の国際条約です。バードライフは野鳥の取引により生ずる脅威に対処する上でのCITESの役割の重要性を認識しており、また世界中のバードライフ・パートナーはより良好な鳥の保護とCITESの実施のためにそれぞれの国でロビー活動を行っています。

COP17はこのような会議としては2013年以来で、より大規模な保護を必要とする世界的な危惧種にとって‘運命を左右する’会議だと言われています。以下にこの会議の主題をいくつかご紹介します。

 

野外で捕獲されたアフリカのヨウムの取引禁止

ヨウム 写真提供: © Reto Kuster

ヨウム
写真提供: © Reto Kuster

あなたはヨウム(オウムの一種)を良くご存知かもしれませんね。飼ったこともあるかも知れないし、少なくとも言葉を交わしたことはあるでしょう。社交的で頭がよく、人の声を上手に真似る性質から、ヨウムは人気のペットになりました。

残念なことに、このことがヨウムを世界で最も密売の対象になる鳥にしてしまい、過去40年の間に西部および中央アフリカの森林から2~3百万羽が連れ出されました。捕獲された鳥の50~90%が運搬の旅に耐えられずに死ぬと推定されています。

COP17ではヨウムの保護レベルを現在の付表IIから最高度の付表Ⅰに引き上げる提案に対する投票が行われました。これは野外で捕獲されたヨウムの国際取引の禁止を意味します。ただし、飼育下で繁殖した個体の取引には影響を及ぼしません。ペットの所有者も影響されませんが、ヨウムと一緒に外国へ行く場合は‘ペットのパスポート’が必要になります。

この提案はEU(欧州連合)、北アメリカおよびヨウムのほとんどを失ってしまった西アフリカの国々により支持されました。その中でも特筆すべきはナイジェリアで、同国ではすでに何年も前から国内でのヨウムの取引や移動を禁止しています。

IUCN(国際自然保護連合)レッドリストの鳥類部門の公式機関であるバードライフは、野生生物取引のモニタリング・ネットワークであるTRAFFICが今回のヨウムの格上げを支持する上での明確な立場を取ることが出来るよう、技術的な情報を提供する形で陰ながら重要な役割を果たしました。

CITESではアフリカのヨウムを1種と考えていますが、バードライフでは2種としています。コートジボワール中央から西部に生息するコイネズミヨウムと、同国東部から中央アフリカにかけて生息するヨウムの2種です。両種共、今回のCITESの決議の対象となり、現在はIUCNのレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類とされていますが、絶滅危惧ⅠB類への格上げが検討されています。

 

‘羽の生えた象牙’を密猟者から守る

オナガサイチョウ 写真提供: © Michaela Koschova

オナガサイチョウ
写真提供: © Michaela Koschova

サイチョウ類は嘴の上部にある‘犀角’が目を引きます。‘犀角’の正確な目的は不明ですが、繁殖で重要な役割を果たすと考えられています。ほとんどすべてのサイチョウ類ではこの‘犀角’は空洞になっていますが、オナガサイチョウの場合は‘犀角’が硬いケラチン質で出来ており、そのために象牙の密猟者の標的になっています。

オナガサイチョウのいわゆる‘赤い象牙’(赤い色は鳥が嘴を脂分の多い尾腺にこすり付けることで得られる)は中国やラオスで重宝されています。中国の明の時代から飾りに用いられた‘赤い象牙’は、本物の象牙と比べて柔らかく、複雑なデザインの彫刻が可能です。この鳥への脅威の増大は最近のサイの角の復活や過去10年の象牙の需要増加と同調しており、この3年間には違法な‘犀角’の記録的な差し押さえがありました。その結果本種の個体数は急減し、本種を絶滅の淵に追いやりました。2015年にバードライフはオナガサイチョウを準絶滅危惧種から一気に絶滅危惧ⅠA類に引き上げました。

オナガサイチョウはすでにCITESの付表Ⅰに掲載されており、‘赤い象牙’の合法的取引は認められません。さらに今回、インドネシア政府により提案され、バードライフが支援する決議の改良版が議会を通ったことで、本種の法的保護が改善され、地元の人々の認識が高まり、違法取引がより厳しく取り締まられることになるでしょう。

オナガサイチョウにとっては生息地の喪失も脅威であり、現場での保護の支援と強化することも重要です。この点で、バードライフ・パートナーのマレーシア自然協会とブルーン・インドネシアは本種の保護に関して二つの「Forests of Hope」(希望の森)、マレー半島のベラム・テメンゴール複合森林とスマトラのハタン・ハラパンで積極的に活動しています。

 

バードライフがハゲワシ類の保護活動を世界に呼びかけ

ハゲワシの死骸 写真提供: © Leejiah Dorward

ハゲワシの死骸
写真提供: © Leejiah Dorward

CITESはアフリカのハゲワシ類にとって重要である、という表現は控えめな言い方です。今回の国際会議はバードライフがこの重要な鳥の苦境を説明する絶好の機会でした。TRAFFIC、CMS(移動性野生動物種の保全に関する条約)およびGIZ(国際協力のためのドイツ企業)共同の特別イベントで、バードライフはアフリカのハゲワシ類を2019年には付表Ⅰに格上げする提案の支援を取りつけました。

バードライフへの賛同者はアフリカのハゲワシ類の壊滅的な減少を十分承知しており(11種のうち7種が絶滅の淵にある)、去年バードライフはこのことを世界に告知しました。CITESは取引に特化したものですが、アフリカのハゲワシの死亡記録の29%がハゲワシの体の一部を目的とした直接的な迫害によるものです。毒物の使用が度々行われ、その結果、ハゲワシの脳、頭、足が昔からの薬として利用され、特に西部および南部アフリカではそれらが幸運をもたらし、さまざまな病気を治すものと信じられています。

ハゲワシとその部位の国際取引は政府からの許可がなければ違法ですが、アフリカ南部から西アフリカにかけて依然としてハゲワシの国際取引が行われている証拠がたくさんあります。ナイジェリアがこの取引の拠点となっており、同国での年間の取引量は4種の絶滅危惧ⅠA類の地域個体数のうちかなり大きな割合を占めることが推定されています。

この話の別の面は、象牙売買の影響がハゲワシ類の惨劇につながっていることです。動物の保護活動家から「空の見張り」として認識されているハゲワシは、空を旋回することで密猟された死骸をレンジャーに教えてくれるのです。けれどもその仕返しに、密猟者は密猟した動物の死骸に毒を加えます。象牙を抜き取られたゾウの死骸のゾッとするような光景はCITESが防ごうとしていることですが、同時に毒を施されたゾウの死骸1体で500羽のハゲワシが犠牲になってします。ハゲワシ類の絶滅危惧カテゴリーの格上げは避けられないことなのです。

報告者: Alex Dale

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